日本代表 北中米W杯アジア最終予選メンバー発表、森保一監督会見要旨

森保一監督
 日本サッカー協会(JFA)は29日、千葉市内の高円宮記念JFA夢フィールドで記者会見を行い、9月の北中米ワールドカップアジア最終予選2試合に臨む日本代表メンバー27人を発表した。森保一監督と山本昌邦ナショナルチームダイレクターが登壇した。

●山本昌邦ナショナルチームダイレクター
「過去の大会を振り返れば、9月シリーズは本当に苦戦していた。難しい2試合になると想像している。シーズンのスタートであること、初戦の相手・中国はすでにキャンプを始め、十分な準備をしていること。我々の経験を活かして、これまでにないスタートを切りたい。コンディション調整で負担をかけており、できる限りの準備をしたい。もう一つ、今回の資料に記したように新たにコーチを迎えることになった。長谷部誠コーチに参加してもらえるということで、フランクフルトのこともあるのでIWの期間をお願いして、詳細は今回のキャンプ中にさまざまなディスカッションをしていければと思っている。最後にサポーターの皆さん、テレビを見ている皆さん、簡単なスタートにはなりません。皆さんの力がどうしても必要になります。一人でも多くの方に注目していただき、埼玉スタジアムに駆けつけていただき、我々にエネルギーを与えてもらえれば。新たな歴史を作る覚悟で皆さんと一緒に戦っていければと思っているのでどうぞよろしくお願いします」

森保一監督
「いよいよ2026年の北中米W杯に向けてのアジア最終予選が始まる。さきほど山本ダイレクターがおっしゃった通り、非常に厳しい戦いになると思う。しかしながら、勝っていく覚悟を持って、常に目の前の試合に最善の準備をする、そして全力を尽くして粘り強く戦い抜くことを実践しながら、確実に前進していきたい。まずはこの9月シリーズ、中国戦に向けて勝利ができるようにチーム一丸となって最善の準備をしていきたい。メディアの皆さん、我々をいつも応援してくださっているサポーターの皆さん、一緒に戦っていただければと思います」

―森保監督が最終予選に臨むのは2度目になるが、前回の経験を踏まえて9月の2試合をどう戦っていきたいか。
森保監督「まずはチームとして最大限の力を発揮できるように選手のコンディションを注視して見ていかないといけない。6月の活動から選手たちはオフを挟んだり、移籍であったり、ヨーロッパの選手たちはプレシーズンから始まってきている状況であったり、五輪を挟んでA代表の活動があったり、Jリーグで国内で活躍している選手たちは酷暑の中で非常に厳しい戦いをしてきている中、チームが一丸となって戦えるイメージを持って、中国戦に、そしてバーレーン戦に臨めるようにしていかないといけない。前回のカタールW杯予選に続いて2度目のチャレンジをさせていただくが、9月の入りではチーム全体のイメージが共有できなかったという反省点があった。前回も準備に抜かりはないことを考えて初戦に臨んだが、もっともっと詰めていかないといけないということは経験として今後のアジア最終予選に活かしていければと思う」

―伊東純也がアジア杯以来の復帰となるが、協会としてどのような調整があったのか。
山本ND「メンバーを決めるのは監督の専権事項。監督が選ぶところ。ただ起訴、不起訴が理由ではない。監督が選手を決めるもの。当然、協会全体として様々な準備を進めてきた。我々にとって選ぶところでのプレッシャーはなく、しっかりと今回、環境が整ったということ」

―前回の最終予選ではオマーンに初戦で負けた。対戦相手の中国は帰化選手も多くいるが、現在の中国をどのように見ているか。
森保監督「非常に警戒しなければいけない相手だし、イバンコビッチ監督が就任されてから新たなチームづくりをしているところだと思う。非常に力のあるチーム。イバンコビッチ監督は百戦錬磨の監督で、前回の最終予選も我々に対してオマーン代表として初戦を戦っている。かなり分析をされたという印象が残っている。今回も我々を徹底的に分析して戦いに挑んでくると思う。我々が戦術面でもメンタル面でも上回っていけるように準備をしないといけない。中国代表はポテンシャルの高い選手が多く、イバンコビッチ監督のもと、戦術的にも能力の高い選手がチームとして機能性を持って力をつけている印象がある」

