先日、Jリーグは1999年から継続してきた「プロABC契約」の撤廃を含む選手契約制度に関する大きな改革を決定した。「秋春制」へのシーズン移行が実施される26シーズンからの採用を目指す。
ABC契約は選手契約において、契約金や年俸の高騰化を避けることなどを目的としたもので、クラブの経営安定化に一定の成果を出してきた。しかし海外リーグとの競争や日本国内のスポーツ界の変化により、制度見直しの必要性が指摘されていた。
今回の大きな改革によって、年俸の上限を上げるために必要としていた出場時間などによる段階的な契約「プロABC契約」を完全撤廃。これまでC契約は460万円、A契約でも初年度は670万円としていた基本報酬の上限を、1200万円まで上げる。また独身や既婚、扶養の有無で区別していた支度金の上限(380~500万円)も、一律上限500万円とすることに決めた。
さらに基本報酬については下限を新設することを決定。J1は480万円、J2は360万円、J3は240万円(いずれも消費税別)で、これまでJ1は20名(うちプロA契約15名)、J2はプロA契約5名、J3は3名が必要だったプロ選手の最小登録人数も、カテゴリに関係なく各クラブ20名とすることに決まった。なお、18歳以下のプロ契約選手は、年俸下限の例外対象になる。
この改革により出場給や勝利給を含めると、選手によっては初年度から2000万円を超える報酬を受け取ることも可能となる。今後は将来的は基本報酬の上限撤廃も視野に入れた議論が進められるというが、一方でクラブ経営への負担も懸念される。
ただ野々村芳和チェアマンは「世界とどう戦っていくかを現場の皆さんと議論する中で、当然の流れなのかなと思う」と強調。また選手人件費についても「現状でこの金額を下回っている強化費しか使えていないクラブはない。要は選手人件費だけで最低でも4800万円を使っている。プロの人数で少ないところで15人くらいのところはあるけど、ほぼほぼ今のJ3クラブでも大丈夫。来季上がってくるかもしれないJFLのクラブにも話をしているが、選手にかけている費用からしても問題ない金額だと思う」と話した。
新人選手を送り出す側にも大きな影響は出てきそうだが、これまでのべ100人以上をJリーグに送り込んでいる明治大の栗田大輔監督は「前からずっと話題になっていたし、僕は撤廃されたらいいなと思っていた。プロ選手は寿命も短いし、いい選手がきちんと評価されるのは正当なことだと思う。またそれによってクラブはさらに努力しないといけないという選別にも繋がると思うので賛成ですね」と歓迎する。
ただそれよりも26年から27年にかけて行われるシーズン移行の懸念を語る。これもこれまで長きにおいて議論されてきたが、大きな問題の一つとして欧州と日本の学校カレンダーの違いが指摘されてきた。夏に開幕するシーズン移行が行われれば当然、4年生の途中でJクラブと契約することが基本になってくる。ただ有力選手の多くは大学にスポーツ推薦で入学しており、サッカー界だけの問題では片づけられない事情もある。
大学側とまだ話をしていないという栗田監督は「個人的な意見」としたうえで、「結局は職業選択の自由だけど、大学によって体育会の位置づけが全然違うので、一概に統一するというのは難しい。最後は大学と個人の関係性だと思うが、明治の場合はスポーツ推薦で獲っているから、秋春制になったから簡単に秋からJリーグに行ってとはならないと思います」と話す。
また全日本大学連盟の理事長でもある流通経済大の中野雄二監督は、問題解決に至る前に日本サッカー協会(JFA)やJリーグとの議論の必要性を説く。今回の選手契約制度の見直しについても「正式に何の連絡もない」とした中野監督は、「いつもそうなんだけど、こういう話に我々は関わっていない。シーズン移行もどういう問題になるかは明らか。100人以上の大学生が6月で大学を辞めるのか、籍を残しても8月からJリーグに行きたいと言うにきまっている。何が難しいかって行かせたくないわけではない。能力のある子はどのタイミングでもプロを目指せばいいと思うが、言い方は悪いが、J2やJ3までみんな大学を辞めて行っちゃったときに本当にそれでいいのか。親心的に言えば大学を出るメリットがあるのは事実。26年のシーズン移行で生じる問題は大学連盟でも意見をまとめてJFAやJリーグに提出したい」と訴えた。
(取材・文 児玉幸洋)
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Source: 大学高校サッカー
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