[MOM1018]東海学園大FW高橋旺良(1年)_“崖っぷち”生還の立役者は元U-17日本代表の大型ルーキー。大逆転1G1Aで味わった「初めての喜び」

FW高橋旺良(1年、写真中央)が同点ゴール
[12.16 インカレ決勝ラウンド第2節 九州産業大 2-3 東海学園大 本城]

 後半15分からピッチに立った184cmの大型スーパールーキーが、崖っぷちの東海学園大を救った。チームは後半38分に勝ち越しゴールを許し、敗退決定の危機に瀕する中、もとU-17日本代表FW高橋旺良(1年=中央学院高)が大逆転に導く1ゴール1アシストの大活躍。周囲からの溢れる期待を見事な結果に結びつけた。

 1-1で迎えた後半15分、ベンチに控えていた白いユニフォームの背番号30がピッチに送り出されると、会場のムードは一気に変わった。「オーラ、自分で行け!」「オーラ、中に入れ!」。ベンチからの指示は“オーラ(旺良)”一色。その名のとおり、どこか特別な雰囲気を身に纏った1年生FWへの期待にあふれていた。

 ただ、高橋自身が試合に入るまでには時間がかかった。後半18分に放ったカットインシュートの強烈さは素質を示すものではあったが、大きく枠外。その後はチーム全体がサイドを使って押し込む中でボールになかなか触れず、同38分には九州産業大のダイナミックな攻撃に屈し、このままではグループリーグ敗退という苦しい失点も喫してしまった。

「チームが同点で、絶対に自分が決めて勝たせようと思っていたけど、最初はそんなにいいプレーができなくて、失点もしてしまって……」(高橋)。

 ただ、そこから高橋はもう一段ギアを上げた。「そこでどうしようとならず、絶対に逆転に絡んでいこうと思っていた」(高橋)。相手が逃げ切り体制に入り、さらに押し込む流れになっていた中、頭をよぎっていたのは前日練習での安原成泰監督、小倉隆史テクニカルディレクターのアドバイスだった。

「安原さんと、小倉さんにゴール前での入り方が欠点と言われて、そこでいろいろと教えてもらったことで練習した。自分はあまり中に入るのが得意じゃないけど、入るふりをして外で待ったり、一回中に入ってから外に流れみてもいいんじゃないかということを言われた」(高橋)

 すると後半40分、まさにその振る舞いが結果につながった。左サイドを突破したDF上野滉太(3年=聖和学園高)の折り返しは相手に当たって軌道を変えたが、ボールはやや待って中に入った高橋の足元へ。「直感でここに来るのがわかった」。最後は持ち前の決定力で冷静にGKのいないコースに打ち切った。

左からの折り返しを沈めた同点ゴール

「(アドバイスの実践は)ぶっつけ本番だったけど試合で出せてよかった」。同点ゴールで流れに乗った高橋は後半43分、またも上野からの折り返しにゴール前で反応すると、シュート性のボールをファーサイドへ。そこに走り込んだDF大塚一希(3年=神戸弘陵高)がスライディングシュートで合わせ、劇的な決勝点もアシストした。

 決めた大塚をはじめとしたチームメートは当初、高橋のシュートミスだと感じていたが、実は“パスミス”が流れた形だった。「1点目で真ん中に決めていたので、相手のGKとDFが真ん中をケアしてくると思って、サイドに2人見えたので、どっちかに合えばいいなと思って横に流した。ちょっと(ゴール方向に)ズレてしまったけど、入ってきてくれて良かった」(高橋)。最後はゴール前の冷静さでも異質なポテンシャルを示した。

アシストのシーンでは視野にDF大塚一希(背番号26)を捉えていた

 今季の東海学生サッカーリーグでは、ルーキーながら3位タイの13ゴールを記録した高橋。インカレ初戦・筑波大戦では先発起用もされていたが、周囲の期待には「そんなに期待されるほどの選手だとはまだまだ思えていない。もっと自分の中にも期待されていいんだと思えるくらいの選手になりたい」と恐縮気味に話す。

 それでも高校3年時の昨年3月には早生まれを活かし、U-17W杯を目前としたU-17日本代表に招集されるなど、ポテンシャルはすでに知られるところ。「高校3年生は自分の個を磨く時間ですごく成長できたし、大学に入ってからは監督とスタッフがリーグ戦でたくさん使ってくれて、本当に良い経験になっている」と期待の起用に感謝を持ちながら、日々の成長につなげようとしている。

 そうした大学生活では、インカレという最後の大会で団結して戦うという日々も大きな経験になっている様子。「今日は自分が決めた時もめちゃくちゃ嬉しかったけど、決めた時よりもアシストして逆転した時のほうが嬉しかった。そういうのは自分の中で正直初めてで……。自分のゴールじゃなくてすごい喜ぶのは初めてだったので、いい試合になったなと思います」と静かに明かしてくれた。

 ただ、今大会をここで終わらせるつもりはない。最終節の大阪体育大戦は勝てばベスト8入りが決まるというシンプルな大一番。「本当は余裕を持ってプレーしたいけど、泥臭く点に絡むことを意識して絶対に勝ちたい」とチームのために結果を出すつもりだ。

(取材・文 竹内達也)


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Source: 大学高校サッカー

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