公立の名門・草津東が3-0で滋賀タイトル奪還。目標は前回大会の近江を超えて「てっぺん取ること」

公立の名門校、草津東高が前回全国2位の近江高を撃破。3年ぶりの優勝を果たした
[11.9 選手権滋賀県予選決勝 近江高 0-3 草津東高 皇子山]

 名門・草津東が前回全国2位の近江を撃破し、全国へ――。第103回全国高校サッカー選手権滋賀県予選決勝が9日、大津市の皇子山公園陸上競技場で行われ、前回大会全国準優勝の近江高草津東高が対戦。草津東が3-0で快勝し、3年ぶり13回目の全国大会出場を決めた。

 草津東は前回大会決勝で延長戦の末に敗れるなど、過去2大会連続決勝で敗れていた近江に雪辱してタイトル奪還。牛場哲郎監督は、「もうほんとに喉から手が出るほど欲しかったこの優勝だったので。ほんとに2年間苦しい思いもしましたし、悲しい思いもしましたし、そういう悔しさをこの試合でしっかり出してくれたから……(近江は)去年全国で準優勝してるチームですので、なかなか倒すのは簡単ではないところでしたけど、本当に選手たちが走って、最後まで戦い切ってくれたかなと思います」と選手たちを称えた。

 公立の草津東は滋賀県内で最も選手権に出場してきたチームで、2000年度大会で全国大会準優勝。近江の台頭、活躍を認める一方、「(草津東には)ずっと滋賀県のトップを、高校サッカーの中で牽引してきたというか、リードしてきた自負があります」(牛場監督)。昨冬の近江の快進撃を静岡遠征中のテレビなどで見ていた選手たちは、彼らの活躍をモチベーションにしてきた。

「悔しかったんですが、(全国大会に)オレらもいてたらどうなったんやろうっていう気持ちもより湧いてきましたし、この1年間、オレらが出て、『草津東をもっと全国に広げていけるように』『滋賀県の公立もまだ終わってないんだぞ』っていうのを全国に知らしめる大会にしたいなと思っていました」(MF上原周主将、3年)。その思いを表現し、近江を乗り越えた。

 3連覇を狙った近江の先発は、昨年度の全国大会でも活躍したGK山崎晃輝主将(3年)、DFは右から中川郁人(3年)、高本翼(3年)、中江大我(2年)の3バック。右WB藤田准也(2年)、左WB岩見壮汰(2年)、ダブルボランチに河野翔空(2年)と伊豆蔵一惺(3年)、2シャドーが福本怜功(3年)と池田健人(3年)、そして最前線に松山大納(2年)が入った。

3連覇を狙った近江

 一方の草津東はGK岡留佑樹(3年)、右SB寺田大翔(3年)、CB池永一太(2年)、CB武久宏斗(2年)、左SB成宮結太(3年)、中盤は上原と河崎暖希(3年)のダブルボランチで右SH谷口慧敏(3年)、左SH波多野凛空(2年)、そして寺川剛正(3年)と力石龍之介(3年)が2トップを組んだ。

草津東は過去2大会連続で準優勝だった

 草津東は「もう少し立ち上がりから押し込まれるところがあるかなっていう風には予想はしていたんですけど、意外と高い位置で守備がハマった」(牛場監督)という前半に。相手が攻め切る前にボールを奪い返すと、6分には力石が寺川とのワンツーで抜け出そうとし、11分には力石がDF1人をかわして右足シュートを撃ち込んだ。また、谷口がシュートへ持ち込むなどよりゴール前のシーンを作り出していく。

 草津東は序盤から距離感の良い守りを継続。牛場監督が「走って、お互い距離感をちゃんと縮めて。前からのプレッシングだけじゃなくて、外された時のプレスバック。こういうところも徹底して磨きかけてきましたので、それがしっかり今日のゲームでは出し切れたかなと思います」と説明していたように、草津東は常に相手ボールホルダーの前方のスペースを埋めながら、圧縮する形で前後から挟み込む。

 中でも、指揮官が「もうほんとに『まだ走れんのかな』っていうくらいやってくれましたので。本当に守備が安定したのは彼のお陰かなと」と称賛した3年生MF河崎と上原のダブルボランチのところでボールを奪う回数を増やしていった。

草津東MF河崎暖希は抜群の運動量でチームに貢献

 近江は前半半ばごろから、高本と中川がドリブルでボールを運ぶことによって押し返して見せる。司令塔の伊豆蔵と河野がボールに係わりながら、サイドへ展開してセットプレーも獲得。攻撃の時間を増やしたが、草津東はともに声と集中した守りを続ける池永、武久の両CBや右SB寺田が跳ね返して決定打を打たせない。また、ドリブル、コンビネーションで入れ替わろうとしてくる相手に対してしっかりと足を残してボールを引っ掛け、奪い取っていた。

