[新人戦]雨野颯真と藤原優希。日本一を味わった“2人の先輩”の後継者候補。前橋育英GK蝦名理音が感じた「試合に出続けること」の意味

前橋育英高の新守護神候補、GK蝦名理音(2年=tfaジュニアユース出身)
[2.9 群馬県高校新人大会決勝 前橋育英高 2-1 桐生一高 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

 それぞれ夏の日本一と冬の日本一を味わった、2人の偉大な先輩から引き継ぐタイガー軍団のゴールマウス。プレッシャーがないはずがない。でも、自分は自分にできる100パーセントのプレーを出し尽くすだけ。ここから一歩ずつ成長を続けて、必ずみんなの信頼を勝ち獲ってみせる。

「育英では良いキーパーが続いた中で、今はチームの中でもキーパーに対する不安があると思うんですけど、そこは自分のプレーで変えていくしかないので、日々の練習から頑張って、2人の先輩を超えられるように努力します」。

 高校選手権で日本一に輝いた前橋育英高(群馬)の新守護神候補。GK蝦名理音(2年=tfaジュニアユース出身)はレギュラーとして県内一冠目を手繰り寄せた自信を胸に、高校ラストイヤーを戦い抜く準備を整えていく。

 新チームになって初めて挑む公式戦。令和6年度群馬県高等学校新人サッカー大会もこの日が決勝。ここまでの4試合をすべて無失点で勝ち上がってきた前橋育英のゴールマウスには、一貫して蝦名が立ち続けてきた。

 2年生だった2024年は、とにかくケガに悩まされる。「去年のこの時期ぐらいから腰のヘルニアになってしまって、手術をしてから半年間ぐらいはずっとサッカーをやっていなかったので、ほとんど試合も出られなかったですね」。

 同級生の活躍している姿にうらやましさは覚えたものの、少しずつ自身のマインドをポジティブに切り替えていく。「離脱した最初のころは本当にツラかったですけど、キーパーコーチの方も一緒に手伝ってくれて、リハビリや筋トレにしっかり取り組めましたし、プレミアリーグの試合もしっかり見ることができたので、そこで自分も頑張らないとなと思いました」。

 迎えた今大会は継続して試合に出続けることで、新たな感覚を味わったという。「ちょっとコンディションを合わせるのが難しかったですね。普段は小さいコートでやっている分、大きいコートになると試合の感覚も変わってくるので、そこは自主練をしたりして、試合勘をなくさないように頑張ってきました」。ようやく手にした出場機会。そう簡単に手放すつもりなんてあるはずもない。練習でも、試合でも、常に全力を出し切って、自信の芽を1つずつ自分の中に生み出していく。

 県内最大のライバル・桐生一高と対峙したファイナル。この試合でも先発に指名された蝦名に見せ場が訪れたのは、1点をリードしていた前半17分。左サイドをシンプルに崩され、エリア内へ侵入してきた相手アタッカーの動きを見極めると、完璧なタイミングで間合いを詰めに掛かる。

「あそこは自分が藤原(優希)さんを見てきて意識していたところですね。1対1のシュートストップのところで、前に詰めるタイミングを練習してきたので、自分の良さが出たシーンだったと思います」。抜群の飛び出しでコースを消し、相手のシュートを身体でブロック。チームメイトたちも殊勲の守護神へと拍手を送る。

 前半のうちに同点弾を献上し、大会初失点を喫したものの、その6分後にFW四方田泰我(2年)が沈めた勝ち越しゴールがそのまま決勝点に。ファイナルスコアは2-1。「自分の試合の入りはあまり良くなかったですけど、チームがみんなで守ってくれましたし、自分としては課題も残りますけど、1本シュートが来た時にしっかり止められて、自分の良いところを出せた部分もあったので、全体的には良かったかなと思います」。新チームにとっての初タイトルを引き寄せ、試合後には蝦名の表情にも笑顔が広がった。

 真剣勝負をピッチで味わったからこそ、新たな想いも自分の中に湧き上がってくる。「今まではあまり試合に絡めなかったんですけど、こうやって試合に出てみると、キーパーの重要性が改めてわかりましたね。去年の藤原さんだったり、一昨年の雨野さんを見てきたので、もっとチームに貢献できる選手にならないといけないなと思いました」。

 “前任”の藤原優希(3年)はこの冬の高校選手権で、“前々任”の雨野颯真(早稲田大1年)は2年生レギュラーとして挑んだ2022年のインターハイで、それぞれ正守護神として日本一を経験。彼らの大会を通じたパフォーマンスには目を見張るものがあった。

 もちろん蝦名も前橋育英のゴールマウスを任されるのであれば、2人の存在を意識しないわけにはいかない。「雨野さんは人として尊敬できる方で、チームをまとめるところがものすごかったですね。自分はあまりチームに声掛けとかできないタイプなので、そこは学びたいですし、藤原さんは1対1の飛び出しが本当に上手くて、去年はそこをずっと見てきたので、自分も取り入れていきたいなと思いました。技術的な部分は2人に比べてまだまだ足りないので、もっと頑張りたいです」。

 とりわけ選手権の決勝は特別なゲームだった。中学時代をtfaジュニアユースで過ごした蝦名にとって、流通経済大柏高のMF柚木創(3年)とFW山野春太(3年)は直属の先輩。同級生のMF安藤晃希(2年)も交代で国立のピッチに登場しており、その光景をスタンドから見つめていた蝦名は、不思議な感覚に包まれていた。

「一緒にサッカーをしていた人たちが、ああいう舞台で活躍しているのをスタンドから見て、刺激になりましたね。あの中でやるのは本当に緊張すると思いますし、あそこで藤原さんも凄いプレーを見せていたので、やっぱり自分も『あそこに立ちたいな』と思いました」。

 まだシーズンは始まったばかりだが、イメージは確実に膨らんでいる。先輩たちがとにかく輝いて見えたあの舞台に、今度は自分が必ず立つ。日本一のチームとして今シーズンを走り出すタイガー軍団の護り人。蝦名理音は自らが繰り出す圧倒的なセーブで、2025年のチームもみんなで望んだ場所へと導いていく。

(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー

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