日本サッカー協会(JFA)は今季、新たに6人のプロフェッショナルレフェリー(PR)を採用し、合計人数は史上最多の24人に達した。30代前半の若手審判員の抜擢も積極的に進め、改革は着実に進行中。Jリーグの判定精度向上に加え、世界に通用する審判員育成に向けた方針を鮮明に打ち出した。
JFAが新たに契約したのはJリーグ経験豊富な小屋幸栄主審(43)、上田益也主審(42)のベテラン2人と、長峯滉希主審(33)、高崎航地主審(32)、大橋侑祐主審(30)、道山悟至副審(30)の若手4人の合計6人。W杯南アフリカ大会、ブラジル大会で笛を吹いた西村雄一主審が昨季限りで引退したため、人数ベースでは計5人の増加となった。
JFAの扇谷健司審判委員長は6人との新規契約に際し、「経験者だけでなく、今後日本を引っ張っていく人材と例年より多く契約した」とコメント。若手4人はいずれも国際審判員にも登録されており、「10年後にはそうした人材がJリーグを引っ張ってほしい」(扇谷委員長)という次世代育成の狙いが色濃く表れる採用となった。
そうした人事の背景には、現代サッカーの高速化・ハイインテンシティ化があるようだ。ロシアW杯で第4審を務めた元国際主審で、現在は審判員の指導にあたっている佐藤隆治JFA審判マネジャーは今月上旬に行われたレフェリーブリーフィングの場で、次のように近年の審判トレンドを語った。
「世界のサッカーがインテンシティの高いサッカーが求められていて、そこを裁く審判員のフィジカル、インテンシティの高さが求められている。するとどうしてもフォーカスされるのが若い審判員になる。VARなどのテクノロジーが入っても、いかに堂々とレフェリングするかが大事になっている中で、若いというのは一つのポイントになっている」
そうしたトレンドを踏まえ、JFAでは昨年以降、審判員を担当するアスレティック・トレーナー、フィジカルコーチと専属契約を締結し、コンディション強化・調整の体制を整備。今季からはトレーニングにGPS機器を新たに導入し、ハイスピード下でのポジショニング向上をさらに進めていこうとしている。そうした中、フィジカル的にも伸びしろの高い若手審判員に“審判に集中できる”環境を用意した形だ。
扇谷審判委員長によると、こうしたPR採用の第一の目的は「Jリーグに質の高い審判員を常に供給し続けること」だ。近年、西村主審ら数々のレジェンド審判員の世代交代期に直面している中、「直近のところを強化するのも当然だが、やはり5年後、10年後を見据えて強化をしていかないといけない」という方策は急務となっている。
もっとも国内大会の担当に加えて、「世界で活躍する審判を育成する」というもう一つの目的もある。
近年は国際サッカー連盟(FIFA)やアジアサッカー連盟(AFC)もトップ審判員の若年化を推し進めており、W杯などの大舞台に立つためには早期台頭、早期抜擢が絶対条件。扇谷委員長は「AFCは若い審判員ということで第一のハードルを設けて、そこから強化してW杯に送り出そうというプランになっている」と明かす。
日本人国際主審の中では現在、2026年の北中米W杯に向け、昨冬のアジアカップや昨季のAFCチャンピオンズリーグ、W杯最終予選で評価を高めた荒木友輔主審(39)が有力候補となっている。だが、さらなる層の厚みも不可欠。すでに実績を重ねている谷本涼主審(37)、笠原寛貴主審(35)も含め、さまざまな大会で日本人審判員の存在感を高めていくことが求められている。
そうした中、扇谷委員長は次のように現状の取り組みを話す。
「いまは荒木を中心にW杯を目指して頑張ってくれていますが、この1回というだけではなく、ずっと継続的にW杯審判員を輩出したいと考えているので、若手審判員には早いタイミングで多くの経験をさせる必要性があると考えています。それがどういう経験なのかというと、やはり海外に行ってレフェリーをすること。いまはAFCの中ではいろんなカードに関わってもらっていますが、UEFA(欧州)、CONCACAF(北中米カリブ海)、COMMEBOL(南米)など、そういったところの経験も若いうちからしてもらいたいし、我々としてはなんとかそれを実現させられるようにやっていきたいです」
昨年はJリーグとJFA審判委員会の共同事業で、コパ・アメリカ直前の強化試合として行われたメキシコ対ボリビアの国際親善試合を荒木主審が担当していたが、今回新たに抜擢されたPRにもそうした機会を積極的に与えていく構えだ。
またこうした若手審判員の育成に向けては、佐藤マネジャーも極めて高いモチベーションで臨んでいる。佐藤マネジャーは2018年のロシアW杯に選出され、現地に派遣されながらも、第4審の割り当てのみで主審担当はなし。22年のカタールW杯では日本から山下良美主審のみが選ばれ、選外に終わったという悔しい経験を持つ。
「私はW杯に行きたかったけど行けなかったので、なんとかして継続的にピッチに立ってほしい。それは全員が叶うわけでもないし、タイミングもある。ただもちろん、Jリーグに常に質の高いレフェリーがいる、Jリーグを裁いているというのも大事なことですが、その中には外でも活躍しているレフェリーがいるという形にしていきたい。
今回は若いPRが新しく入ってきて、J1での経験ということではまだまだですが、そこをJFAとして、Jリーグとして、先を見据えてどうやっていくか。どう全体の質を落とさず、どう次の世代に上げていくか。そこは非常に難題だと思いますし、そういう意味では僕もすごくプレッシャーがかかっています。
でも彼らはポテンシャルがあるし、熱意もある。それを経験のあるレフェリーがサポートしていく。24人のPRで切磋琢磨してやってほしい。そういったことがJリーグのクオリティーを生んで、世界で戦えることにもつながる。そしてやっぱりW杯に絶対に立ってほしい。そのために自分が今の立場で何ができるかを考えてやっていきたいです」(佐藤マネジャー)
そんな佐藤マネジャーも現在、審判アセッサーやインストラクターの立場で世界・アジアにおける存在感を高めている最中だ。JFAとしてはこうしたピッチ内外での取り組みを推し進めていく構え。扇谷委員長は「審判員のプレゼンスを高めていくこともそうですが、審判員の指導者でも、もしかしたらアドミニ(運営)サイドでもそれが必要かもしれません。そうしたところでも日本人がもっとAFCで、FIFAで存在を示すことをやっていかないといけない。そうして常に世界のトップレベルに日本の審判員を輩出できるように頑張っていきたい」と意気込んでいる。
(取材・文 竹内達也)
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