―長谷部誠コーチの招集について、現在は監督ではなくコーチという彼の立場が招集をしやすくしたか。
山本ND「現場からの要望もあり、フランクフルトに在籍するコーチなので、そちらとの詳細な契約上の詰めもしないといけなかったということで、現役引退したあと、いろんな準備をして、今回形が整って、IWの期間は来ていただけるということになった。フランクフルトからも非常に好意的なコメントをいただいて、長谷部コーチもそうだし、日本のサポートもしたいということで、Win-winの関係で実現した」

―北中米W杯のことも見据えて、アウェーの実力を出しづらい環境の中で測ってみたいことは。
森保監督「全試合勝利を目指して、最善の準備をして、全力を尽くして戦いに挑みたいと思っている。しかしながら思い通りに、理想通りにいくとは思っていない。厳しい戦いの中でまずはアジア予選、最終予選を確実に勝ち抜いていくことをしっかりと考えていかないといけない。勝利は目指しつつも、その時の戦い、そして勝利を目指しつつも勢いだけ、勝利だけを目指して、自分たちの可能性を狭めて、相手に隙を与えるようなことがないように一戦一戦戦いに挑みたい。日本にはいい選手が揃っており、コンディション的に最大限のものを出しながら、個人の力、チーム力として発揮すれば必ず結果はついてくるという自信を持ちながら、慌てず、落ち着いて戦うことを実践できればと思う。またW杯に出てからの話もあったが、そこに関してまずはアジア予選を勝ち抜くことが大切だと思っている。すでにW杯本大会でのことも視野に入れながらいろんなことを準備しているが、目の前の一戦を見据えて全力を注いでいければ。そういう意味でアジア最終予選の過酷な環境で、いろんなところが経験できると思うし、想定外のことも含め、選手たちにはそこを乗り切っていく力をまたこのアジア予選で培っていくところを見ていきたい。タフに戦える選手かどうかというところもこのアジア予選でしっかり見て、W杯本大会につなげていければと思う」

―伊東純也の招集外はこれまで「彼を守るため」と話していた。今後、彼に期待するものは。
森保監督「説明を細かくするとこの1問だけで終わってしまうことになるかもしれないので、できるだけ簡潔に話したいが、さきほど山本ダイレクターもおっしゃられた通り、これまでの招集するしないに関しては、招集できるということで私自身は協会のほうから言っていただいたし、私自身もそう考えていた。これまでも招集ができたが、招集できなかったのは『彼を守るためと』と皆さんにお話ししてきた。それはなぜかというと、まずは彼が落ち着いて日本代表選手としてサッカーに向き合い、プレーできるかということと、チーム全体で落ち着いて活動できるか、試合に向かっていけるかを考えた時、これまではまだ疑問が残っているところがあった。今回は招集させていただいたことについては、一つ大きなポイントとして、彼がスタッド・ランスの選手としてジャパンツアーをして、日本でプレーしていた時、ここにおられるメディアの皆さん含め、多くのサポーターの皆さんが温かく彼を見守ってくれる環境があることをスタッド・ランスでの活動を見て、私自身、落ち着いて彼がプレーできるし、チームとしても落ち着いて活動できるということで判断した。メディアの皆さんには彼が思い切ってプレーできるという環境づくりをしてくださったことに感謝申し上げます。これからまた彼は日本のためにプレーしてくれると思うので、引き続き温かく見守っていただければ幸いです」

