[1.13 選手権決勝 前橋育英高 1-1(PK9-8) 流経大柏高 国立]
前橋育英高(群馬)DF久保遥夢(2年)は全試合にフル出場して7年ぶりの全国高校サッカー選手権制覇に貢献するも、「絶対にここで満足したくない」と力を込めて来年度に目を向けた。
久保は今季から主力に定着し、CBとしてチームを支えた。安定した守備力は選手権でもチームの大きな強みとなり、1回戦から決勝までの全試合フルタイム出場を達成。決勝では4試合16得点の流通経済大柏高(千葉)攻撃陣を最少失点に抑え、コーチ陣からも「この大会を通して成長した」と直接称えられたようだ。
ただ本人は「自分としては手応えは感じていなくて、まだまだ満足していない。良い点もありましたけど悪い点ばっかりだったので、もう一回りも二回りも大きくなってまた(選手権に)戻ってきたいです」と反省。「他の高校のCBに比べて足下の技術とかを求められるので、そういった技術や基礎をもう一回見直してやっていきたい」と課題を挙げながら、さらなる成長を誓った。
そういった意気込みは仲の良いDF竹ノ谷優駕(2年)と「自分たちが目指しているのは3冠」と話しているためだという。インターハイ、高円宮杯プレミアリーグ、選手権の3大タイトル完全制覇は青森山田高(青森)が2021年度(プレミアはEAST優勝でファイナル未実施)に達成しているが、その前はインターハイ、全日本ユース、選手権を優勝した97年度の東福岡高(福岡)にまで遡る。
偉大な記録を目指す上で、決勝に8人の2年生がピッチに立ったことは「本当に大きいこと」と久保。先発の4バックには3人の2年生が名を連ね、10人目までにもつれ込んだPK戦では5万8347人という大観衆の中で7人の2年生がキッカーを務めて最大級のプレッシャーとぶつかった。また1年生は今季の関東ルーキーリーグU-16を8勝1敗で制すると全国大会のMIZUNO CHAMPIONSHIP U-16ルーキーリーグも制覇。ベンチ入りはなかったもののFW立石陽向(1年)が選手権で登録リスト入りを果たして優勝メンバーとなるなど、来季にも大きな期待が寄せられる1年間となった。
もっとも久保は1冠を果たすことも「絶対に楽ではない」と強調した。今季のインターハイは県予選で敗退しており、プレミアEASTの優勝歴はないため来季も厳しい戦いになることを覚悟。今大会チームトップの3アシストを記録したDF牧野奨(2年)も「連覇にこだわりすぎるのではなく、自分たちのやるべきことを」と一戦必勝の思いを口にして来年度を見据える。
来季は前年度の選手権王者として、周りからの見られ方も変わってくるはずだ。竹ノ谷は「注目されることもあると思う」と理解した上で、「そういうのは本当に関係なく、自分たちらしいチーム作りをしっかりして、一つ一つこだわってやっていけたら」とブレずに過ごしていくことが重要だと話す。これは「期待もプレッシャーもあると思うけど、自分たちらしくやってこそ」(牧野)、「プレッシャーに飲まれずに自分たちの育英らしいサッカーを」(久保)などと2年生の間で共通の考えだ。
地に足をつけつつも「最強って言われるようなチームにしていきたい」(竹ノ谷)。久保が「今日から始まっていると思っている」と25年度の戦いについて話せば、同じく今大会全試合フル出場のDF瀧口眞大(2年)も「すぐに新人戦が来てもう一回競争がある」と慢心する気配はない。メンバー外の1・2年生も大きな刺激を受けたはず。チームメイト同士で高め合い、久保が「大好き」と語る現在の3年生を越えて黄金世代になる。
(取材・文 加藤直岐)
●第103回全国高校サッカー選手権特集
Source: 大学高校サッカー
コメント