[10.7 アジア大会決勝 U-22日本 1-2 韓国 杭州]
「どうすりゃいいんだ」
上から俯瞰して観ている側にも、U-22日本代表の左SB奥田勇斗(桃山学院大/C大阪内定))がもがいている様子は伝わってきていた。アジア大会決勝、U-24韓国代表戦。奥田は攻守で難しいタスクの中にいた。
対面した選手は韓国の至宝イ・ガンイン(パリSG)。アジアでも指折りのタレントの番をするのが第一のミッションである。巧みにボールを引き出すイ・ガンインの動きに振り回されつつも、何とか食らい付いた。
「相手は左利きの選手なので、カットインしてクロスやシュートをされるのが一番注意すべきポイント。まず中には行かせないこと意識して、縦は行かれるのはある程度仕方ないと思って対応した」
起点は作られてしまったし、縦への突破も許したが、左に切り替えられて危なかったシーンは1度だけ。合格点とは言えないものの、及第点の対応ではあった。最初から満点の対応は断念し、及第点を取りにいったところもクレバーな奥田らしいプレーだったとは言えるかもしれない。
より深刻な問題は、本来の持ち味である攻撃面にあった。今回、即席チームを編成する中で本来のポジションである右SBではなく左SBで主に起用されてきた奥田だが、右利きのメリットを逆に活かしてビルドアップにも絡むなど、持ち味は出していた。ただ、イ・ガンインの番をしながら韓国の圧力を潜り抜けて攻めに出ようとしたときに、八方塞がりとなった。
「すごく探り探りの試合になってしまった。最初は高い位置を取ってイ・ガンイン選手を後ろ向きにさせようと思っていた。でも、(左CBの)山崎大地から『遠い』と言われたので、近づいて並行で受ける形が多くなった」
山崎のパスが通らずに難しい対応を強いられたのが切っ掛けにして位置取りを下げたのだが、それに伴って佐藤恵允(ブレーメン)も下がってきて「俺とケインのところでハマっちゃっていた」という形が増えてしまった。
あらためて冷静な頭で考えると、「たとえば無理に自分が相手を引き付けてとか考えずに、もっとシンプルにワンタッチで山崎に戻したり、GKに下げても良かった」といった回答も出てくるのだが、大観衆に囲まれてプレッシャーもかかり、対面はスーパースター、そして決勝戦という場の緊張感が合わさり、「前半の途中から『これはヤバい、まったく何もできへん』と思ってしまった」という状態に陥っていた。
後半は持ち直し、「自分のプレーもできるようになったし、右足で持ち出してカットインして運ぶとかもできた」と本来のパフォーマンスも出てきただけに、余計に「前半からもっとやれたはず」と猛省する試合にもなった。
最後はシビアな体験をしたアジア大会だが、個人としては「すごくプラスになった」経験でもある。大学サッカー界屈指のSBは、「大学に戻ってもっとやっていきたい」とモチベーションも新たに巻き返しを誓った。
(取材・文 川端暁彦)
●第19回アジア大会特集ページ
Source: サッカー日本代表
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