―長谷部誠コーチについて。日本代表がこれから上を目指していく上で、足りないものを埋めていくことで彼に期待したいものがあると思うが、具体的にどういうところを彼に求めるのか。招集は森保監督自身の要望で実現したのか。
森保監督「長谷部コーチの就任に関しては私が協会の方々にお願いさせていただいた。もちろんコーチ陣、スタッフとも話して、これから我々がアジアでより確実に勝っていくため、そして世界一を目指して戦っていく中で、現状のスタッフでも間違いなく確実に前進していけると考えているが、長谷部コーチが持っているヨーロッパでの経験は間違いなくこれから我々が前進していく上でいろんな刺激にもなり、前進するためにより必要だということで、スタッフともみんなで話し合って決めた。我々の現状のコーチングスタッフ、海外で選手経験のある名波(浩)コーチもいるが、実際は国内にいながら多くの代表選手が活動しているヨーロッパでの活動は選手から情報をもらって、我々も現地に行きながらいろんな情報をもらいながら、世界の情報をインプットする、世界の価値観、日本の価値観をミックスして、日本らしく、日本代表として最大限に力を発揮できるように努力しているが、長谷部コーチのこれまでの経験がまた大きく貢献してくれると思う。コーチ経験としてはまだ始まったばかりなので、足りないところもあるかもしれないが、逆に指導者として学ぶ前に選手側から感じる、選手として選手に働きかける、より選手目線でいろんなことを伝えられるという大きな部分を持っているので招集させてもらった」

―初招集の高井幸大、望月ヘンリー海輝の評価、彼らに期待することは。また招集人数が27人になった理由は。
森保監督「2次予選からベンチメンバーは23人の中、だいたい26人の選手を招集させていただいていた。今回はその延長で27人の選手を招集させてもらった。理由はベンチに入れる選手は23人だが、コンディション不良であったり、また不測の事態があって招集選手が欠けたりした時、バックアップの選手に帯同してもらうことで活動の中から補っていけるところが大きい。そして現代表に入れる選手としては非常に大きなグループで、まだまだ力を持った選手がいる中、可能な限り多くの選手に来てもらいながら、2026年のW杯に向けて戦う、同じ経験をしてもらう、チームコンセプトをより共有しながらチームづくりをしていく、未来に向かっていくことができると思う。今回初招集させてもらった2人についてはまずは所属チームで存在感のあるプレーをしているということで評価させてもらった。高井は五輪に出て、国際試合の中でも非常に高いポテンシャルとクオリティーのあるプレーを見せてもらったのが大きい。さらにまだ完成された選手ではないと思う。これから日本代表の戦力として、日本代表の活動を通して、経験を積んでもらいながらより良い選手へと成長してもらい、日本代表の戦力としても成長してもらえればと思。そして所属チームの川崎フロンターレで、さらにチームの中で存在感を発揮してくれるようにということも願いながら招集させていただいた。望月ヘンリーに関してはシーズン当初はレギュラーと言える使われ方はしていなかったが、ここのところ監督の信頼、チームの信頼を得て、レギュラーとして存在感を発揮していることを評価させてもらった。非常にフィジカルの能力が高く、サイズ的にも魅力があり、SBとして上下動ができる。守備の部分でまだまだ改善しないといけないところはあるが、落ち着いてビルドアップに関わり、時にはターゲットとして高さを活かして攻撃の起点になるところであったり、守備でもボールを奪いに行く果敢な姿勢を見せてくれているところをコーチ陣とともに彼のプレーを追わせていただき、評価して代表招集させていただいた。さきほどの高井と同じく、チーム活動を通してどれくらいできるかはまだまだ見ていかないといけないこともあるが、これまで経験したことを自信持ってチャレンジしてもらいたいし、ここで完成した選手として招集したわけではない。この先、さらにいいものを見せてもらえるように思い切って活動を通して自分の力を発揮してほしい」

―パリ五輪に出場した選手が2人選ばれているが、五輪の総評と、この2人が大舞台を経験したことでチームにどのようなものをもたらすことを期待しているか。
森保監督「彼らが五輪を経験して大きな国際舞台の中で自分自身のため、チームのためにチャレンジしたことで非常に力をつけてJリーグに戻り、貢献を見せてくれていることを評価させてもらっている。これまで彼らが自分自身の特徴を発揮しながら、チームのために戦ってくれると思うが、我々も彼らの活動を追いながら常にパワーアップしていっているということを評価させてもらい、招集させてもらっている。パリ五輪は非常に素晴らしい舞台で、プレッシャーのかかる舞台だったと思うので、そこで経験したことをさらに上のレベルのA代表の舞台で、五輪世代の活動の時のように力を発揮してもらいたいと期待している」

