今月19日に行われたJ1第24節のヴィッセル神戸対柏レイソル戦で神戸MF齊藤未月が全治約1年の重傷を負った事象について、日本サッカー協会(JFA)審判委員会が28日、メディアブリーフィングを開き、柏のDFジエゴにレッドカードが提示され、神戸にPKが与えられるべきだったという見解を発表した。
神戸対柏戦では前半20分、敵陣ペナルティエリア内でシュートを放とうとした神戸MF齊藤未月が柏の2選手と交錯。左膝が曲がったままピッチに倒れ込み、途中交代を強いられた。クラブは21日に診断結果を発表し、左膝関節脱臼、左膝複合靱帯損傷(前十字靭帯断裂、外側側副靭帯断裂、大腿二頭筋腱付着部断裂、膝窩筋腱損傷、内側側副靭帯損傷、後十字靭帯損傷)、内外側半月板損傷の重傷で全治約1年という見込みを示した。
この場面ではピッチ上の主審は柏のファウルを取っておらず、PKや一発退場の可能性によるVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による介入も行われなかった。
扇谷健司審判委員長は都内のJFAハウスで開いたメディアブリーフィングで「サッカーファミリーとして齋藤選手の怪我は非常に心が痛むもので、1日でも早く復帰されることを願い、お見舞い申し上げたい」と述べたうえで、「あのシーンについていろいろと議論を重ねた。審判委員会の見解はレッドカード。本当にこういったところで正しいジャッジができなかったことを申し訳なく思っている」と述べた。
扇谷審判委員長によると、試合当時にVARの介入が行われなかった理由は「ポイント・オブ・コンタクト(接触の場面)がわからなかった」ため。メディアブリーフィングではVARの判定に使われた映像も公開されたが、ピッチレベルのカメラでは揺れが大きく接触シーンが鮮明に捉えられておらず、近いゴール裏カメラでは接触シーンがポストに隠れている上、反対のゴール裏カメラでは距離感の関係で接触の有無が不鮮明だった。
そうした中でも扇谷審判委員長はメインカメラからの映像に着目。画像は粗いため鮮明ではなかったが、接触の瞬間自体は捉えられており、「ぼやけているかもしれないが接触がある。接触がある理由としては足が大きく曲がっているため」と指摘した。
また齊藤の左膝に大きなダメージがあったという点も、接触の有無を判定する一つの根拠となると強調。ポイント・オブ・コンタクトとみられる場面は「一度しかない」ため、当該シーンが大怪我につながった接触だとみられるという点も踏まえ、ジエゴの足が齊藤の左膝に接触していたと判断することが可能だと結論づけた。
通常、VARの介入には「明白かつはっきりとした誤り」という高い基準が設けられており、映像確認の際にも明確な根拠が求められる。それでも扇谷委員長は「複合的なものを判断してジャッジをしないといけない時があると考える。そうしたところでわれわれとしてもっとやれることがあったんじゃないかと思っている」とし、今回の映像でも介入が可能だったという見解を示した。
加えてジエゴのプレーが退場にあたるかに関しては「足裏が高く上がっている」「膝の部分に接触している」「結果的に強いダメージに与えた」という観点から、「著しく不正なプレー」による退場基準にあたるという見解が示された。
扇谷審判委員長によると、神戸側にはすでに対面で説明を実施。判定に関わった審判員は今後、一定期間の研修期間を設けるという。加えて扇谷審判委員長は「柏の選手もわざとやっているわけではないとご理解いただけると思う。私がこうして説明することで柏の選手に何かが行ってしまうのは避けていただきたい」と述べ、誹謗中傷につながらないよう報道陣に配慮を求めた。
(取材・文 竹内達也)
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