国立で優勝メダルを獲得する。帝京高(東京B)は15年ぶりの選手権出場。その最終ラインの要がCB田所莉旺(3年)だ。187cmの長身DFはスペースへ運ぶドリブルとショートパス、そして非常に正確なロングキックを操る。今夏以降は対人守備でも大きく成長。U-18日本代表入りも果たした。
田所は、川崎Fのアカデミー時代にU-15日本代表候補、U-16日本代表に選出されていた逸材DFだ。23年シーズン開幕前に川崎F U-18から帝京へ加入。その1年目は全国大会に出場することができなかったが、今年度はインターハイ予選で優勝し、選手権予選も制した。川崎F、帝京に感謝する田所は、国立開幕戦(対京都橘高、12月28日)からスタートする選手権へ意気込み新た。注目DFが目標の日本一や帝京での日々などについて語った。
―選手権、去年届かなかったところに今年はたどり着くことができました。率直な感想を教えて下さい。
「去年はほんとに準決勝で負けてしまって悔しい思いをしていた中だったんで、今年、同じ相手(國學院久我山高)と決勝でっていうところで、より一層気持ちは入っていました。また、自分たちはあまり強く意識はしてなかったんですけど、15大会ぶりっていうところで、周りからの期待もある中で、こうやってしっかり東京の代表として選手権に出れるっていうことは非常に嬉しく思います」
―田所君にとっても是が非でもとっておきたいタイトルだったと思うが。
「帝京に入ってきて、やっぱり1つの目標でありましたし、サッカーやってきた中でも凄く大きい大会の1つ。そこを目指してたのもありますし、自分たちの代で出れるっていうのは凄く嬉しく思います」
―優勝の瞬間は砂押君と抱き合っていた姿を見たけれど、どんな感情だった?
「やっぱり、(砂押)大翔を中心に今年はやってきてたんで。最後、自分がボール蹴って終わって、その笛を聞いた時にこみ上げてきた思いっていうのはやっぱ強かったです。最初、目に入ったのが、大翔が泣き崩れている姿だったんで、大翔が1年間チームのためにやってくれてたんで、そこで一緒に喜んだって感じですね」
―途中から入ってきた分、自分が何とか連れていく、先輩たちにも期待されてるっていう話をしていたと思うが、それに応えられたのは本当嬉しかったのでは?
「先輩の代で自分が試合に出させてもらってたんですけど、思ったように活躍できなくて、もうほんとに不甲斐なさと、自分が入ってきてやってやろうって思ってた分、悔しさが強かったのが去年の大会だったんで。その中でも引退する時に、『次はオマエが引っ張って、絶対全国行ってくれ』っていう話は先輩方からしてもらってたので、それが1つ達成できたっていうのは恩返しの1つになったのかなっていうのと、去年1年、自分を育ててくれたのがやっぱ1個上の先輩たちだったので、ほんとに形として返せたのは良かったかなと思います」
―先輩たちと話はできた?
「優勝した時に色々な先輩が『おめでとう』っていう話はして下さって、試合前も『頑張って、絶対行ってくれよ』っていう話があったんで、それに結果で応えられたのは良かったかなと思います」
―育ててくれた帝京、フロンターレへの恩返しになった。
「自分を育ててくれた方々がサッカー始めた頃からたくさんいる中で、1番長く在籍してたフロンターレっていうところにほんとに感謝しています。その中で自分を受け入れてくれた帝京にもほんとに感謝していて。この学年は、特に自分を入ってきた時から仲間として認めてくれたので、それは自分の中で大きかったですし、やっと1つ帝京に、仲間に形で返せたっていうのは、ほんとに良かったかなって思います」
―特別な思いを持って、帝京の門を叩いた。辛かったことも多かったと思うが。
「入ってきた時は周りからも色々なことを言われたりとか、憶測だったりとかで言われることが多くて、その中で自分としても傷ついたりとか、言われた言葉とかにちょっと考えたりする部分もあって。それでも仲間がいてくれて、自分を支えてくれて、家族もそうですけど本当に周りの人のサポートがなかったら成し遂げられなかったものだと思っています。それが選手権っていう形で、ほんとに最高の舞台で返せたっていうのは、自分の中でも1つ嬉しく思う反面、余計もっとやらないとなっていうようなところは出てきたかなっていう風に思います」
―結果出して黙らせるじゃないけど、そういうことがエネルギーだったのかなと思うが。
「何言われても、帝京で活躍することが1つのアピールっていうか、見てる人たちにやっぱり凄いんだな、いい選手なんだなって思われることだと思いますし。その形が1つ、選手権の前に代表に入れたこととかいうのはあったと思います。でも、それもやっぱり仲間のサポートがなかったら成し遂げれなかったことなんで、ほんとに仲間には感謝しています」
―この1年の成長を自分でも感じるのでは?
