[12.28 選手権開幕戦 帝京高 2-1 京都橘高 国立]
ハイプレスとポストワークの連続で、すでにスタミナは限界に達していた。それでも舞台は「中学生の時から憧れていて、その時は見る側だったけど、今日はプレーできて感慨深い気持ちだった」という国立競技場。その上、チームが同点に追いつかれた以上、走るのをやめるつもりはなかった。
そして同点被弾からわずか2分後の後半35分、走って闘う帝京高のエースFW森田晃(3年=Forza’02)が試合を動かすビッグプレーをやり遂げた。中盤でボールを奪ったMF砂押大翔(3年)からの浮き球パスに反応し、相手DFを制しながら収めると、冷静な判断からペナルティエリア左にラストパス。ここに走り込んだFW宮本周征(2年)が決勝ゴールを沈めた。
「身体はボロボロだったけど、頭の中は冷静でいられた。宮本のことは練習から信用していて、彼はシュートが上手いのを知っているので、出せば決めてくれると思った」(森田)
スタミナ切れの中で繰り出した完璧なポストプレー。「監督には前半終わった後に『あと10分くらいで交代かもしれない』って言われていたけど、それくらいの気持ちで後半の最初から100%の力を出してプレーしていたら全然交代されなくて……(笑)」。結局後半39分に途中交代となったが、そう話す背番号10の表情は充実感に満ちていた。
劇的な決勝ゴールを決めた2年生の宮本は1トップのポジション争う間柄。この日は森田が先発から最前線に君臨し、宮本は左サイドハーフでの起用となったが、宮本は「この選手権大会でも全然スタメンを取る気でいる」とギラギラとしたライバル心をむき出しにしていた。
その一方、森田のほうは後輩の宮本の実力をリスペクトしつつ、自身の成長につなげてきたようだ。「アイツは自分に持っていないものを持っていて、本当にすごいヤツです。シュートは自分が見てきた中で一番上手いし、練習で参考にさせてもらっている。逆に僕はアイツにない長所、ボールを収めたり、泥臭くプレーしたりというのを見つめ直してきました」。決勝点のシーンはその2人の個性が見事に噛み合っていた。
もっとも「自分が点を取るというよりチームの勝利を考えて、アシストで結果を出せたのが良かった」と語る森田にも、今季J3で大ブレイクを果たしたFW横山夢樹(今治)から引き継いだ“10番エース”の矜持はある。「個人としては点を取れなかったので、欲を言えばそういうところでチームに貢献したい」。ストライカー同士の相乗効果で今大会を勝ち抜き、再びこの国立に戻ってくるつもりだ。
(取材・文 竹内達也)
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Source: 大学高校サッカー
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