 そして、ボールを動かす上手さも備える草津東は、前線でハードワークを徹底する寺川、力石の2トップを中心に幾度か近江の切り替えの速い守備を上回る形で前進。前半32分には、右クロスのクリアから左中間の力石へ縦パスが入る。これを足元で受けた力石が右へ流れながらじっくりとキープして右足シュート。こぼれ球に切り替え速く反応した力石が味方に残す。最後は、左後方でサポートしていた波多野が右足シュート。正確な一撃を左隅に決め、1-0とした。

前半32分、草津東は2年生MF波多野凛空が右足で先制ゴール
応援団と一緒に喜ぶ

 近江はすぐに反撃。中江の右FKを高本が頭で合わせる。前半38分には、自陣PAでルーズボールに頭から飛び込んだ草津東MF谷口をファウルで止めてしまい、PKを献上。だが、谷口の右足PKをGK山崎が止め、1点差を維持したまま前半を終えた。

近江はGK山崎晃輝主将がPKのピンチでビッグセーブ

 その近江は、後半開始から藤田と池田をMF市場琉祐(2年)とDF廣瀬脩斗(3年)へ交代。廣瀬を3バックの右へ入れたことによって中江を左WB、岩見を右WBへ移した。近江は中川がアグレッシブにボールを運び、福本の仕掛けや市場の1タッチパスを交えた崩し、クロスからゴールへ。だが、草津東はボールを奪い返すと力石や波多野がドリブルで打開したほか、左SB成宮や上原ら技術力の高い選手たちが簡単にはボールを失わず、相手の勢いに呑まれない。

近江MF伊豆蔵一惺がゴール前に切れ込む

 そして、15分に草津東が貴重な追加点を挙げた。GK岡留が鋭い飛び出しで相手の攻撃を止めると、パントキックに力石が競り勝つ。そこから、寺川が1タッチで力石へパス。前方の空いていた力石が思い切り良く右足ミドルを狙うと、ボールはゴールネットに突き刺さった。近江にとっては痛恨の1点。それに対して草津東は、GK岡留の声によって、喜びすぎずに試合を再開する。

後半15分、草津東FW力石龍之介が右足ミドルを叩き込んで2-0
貴重な追加点

 近江は22分に岩見をMF森新(2年)と交代。失点後、よりボールが動くようになり、相手を敵陣に押し込んで試合を進めて見せた。だが、草津東は27分、近江のFKの流れからクリアを拾った相手選手へ力石が強烈なプレス。ボールを奪うと、そのままドリブルで相手ゴール前まで運び、最後は右足ループシュートでゴールネットを揺らした。

後半27分、草津東FW力石龍之介がこの日2点目のゴール

 0-3とされた近江は29分、中江を前回大会全国決勝でゴールを決めている10番FW山本諒(3年)とスイッチ。草津東も同じタイミングで成宮を左SB六車琉太郎(2年)へ、そして34分に寺川と力石をMF川口祐樹(3年)、FW西藤有玖(1年)と入れ替えた。

 近江は試合終盤、テンポ良くPAまでボールを運べるようになり、猛攻。だが、「もうとにかく相手より走ること、相手に根性で負けないこと。メンタル面でもここって時にどれだけ自分たちの力を出せるかっていうことを1番求めてやってきました」(上原)という草津東は、最後まで運動量が落ちない。また、GK岡留が見事な反応でシュートセーブ。40+3分には相手の決定機で武久がゴールカバーして、失点を防いだ。

草津東を牽引したMF上原周主将
近江は後半終了間際、FW山本諒(左端)がゴールへ押し込もうとするが、草津東の2年生CB武久宏斗(中央)がゴールカバー

 近江はミドルシュートがポストを叩く不運もあって、無得点。伊豆蔵は「相手コートに入った後にスペースもなくて、背後という形もあまりできずに、ブロックをなかなか崩せることができなかったです。自分たちの弱さが明らかになった試合だと思います」。草津東が3-0快勝。無失点優勝を果たし、目標への新たな一歩を刻んだ。

草津東が全国切符を勝ち取った

 草津東の目標は前回大会の近江の準優勝を超えて日本一。そのためには、この日表現した「奪う守備」をより強化しなければならないという考えだ。牛場監督は「この喜びだけで舞い上がらず、しっかり準備はしていきたい」と語り、上原は「自分たちの目標はもう全国でてっぺん取ることなんで、もっと上を目指して、この1か月間、またこの最高のチームとやる期間が伸びたんで、またもっとチームで高め上げていければなと思います。自分たちのやることを自信もってやれば全国でも通用するって僕はもう自覚していますし、その最高を引き出せるように、この1か月間マジで準備して、どこのチームよりも長い冬を過ごしたいと思います」と力を込めた。近江へのリベンジは日本一になるための通過点。全国で勝つチームになるために取り組んできた草津東が、もっと強くなって選手権開幕を迎える。

(取材・文 吉田太郎)


●第103回全国高校サッカー選手権特集
Source: 大学高校サッカー

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