「今年の夏以降、より一層自分がセンターバックとしてチームを守らなきゃいけないっていうところで、守備のところは強化してきましたし、去年の先輩だったり、フロンターレの時の先輩だったり、ディフェンダーでプロに行ってる選手が身近にいるので、手本にする選手が身の回りにいてくれたっていうのが自分の中で大きかったです。インターハイ以降、ボールを奪い切る力だったり、ほんとにゴール前で身体を張るところっていうのはより一層、自分の中でできてるのかなって思います」
―高井君(幸大、川崎F)に1歩1歩近づくことができている。
「やっぱり1番の憧れですし、やっぱり本当に目指して来てもいるんですけど、ほんとに超えなきゃいけないところだなっていう風にも思っているので。選手権に出るって決まった時も、高井さんから『おめでとう』っていうような言葉をもらえたので、それはほんとに自分の中で嬉しいし、余計『頑張ろう』って思えたので、嬉しかったです」
―高井君、そういうコメントも送ってくれるんだ。
「(インタビュー時は)今、シーズン途中なんですけど、自分がLINEさせてもらったりとかすると、ほんとに返してくれますし、忙しいのに自分と会話してくれて、それが自分の中での刺激にもなっています。ほんとに憧れなんで、自分の『頑張ろう』っていう原動力っていうか、『もっと上手くなりたい』って目指さしてくれているので、ほんとにいい先輩だなって思います」
―これまではどのようなことを学んできた。
「ユースの頃から高井さんがトップ行って帰ってきての成長を見ていました。日頃からコミュニケーション取ってくれて、優しい先輩なんで、ある意味厳しい言葉を掛けてくれるっていうよりは、プレーで見せてくれるっていうか、自分はほんとにサッカー面での話より、ちゃんと高井さんを見て、そこで吸収してるものが多いかなっていう風に思います」
―田所君の記事に対するフロンターレサポーターの反響が多くて、田所君も気づいてるかなと思うけれど。
「フロンターレのサポーターの人は皆さん知ってる通り結構温かくて。日頃から辞めた自分も気にしてくれていて、会場でまで足を運んでくれるサポーターの方とかも多いです。それは凄く嬉しいですし、東京都の決勝の時も自分の名前の横断幕が用意されてたりとかして、自分がチームを離れても応援してくれる人がいるんだなっていうのは、凄い自分の励みになっています。フロンターレを辞めた身なんですけど、周りの人からフロンターレ出身の選手はいい選手だなとか、立ち振る舞いとか、プレーもそうですけど、そういう風に見られることが大事だと思うので、そこは本当に意識するようにはなってきました」
―田所君は足元もあって、フロンターレっぽい選手。
「後ろのビルドアップの部分とか、足元の技術っていうのは、全国見ても自分の1番の武器っていうか、他の選手に負けないなっていうような自信もあります。それは間違いなくフロンターレが育ててくれたものだと思っていて、フロンターレらしさっていうのが、自分のストロングポイントになっている。帝京に入ってきてからはそこも活かしながら、帝京に入ってより一層守備の部分にこだわってきて、自分が理想とする選手に近づけているのかなって思います」
―改めて、帝京の門叩いた時っていうのは、どのような気持ちだった?
「いざ入ったからには、やっぱり選手権っていうのは目指してたものの1つですし、自分の中ではプレミアリーグでプレーしたいっていうのもあったんですけど、それはちょっと2年連続で叶わなくて。それは後輩たちにしっかり託して、来年、再来年頑張って欲しいなっていう風に思いますし、リーグ戦に関しては、日頃の練習でもっともっと後輩に向けて、強度を上げて伝えていけたらなって思います」
―高校1年の時は当たりかけていた壁を乗り越えてきて今がある。
「試合に出れない時期だったり、代表を外れてしまって、自分の中である意味初めて壁にぶつかったっていうか、挫折って言っていいのか分からないですけど、そういうのにぶつかった中で、色々なものを考えながらサッカーをしてきました。その中でも乗り越えられたのは、やっぱり家族のサポートなどはほんとに大きくて、帝京に入る時も後押ししてくれましたし、家族のサポートなしではここまで来れなかったのは事実で、受け入れてくれた帝京もそうですけど、ほんとに周りの人ありきで今サッカーできてるので、ほんとに感謝しています」
―普段も、ピッチ外でもご家族に相談することも多い?