―長谷部誠コーチと個人的にやり取りをしたか。
森保監督「長谷部コーチの招集は私自身が協会の皆さんにお願いした。長谷部コーチ自身にも直接会ってお願いをしたり、電話でいろんなやり取りをしたりしながら私自身の招集への思いを伝えさせてもらった」

―細谷真大、中山雄太の選考理由や評価は。
森保監督「細谷に関しては久しぶりの代表だが、期待しているプレーは得点を決めるというプレー。得点に至るプロセスとして、彼の持っている背後に鋭く抜け出す動き、ポストプレーも非常に力強くなっており、前線で起点になってチャンスメイクするところもクオリティーが上がってきている。彼の特徴を活かしてチームに貢献してほしい。我々がアジアで確実に勝っていく、世界で確実に勝っていく中で、前線の選手に守備に関わってもらう、ピッチに立っている11人がハードワークをしていくことが必要なので、守備での貢献も期待したい。中山については、まずは大怪我を負って、サッカー選手としてプレーできているところ、そして所属チームが決まらなかった中、いま町田さんという彼がサッカー選手としての幸せを感じられる環境を作ってくださる方々の中で、喜びを感じてプレーしているのかなと思う。Jリーグでのプレーを見て、まずは長期離脱していた中、代表としてプレーできるコンディションかどうかを注視して見せていただいたが、やはり彼が日頃からサッカー選手として、アスリートとして、自分の力を発揮できる努力を日々、見えてはいないが続けているところがピッチ上のプレーに現れていると思う。オランダやイングランドでプレーしたプレー強度の高さ、判断の速さはいまプレーをもって示してくれている」

―長谷部誠コーチの契約期限は。
山本ND「今回からスタートするが、最終予選はもちろん、2026年の北中米W杯も視野に入れて考えている」

―伊東純也の件は起訴、不起訴は関係ないという話だったが、嫌疑不十分だったことも大きいのでしょうか。
「非常に重要な質問だと思うが、民事闘争中と聞いているので、詳細に関してはお答えを控えさせていただきたい。ただ一般論として代表に限らず、プロ選手としてのふさわしい行動、模範となる態度は今後もさらに強く全ての選手に求めていきたいと感じている」

―三笘薫、鎌田大地に期待したいことは。
「三笘、鎌田のプレーしているところ(プレミアリーグ)はサッカー界の最高峰のリーグだと思っている。その中で彼らが世界選抜のような中でプレーしているところは日本人として本当に誇りに思っている。三笘に関してはプレシーズンから他の選手と同様、どういう状態でコンディションを上げてきているかを常にチェックしながら来た中、プレミアリーグが始まって彼の良さである攻撃力、そして献身的な守備でもチームに貢献できるところを見させてもらっているので招集させていただいた。彼には主に左サイドでのプレーで、4バックでも3バックでも左サイドのところでまずは得点に絡む、チャンスメイクするところを期待している。鎌田に関しても得点を取った試合はカップ戦だったが、プレシーズンから同様にチェックさせてもらいながら公式戦に入って、チームとして確実に戦力として考えられており、非常に高い期待をされていると見ている。プレーとしても3バックの中でシャドーでプレーしていたり、ボランチでプレーしていたりというところで、彼はチャンスメイクもできるし、プレーメーカーとして中盤で関わるところを見せてもらっている。プレミアリーグという強度が高い中、球際の部分も日本代表の戦力として大きく貢献してくれるというという評価をさせてもらって招集した」

(取材・文 竹内達也)


●北中米W杯アジア最終予選特集
Source: サッカー日本代表

コメント

タイトルとURLをコピーしました