全国高体連サッカー専門部が行うユース審判員の日本高校サッカー選抜・U-17日本高校サッカー選考合宿帯同企画で、元ワールドカップ主審の西村雄一氏が特別講師として後進の育成に携わった。西村氏は2日間の指導を経て「サッカーが持つ魅力をどんどん引き出していける、そういった力のある若いレフェリーの子たちに会えました。日本のサッカーがもっともっと発展していけることを確信に思った合宿になりました」と笑顔で将来を見据えた。
西村氏は1999年に1級審判員資格を取得すると南アフリカ大会とブラジル大会でワールドカップのピッチに立ったほか、Jリーグ最優秀主審賞に歴代最多の11回輝くなど、日本を代表する審判員として活動してきた。昨年12月にトップリーグを担当する審判員から退くことを発表。今後はJFA審判マネジャーを務めていく。
ただ今回はJFA審判マネジャーとしての業務ではなく、高体連から元W杯主審として依頼を受けたという。「合宿に審判員として参加している高校生たちにレフェリーの楽しみであるとか、サッカーに関わることで人生を豊かにしていけるようなそんなことをお伝えできれば」と快諾し、合宿3日目と最終日の2日間、静岡県で6人のユース審判員を指導した。
合流初日の1月27日は日本高校選抜候補とU-17日本高校選抜候補がそれぞれ東京国際大と30分×4本の練習試合が開催。28日には両選抜候補が対戦する25分×4本の練習試合が行われた。西村氏はユース審判員に、失敗を恐れずにチャレンジすることの重要性を説きながらレフェリングを見つめ、各ゲームの終了後にはユース審判員との振り返りを実施。ユース審判員はGKがボールを持った際の視線の動きなど細かい点まで伝えられると、真剣な表情でメモを取りながらレジェンドの声に耳を傾けていた。
練習試合後に行われた紅白戦では西村氏もピッチに立ち、プロのポジション取りを見せながら主審を務めるユース審判員をリアルタイムで指導。金言を受けた寺谷大助(2年/壬生高)審判員は「ボールを持っている選手も周りも見えるポジション取りにとても無駄がなくて、ボールがここに来るという予測がワンテンポもツーテンポも早かった。これが本当の世界基準なんだなと思いました」と凄みを肌で感じていた。
また27日の夜には西村氏がユース審判員に向けて講義を行った。小早川稀審判員(2年/大社高)は「レフェリーがまず選手をリスペクトするから選手は選手同士や監督、審判をリスペクトするのだなと、そういう相乗効果で試合は良い雰囲気になると学べました」と振り返り、他のユース審判員も審判のあり方を再認識した様子。工藤海人審判員(1年/大体大浪商高)はスキル面での指導も踏まえながら「すごく理念を持っていらっしゃる方で、選手は『このレフェリー良いな』と絶対に思う。プロだなと思いました」と刺激を受けていた。
もっとも西村氏も「素直な高校生たちに出会うことができました」と喜びを示し、「6人が6様にちゃんとレフェリーというものに向き合って、レフェリーを通したサッカーというものに向き合っていた。そして6人全員が選手を支えたいと思っていました。選手を支えることに興味を持って『極めていきたい』という思い(があること)は、日常においても人を支えることを当たり前のようにできる人たち、リスペクトの心を持った人たちだと思います。そういったところが全員から見られたのは嬉しかったですね」とユース審判員を称賛する。そして将来の人生が豊かになっていくことを期待した。
「僕自身も生まれながらにしてのレフェリーではなく、レフェリーに興味を持ってサッカーに関わることで人生の喜びに繋がったというところがあります。高校生でレフェリーに興味を持った子たちはここから5年後、10年後、15年後、始めたきっかけをもとにレフェリングを楽しんで、技能も担当するカテゴリーもどんどんふさわしいものになっていく。この自分が成長できるというところが、やっぱり一番レフェリーをやっていての醍醐味だと思います」
「そしてレフェリーという立場で、実は人として成長していく。そういうことがレフェリーをやっている中での意味のあることなのかなと。レフェリングが上手になっていくことはもちろん大切なことだけれども、人として素晴らしい大人になっていく。そういうふうに成長していけることが、サッカーに関わりながら学んで大切にすべきことだと思います」
西村氏はJFA審判マネジャーのキャリアを歩み始める今後について、「ユース年代の方にも、そうではないずっと審判としてサッカーを支えている方にも、審判活動は素晴らしいことと誇りに思えるようなことを共有していきたい」と話す。今合宿の紅白戦で行ったような、非公式戦で主審と共にピッチに入ってリアルタイム指導を行うことにも意欲。「一緒にやってみて感じてもらえることがいっぱいあると思うので、そういったところで笛を吹くことが多くなっていくと思っています」と展望し、引き続き審判界や日本サッカー界を支えていく構えだ。
(取材・文 加藤直岐)
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Source: 大学高校サッカー
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