「結構相談には乗ってくれて、自分がやりたいって言ったことに対して、とてもポジティブに後押ししてくれて、自分が選択したんだったら、それを家族はみんなサポートするよっていうようなことを言ってくれる。それは自分の中で凄く前向きになれるきっかけでもあって、ほんとに何気ないことでも凄い会話しますし、練習終わって買い物行く時とかも基本家族で行ったりとか、ちょっと遅い日とか家族で迎えに来てくれたりとかもするので、その辺は本当に家族のサポートが大きいかなと思います」
―かなり前向きな性格かなと思うけど、その影響も大きいのかな。
「やっぱりお父さんとかお母さんが凄く『優しい人になりなさい』っていうか、『人に対して思いやりがある人になって欲しい』っていうようなのは凄い言ってたのは小さい頃から覚えています。家族が自分を尊重してくれながら育ててくれたので、それはほんとに自分も両親にやってもらった分、周りにもそう還元していきたいっていうか、家族がしてきてくれたことを自分の中に落とし込んで、周りの人にもそういう立ち振る舞いをしたいなっていう風には思います」
―ピッチ外、学校生活とかでは、田所君はどんなやつ?
「結構、チームメイトのラビーニ(未蘭)とか、砂押とかには結構イジられたりもするんですけど、ほんとにみんなこの代は仲いいですし、ほんとにみんなが1人1人仲良くて、凄いコミュニケーションを取る学年なので、キャラクターは意外とイジられてるかもしれないです」
―マイブームはある?
「マイブームはゲームとかはするんですけど、ここに来て、サッカーのDFの映像を見漁ってて、昔の選手もそうなんですけど、最近ちょっと流行ってるっていうか、そういう選手を見てちょっとプレーの時に参考にするっていうのは、自分の中で1つ心がけてるっていうか、ハマっています」
―例えば誰を見る?
「最近だと、リバプールの(イブラヒマ・)コナテとか、あと古い選手だと(アレッサンドロ・)ネスタとか、ああいう選手を見るのが意外と好きですね」
―ザ・センターバックを。
「元々は板倉(滉)さんとか、高井さんとか、谷口(彰悟)さんとかフロンターレの選手を見ていて、そのビルドアップの部分だったり、ロングフィールドの部分っていうのは、物凄く参考になるシーンが多くて。でも、『自分に足りないものは何だろうな』って思った時に対人の守備だったりっていうところで当たりが強いっていうか、球際の部分だったり、予測の部分で、センターバックらしい選手を見るようにしています」
―今、プレデターを着用している理由は?
「自分、足の幅が普通の人よりちょっと広めなのかなっていう風に思っていて。あと、キックのところに結構こだわってるんで、その部分でプレデターのゴムのところだったりが凄く自分のキックに合ってるかなってところでプレデターを履いています」
―キックはどう変わる?
「自分のキックはたまに悪い時は内巻きにかかったりとか、ちょっとアウトにかかっちゃったりするのが、プレデターはインステップで蹴ってもそういうのがあんまりなくて。トラップしてキックまでの一連の動きの中でしっかりゴムがあるので、やっぱトラップも止まりやすいですし、その面でかなりいいかなっていう風に思います
―田所君は30メートル、40メートルのキックが素晴らしいかなと思うが、スパイクの影響もある?
「選手権の時からプレデターを履き始めたんですけど、ほんとにキックの質の向上っていうのは凄く自分でも分かりやすく感じる部分なので、それはほんとにアディダスのプレデターのお陰かなって思います」
―フィット感はどう?
「履いた時からだいぶ足馴染みがよくて、他のスパイクとかも履いたんですけど、プレデターが自分の中で1番合ってるっていうか。 U-15の代表活動の時に初めてプレデター履いて、その時から他のコパとかF50とかXとか色々なモデルも試したんですけど、履き始めすぐから何か自分の足にフィットして、靴擦れとかもないので、凄い履きやすいかなと思います」
―DFだとアジリティ勝負なところもあるけれど、対応面はどう?
