[デンチャレ]地道に積み上げてきた努力は絶対に裏切らない。DF三輪椋平(順天堂大)は「高校三冠世代」の青森山田同期の活躍を刺激に必ず夢を掴み取る!

関東選抜Bの守備陣を束ねたDF三輪椋平(順天堂大3年=青森山田高)
[2.28 デンチャレグループB第3節 北海道選抜 1-3 関東選抜B 時之栖スポーツセンター 裾野C]

 丁寧に、コツコツと、目の前の階段を一歩ずつ上がっていくタイプだということはわかっている。一緒に高校三冠を成し遂げた仲間たちが活躍しているのは嬉しいけれど、自分は自分にできることをとにかくやり切る。それだけが夢へと繋がる一番の近道だと信じて。

「大学4年間はサッカーをやり切るということは両親にも伝えているので、そこはしっかりやり切りたいですし、求められていることと自分のやるべきことをしっかりやった先に、プロ入りという結果が付いてきてくれることを信じているので、そこは徹底してやっていきたいなと思います」。

 『サッカーと生きていくこれから』を懸けた勝負の1年に飛び込む、日本一の味を知るクレバーなセンターバック。DF三輪椋平(順天堂大3年=青森山田高)は今回の選抜活動を糧にして、望んだ未来を手繰り寄せるための準備を整えていく。

「今日も行きのバスで勝った後みたいな感じで音楽を掛けながら来たので(笑)、チームも明るくなってきたのかなと思います」。三輪は笑顔でグループの雰囲気を明かす。デンソーカップチャレンジも3日目に突入。1勝1敗と五分の星の関東選抜Bは、明確に一体感を携えてグループステージ最終戦の北海道選抜戦に向かう。

 前半のゴールラッシュの口火を切ったのは、4番のセンターバックだった。14分。左サイドからMF前田快(神奈川大2年=大手前高松高)が鋭い弾道のロングスローを投げ込むと、ファーで待っていた三輪の目の前にこぼれ球が現れる。

「ココロ(前田)のロングスローがメッチャ飛ぶことはわかっていましたし、『ここに来るな』と思って準備していたら本当に来たので、そこで蹴り込めたのは良かったですね」。右足で押し込んだボールは鮮やかにゴールネットを揺らし、関東選抜Bに先制点が記録される。

 実は3年生になってからは、不思議と“得点感覚”が発動するという。「高校の時は選手権とかでも全然決められなかったんですけど、大学に入ってから自分のところにこぼれてくる感じなんですよね。去年のリーグ戦ではシーズンで5点も決められて、『アレ?オレってこんなに点獲れたっけ?』と思いました(笑)」。鋭い嗅覚はこの大会でも持続されていたようだ。

 23分にDF原圭佑(中央大3年=東京Vユース)、37分に前田が追加点を奪い、前半だけで3点をリード。ややイケイケになったチームの中で、「後半はみんな『獲りたい、獲りたい』となって、ちょっと不用意に前に急ぎすぎたかなというのはありましたけど、後ろのリスク管理は圭佑と一緒にやろうと話していました」という三輪は全体のオーガナイズに腐心する。

 後半アディショナルタイムに失点を許しながら、3-1で勝ち切ったものの、関西選抜が3連勝したため、関東選抜Bはグループ2位となり、3位決定戦へ回ることに。ただ、三輪も「3位までは表彰台に上がれるらしいので、もう切り替えて、3位決定戦で勝ちたいと思います」と既に2日後の一戦へと視線を向けていた。

 この日の対戦相手だった北海道選抜では、DF西村純一(札幌大2年)とMF櫻井廉(札幌大2年)という2人の高校の後輩がプレーしていたが、今回のデンソーカップには少なくない“元チームメイト”が集結している。

「今日は相手に西村と廉がいて、メッチャ嬉しかったですね。あとは田澤夢積(新潟医療福祉大3年)がプレーオフで負けちゃって、プレーオフ選抜にも入らなかったので残念でしたけど、同期だったら(丸山)大和がいて、1個下は(小湊)絆と多久島(良紀)がいて、あとは東海選抜にも山田中から一緒だった三橋春希もいるので、こういうところで会えるのは嬉しいですよね」。

 高校時代はセンターバックコンビを組んだDF丸山大和(東海大3年)は関東選抜Aに、1つ下の後輩に当たるFW小湊絆(法政大2年)とDF多久島良紀(明治大2年)はU-20全日本選抜に、さらにDF三橋春希(常葉大2年)は追加招集で東海選抜の一員に名を連ねるなど、青森山田のタレント輩出は相変わらず目覚ましい。

 スーパーな2人の同期が見せている躍動も、実に刺激的だ。インターハイ、プレミアリーグ、高校選手権の『高校三冠』を達成した代からは、MF松木玖生(ギョズテペ/トルコ)とMF宇野禅斗(清水)の2人が高卒でプロ入りしているが、彼らの奮闘も三輪は常に気にしているという。

「玖生はこの前の試合で点を獲っていましたし、禅斗も前節のJ1でスタメンだったので、2人の活躍も常にチェックはしています。前に小原(由敬)と流経大で会った時も、『やっぱり同期みんなで頑張りたいね』という話になりましたし、2人の凄い部分は尊敬しているんですけど、見ているだけでは変わらないので、自分たちもそこまで行けたらなとは思っていますね」。

 昨年秋には教育実習で青森山田高へと帰還。「名須川(真光)と一緒に行ったんですけど、正木(昌宣)さんとも話しましたし、後輩と一緒にボールを蹴って、懐かしい気持ちにもなったので、『中学から山田に行って良かったな』と改めて思いました」。高校生たちの今に触れ、母校への想いを再確認したようだ。

 まだJクラブへの練習参加は実現していない。就活には取り組もうと思っているが、12歳で親元を離れて青森の地へ身を投じた時から、ずっと思い描いてきたプロサッカー選手という夢を実現させるのが、個人としては最大の目標。そのためにも、まずは自分の置かれた場所で、結果を残す。新チームのキャプテンを任された三輪の意志には、いさかかのブレもない。

「1年目で2部に降格して、2年目、3年目と昇格できていない中で、大学ラストシーズンはキャプテンになりましたし、センターバックとしてチームを後ろからまとめることも大事だと思うので、覚悟を決めてやろうと思っています。今年は2部で優勝して、1部に上げて卒業するのが一番の目標としてあるので、そこに向けてやるべきことをやっていきたいです」。

 勝利がもたらしてくれるものの価値を誰よりも体感してきた、常勝軍団育ちのディフェンスリーダー。大学ラストイヤーに懸けるのは、チームの未来と自らの未来。地道に積み上げてきた努力は絶対に裏切らない。三輪椋平はただまっすぐに前だけを見据えて、光の射す方へと丁寧に、確実に、力強く進んでいく。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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