[10.26 関東大学L1部第19節 東洋大4-2関東学院大 東洋大学朝霞キャンパス・サッカー場]
試合会場となった東洋大のグラウンドにはアルビレックス新潟のユニフォームを着た人、ゲートフラッグを掲げる人の姿もあった。「さすがアルビサポだなと感じますね。寄付の件もそうですけど、本当に選手を応援してくれている。試合以外でも感じさせてくれるなと思います」。グラウンドを見渡したDF稲村隼翔(4年=前橋育英高/新潟内定)は、しみじみと答えた。
一躍今季の最注目大学生プレーヤーとなっている。稲村は昨年6月に25シーズンの新潟入団内定を発表。昨シーズンのデビューはかなわなかったが、今年は4月17日のルヴァンカップ2回戦・いわきFC戦でデビューを飾ると、これまでJ1で10試合、ルヴァン杯6試合に出場。特にルヴァン杯の準々決勝、準決勝の活躍は秀逸で、11月2日に国立競技場で行う名古屋グランパスとの決勝への出場にも期待が集まっている。
ただ今年まではあくまでも大学生。ここ2週間は大学に戻って、関東大学リーグ1部の試合に出場していた。26日の関東学院大戦に先発すると、1点を先行して迎えた前半36分、DFラインからのロングフィードを前線に蹴ると、FW高橋輝(2年=大宮U18)の得点をアシストした。
しかしアシストについては「よかった」と笑みをこぼした稲村だが、後半の2失点で一時同点とされたないように、「失点のところ以外でも相手選手にいいリズムをつかませてしまった。試合の展開みたいなところも自分が操れればいいなと感じました」と、高橋の4発で奪った劇的勝利にも浮かれることはなかった。
気になる週末だが、東洋大は首位の明治大と対戦。しかし逆転優勝の可能性が消滅していることからも、新潟の選手として国立のピッチで戦うことが濃厚となっている。この日の時点では「未定」を強調した稲村だが、「どっちでも100%以上のパフォーマンスを出したい」。満員の国立競技場でのプレーについては、「憧れですね。ワクワクしちゃう感じはあります」と隠しきれない思いも明かした。
「新潟への想いは強まっている部分はめちゃくちゃあります。今年1年、プロの試合を経験させてもらっている中で、一日でも早く身を置きたいという気持ちでも出ている。でも自分だけの意見で実現できることではないので、しっかりとクラブと大学とチームメイトとしっかりと話して、両立できるところでしっかりとやりたいと思います」
チームメイトからの信頼も日に日に感じている様子。「特にDF陣とはサッカーの面でコミュニケーションを取る回数が多い。舞行龍さんや千葉さんは自分に全てのこと教えてくれます。それとプレーしていてもそうですが、監督やスタッフからも特別指定選手という見られ方をされていないなと感じている。自分も信頼にしっかりと応えて、チームに貢献しないといけないなと思っています」。
また新潟の環境にも慣れてきたようだ。新潟に滞在中は寮での生活となるが、一学年上のMF奥村仁とは特に仲がいいという。「新潟の街?だいぶいろんなところに連れて行ってもらってますね。ご飯屋さんが多いですが、その周辺を見ながらみたいな。いい街だな、温かい街だなと感じています」。心も新潟に染まりつつある。
ルヴァン杯決勝を楽しみにする一方で、J1残留への意識も強めている。新潟は現在、降格圏の18位と勝ち点差5の16位。ただし消化試合数の違いから気の抜けない状況になっている。一方の東洋大は今季関東大学リーグで3位の好成績。11月16日の最終節まで毎週末の試合を残すが、その後の大学選手権までの期間で新潟に合流する可能性が考えられる。「もしルヴァン杯決勝に出させてもらえるなら優勝に貢献したいですし、リーグ戦でも残留させるために力を使えればなと思います」。話題の大学生が、終盤戦の戦いを熱くする。
(取材・文 児玉幸洋)
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Source: 大学高校サッカー
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