[MOM4907]龍谷富山FW横山旺世(3年)_V9王者富山一を食った衝撃ハット!! 足がつっても「死に物狂いで」表現した強烈キャプテンシー

FW横山旺世(3年=富山U-15)
[11.4 選手権富山県予選準決勝 富山一高 1-4 龍谷富山高 高岡スポーツコアサッカー・ラグビー場]

 創部21年間で着実にサッカー強化を進めてきた龍谷富山高を史上初の県決勝に導いたのは、強烈なメンタリティーと確かな決定力を兼ね備えた稀代のキャプテンだった。

 準決勝の相手は県内9連覇中の富山一高。「中学校から高校に上がるタイミングで富山第一に行くという選択肢もあったけど、中学3年で進路を選ぶ時に、富山第一を倒して全国大会に出場するという目標を決めた」。カターレ富山U-15から新興校に飛び込み、ついに辿り着いた念願の晴れ舞台。FW横山旺世(3年=富山U-15)はハットトリックの大暴れで、チームの歴史を変える立役者となった。

 横山にとって、3年間ずっと待ち望んでいた高校生活最大のビッグマッチ。「自分のこととしても、キャプテンとしての責任感としても、この試合にかける気持ちはすごく強かった」。栄えある10番を背負い、左腕にはキャプテンマーク。あふれるモチベーションは試合開始直後から相手にぶつけた。

 まずは前半8分、中盤の高い位置でボールを持つと、あいさつ代わりのミドルシュート。「チームとしての課題はシュートで終わり切るところ。シュートは自分の武器でもあるので、遠目でも、近くでもどこからでもとりあえず振るというのを意識していた」。この場面は力が入りすぎたか、公式記録のシュート数に算入されないほどゴールマウスから外れる軌道に。だが、横山の本領発揮はここからだった。

 富山一のGKは横山のシュートミスを難なく受け止めると、すぐにボールを置き、ペナルティエリア外に持ち出す。実はこの場面、龍谷富山高が「チームとして狙っていた」形。横山は「待ってました」と言わんばかりの猛烈なプレッシングを仕掛けた。

「まずはボールを持たせて、運んできたところで一気にスピードを上げて、コースを消しに行こうと。相手の弱点としてGKのキックが飛ばないというのもあったので、(飛距離を稼ぐために運んできたら)ボールは取れるかなと思って一発を狙っていた」。その目論見どおり、GKのロングキックは懸命に足を伸ばした横山に直撃。ボールをかっさらった。

 奪ったポジションはペナルティエリアの左外。ゴールまでは長い距離があり、角度的にもゴールへのコースは狭い。しかし、横山にシュートへの迷いはなかった。「富山第一相手には先制点が必要だと思っていた」。GKをドリブルでかわす選択肢もあっただろうが、狙ったのは左足でのシュート。これが完璧な精度で無人のゴールに転がり込んだ。

「先制点を取るためには相手の形、システム、相手がやってくることを自分なりに分析して、プレッシャーをかければボールを奪えるなというところがあった。そこでプレッシャーをかけて先制点につながったので自分としても嬉しかった」(横山)

 それ以降は風上に立った富山一が攻撃のスイッチを一段と上げ、守勢に回る形となった龍谷富山。しかし、選手たちはプレーが切れるたびに積極的に給水を行い、入念なコミュニケーションを取り合うなど、突然の先制点にも浮き足立つ雰囲気はなかった。前半34分には不運なクリアミスから同点ゴールを決められ、1-1でハーフタイムを迎える形となっても、選手たちに動揺はなかったという。

 むしろ横山は前半を通じての戦いぶりにも満足しておらず、チームメートに前向きなゲキを飛ばしていたようだ。

「昨年も、一昨年も、自分たちは富山第一という壁を越えられなかったので、悔しい思いがずっとあった。1-1という状況で前半を終われたけど、『自分たちはこのままでいいんか』と。『このまま試合が進んでいったら間違いなく負けるぞ』『俺たちがチャレンジャーとしてあっちを倒すという勢いでもっとやっていかないと勝てんと思う』と話しました」(横山)

 新興校が強豪校を倒すためには「同点からのPK狙いも一つの選択肢になりそうなもの。しかし、横山がキャプテンとして示したのは「勝ちに行く」という意志だった。その結果、頼れる主将に鼓舞されたチームは後半、富山一よりもはるかに高いインテンシティをキープ。後半21分には鋭い速攻からMF松代大輝(2年=広田FC)の勝ち越しゴールも決まった。

 もっとも2-1とリードした時点でも、横山に達成感はなかった。

「相手からすると、自分たちがさらに点を取れたら心が折れる思いがあった。前から前からプレスをかけて、自分がいまできることをやって、貪欲にゴールを取りにいこうという姿勢は変わらずに続けようと思った」

 そこからは圧巻というほかないパフォーマンスだった。

 まずは後半31分、相手のクリアミスが相次ぎ、ゴール右斜め前30mにいた横山の足元にボールがこぼれてくると、ダイレクトで右足を一閃。飛び出していたGKの頭上を超えるループシュートを叩き込んだ。前半から徹底してきたシュートの意識がここに結実。濱辺哲監督も「彼の視野の広さは準々決勝でもハーフラインくらいからロングシュートを決めているくらいに広い」と称賛を惜しまぬスーパーゴールだった。

 また横山はこのシュートで足がつり、ゴールパフォーマンスもままならないほどの痛みで顔をゆがませながらピッチ外へ。なかなか起き上がることができないままプレー再開を迎えた。それでも途中交代するつもりはなかった。

「キャプテンとして、自分がピッチを離れたら万が一崩れてしまうんじゃないかなというのがあった。自分は何がなんでもピッチに残って戦い続けようと思った」

 強い気持ちでピッチに戻ると後半35分、横山は直前まで倒れ込んでいたとは思えない猛烈なプレッシングを仕掛けると、高い位置で相手の横パスをカット。そのまま自慢のスプリント力を活かしてゴール右前に侵入すると、つっていたはずの左足で豪快に踏み込み、ファーポスト脇への右足シュートを突き刺した。

「ハーフタイムにも『気持ちだぞ』って言っていた。富山第一に勝つためには『気持ちの面で絶対に相手より上回らないと勝てないよ』って話していた。自分がその発言をしたからには自分が最後まで戦い切って、最後まで走って戦い続けないといけない。キャプテンとして言っていることとやっていることが違ったら、それはもう俺の中ではキャプテンじゃないなと。自分が言った発言には自分も責任を持って、その言葉を実行しようと思っていたので、死に物狂いで走りました」

 キャプテンとしての使命も背負い、実現させたハットトリック。それも相手はライバル視してきた富山一。「インターハイ、選手権では初めてで、相手が富山第一で、今までにないくらい嬉しかった。高校サッカーで一番嬉しかった」。高校入学時からずっと夢見てきたジャイアントキリングは、4-1という想像以上のスコアで成し遂げられた。

 もっとも、この歓喜に浸り続けるつもりはなさそうだ。「小学校の時から全国の舞台を見て、絶対に高校サッカーをしたいと思っていた。憧れの舞台」という全国大会まであと1勝。「富山第一を倒したからこそ、もう優勝しか見ていない。それだけの準備を突き詰めてやっていきたい」と気持ちを切り替え、1週間後の県決勝を見据えていた。

(取材・文 竹内達也)


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Source: 大学高校サッカー

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