「踏み込みのところとか、切り返しの部分でも凄いしっかり踏み込めたりとか切り返せる部分があって、それが最近の自分の中で守備の1対1の対応だったりの上達に繋がってるのかなって思います」
―デザインについては?
「世界でも有名な選手が何人か履いてるようなスパイクで、アディダスのプレデターって特に最新っていうか、そういうところを感じるので、凄いデザイン含めて格好良いなって思います」
―これまでのスパイク選びはどのようなところにこだわっていた?
「フィット感のところは自分の中で1番あって、軽さとかよりは自分の足に合うかとか、やっぱり後ろの選手なんで、ちょっと靴擦れとかすると気になっちゃって。少し対応とかに影響出てきちゃうかなっていうところで、フィット感のところとか、あと自分はキックが武器なので、そのトラップのしやすさとか、パスの出しやすさっていうところで選んでたんですけど、このプレデターは特にそれが他のスパイクに比べてやりやすいかなって思います」
―このスパイクを履いて、国立のピッチに立つ。
「やっぱり開幕戦で、国立でやれるっていうのは凄い貴重な機会だと思いますし、このスパイクと一緒に国立っていう舞台でできるのは凄く楽しみです」
―抽選会は見ていた。
「見ていました」
―『国立引け』って感じだった?
「大翔が行く前に、何個か『(東京都代表の組み合わせには)こういうパターンがあるよ』っていう話をしていて、国立になるか、シードになるかみたいな話だったんで、結構みんな意見が分かれていました。部室で見ていたんですけど、自分はやっぱ『国立でやりたいな』っていうのがあって。自分はメンバーに入れなかったんですけど、2年前に(川崎F U-18のメンバーとしてプレミアリーグ)ファイナルで国立に行ってたんで、その時に見た国立の景色っていうかはやっぱ忘れてないですし、自分の中で憧れてた先輩があそこで鳥栖に負けてしまった時だったので、何となく自分の中でもあそこでリベンジしたいって。プレミアで出してもらっていたので、メダルがあって、1番おっきいメダルなんですけど、それが銀メダルなんで、自分の中でそれを金に、最終的には国立で変えたいなっていう風に思っています」
―選手権に出ることで、帝京の特別な伝統、注目度を感じているのでは?
「地元の人だったり、サッカー関係者の人には『本当に頑張って欲しい』っていうようなことは言われますし、自分も記事とかちらほら見るんですけど、やっぱり期待されてる声が多いなっていうようなことは率直に感じています。親とかも周りの人から『頑張って欲しい』っていうようなことは言われてるみたいなんで、それはほんとに嬉しく思いながらも、やっぱり期待されてる分、より一層もっと完成度を、個人も、チームも出していかなきゃいけないかなって思います」
―国立などで見てくれる人には自分のどのようなところを見て欲しい?
「自分は後ろのビルドアップだったりとか、後ろからチームを動かすっていうところの声の部分だったり見て欲しいです。声はあんまり伝わらないと思いますけど、予測の部分などはテレビだったり直接見てもらえば分かると思うので。後ろでボール動かしてる時とかロングフィードも注目して欲しいんですけど、チーム全体がボールを奪いに行く時のチーム全体の守備の形などは、後ろの選手としては1試合通してボール持ってない時の帝京も見て欲しいかなって思います」
―この選手権やここからの活動によって自分の将来も決まってくる。重要な日々が続くが、それに向けては?
「この1か月が自分の中でも勝負だと思っているので。今年、高校卒業っていうこの節目の年に最後選手権に出れるっていうところで、そこでの活躍が今後の自分にも響いてくるっていうのは分かってるので、その面でもっと頑張っていきたいなって思います」
―最後に選手権での目標を教えて下さい。
「やっぱりこのチームで全国優勝っていうのが自分の中で1番の目標なので、それを達成するためにもっともっと日頃からチームとして成長を続けていかなきゃいけないなっていう風に思ってるので、ほんとにそこは成長しながら、見てる人に帝京らしさというか、『今年の帝京ほんとに強いんだな』っていう風に思って欲しいので、そのところを帝京の一員として全員で戦っていくので、そこは注目して見て欲しいなって思います」
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(取材・文 吉田太郎)
●第103回全国高校サッカー選手権特集
Source: 大学高校サッカー
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