[3.14 サニックス杯 福岡U-18 2-1 青森山田高 グローバルアリーナ]
エアバトル、上等。地上戦、上等。目の前の相手に負けるつもりなんてさらさらない。向かってくるならば、すべて跳ね返す。ゴールを狙ってくるならば、すべて弾き返す。叫んで、吠えて、ファイトする。それが自分の貫いてきた大事なスタイルだから。
「もちろん個人としてはトップ昇格を目指していますし、キャプテンである以上はプレミアでも1試合1試合自分たちらしく戦っていけるようにチームを持っていかないといけないと思うので、去年の3年生の先輩たちみたいに、後輩に残せるものは残せるように、頑張ってやっていきたいなと思います」。
6年ぶりのプレミア復帰を果たしたアビスパ福岡U-18(福岡)が誇る気合みなぎる闘将。DF樺島勇波(2年=アビスパ福岡U-15出身)が全身から放つ強烈なエネルギーは、今年のチームが飛躍を遂げていく上でも、きっと絶対に欠かせない。
「ウリャー!!!」。大きな雄叫びがピッチ上に響き渡る。青森山田高(青森)と福岡U-18が激突した「サニックス杯国際ユースサッカー大会2025」(福岡)3日目のゲーム。声の主はおなじみの緑のユニフォームを纏った選手ではなく、ネイビーのユニフォームに黄色いキャプテンマークを巻いた選手だった。
「相手フォワードは2枚とも強いと聞いていましたし、自分もフィジカルとヘディングが長所なので、負けないようにしようという意識はありましたし、だからこそヘディングに勝った時も『もっと来いよ』という意味も込めて、雄叫びを上げました。いつも以上に試合の入りから気合が入っていたので、自分から行ってやろうとは思っていましたね」。
何しろ憧れているのは、この日の対戦相手のOBでもある菊池流帆(FC町田ゼルビア)。「あの熱い感じが自分と似ていて、ヘディングの後に吠えたりするのもメッチャ好きなので、目標にしていますし、意識している選手です」。あまりにわかりやすい“目標”がむしろ微笑ましい。
ただ、実際に強い。屈強な青森山田のフォワードに対しても、一歩も引くことなく空中戦に挑み続ける。加えて好奇心も旺盛。試合中にマーカーと言葉を交わし、笑顔を浮かべる姿が印象的だった。
「相手は“いい筋トレ”をしていると聞いていましたし、実際にメッチャゴツかったので、コミュニケーションを取りながら、『ベンチ(プレス)どのぐらいなの?』とか聞いていました(笑)。相手もファウルすることなくフェアにやってくれたので、そこは楽しかったですね」。シンプルに強敵との勝負を楽しんでいる様子も窺える。


一方で課題もはっきりと認識しているようだ。「自分はちょっと熱くなりすぎてしまうところがあって、そこが良いところでもあると思うんですけど(笑)、ちょっと行き過ぎる時もあるので、気を付けないといけないかなと。でも、ヒサさん(久永辰徳監督)からも『落ち着いてやれ』と言われるので、今日はメンタルのコントロールもしっかりできたと思います」。
試合はFW松尾遼磨(2年)とFW井上雄太(2年)のゴールで福岡U-18が2点を先行。終盤に1点を返されたものの、樺島とDF藤川虎三(1年)のセンターバックコンビを中心に、圧力を強めた青森山田の猛攻を凌ぎ切り、タイムアップの笛を聞く。
「試合前は『どのぐらいできるのかな?』と思っていたんですけど、試合に入ったら全然自分たちの強度でやれたので、自分たちの良さも出しつつ、相手の良さを消しつつ、いろいろなものを吸収できたかなと思います」。そう話す樺島を筆頭にネイビーの選手たちは、一定の手応えを掴むことに成功したようだ。
小学生時代は北九州都市圏に居を置く苅田SSSでプレーしていたが、「中学に上がる時、一番初めにアビスパから声を掛けてもらって、他にも話はもらっていたんですけど、もうすぐに『アビに行く!』と決めました」と福岡U-15へ入団。往復で4時間近い時間をかけて、日々のトレーニングへと通い続けた。
もちろん目指すのはトップチーム昇格。今季のキャンプはケガもあって帯同が叶わなかったが、練習参加は既に経験済み。持ち味のコーチングには好感触を得つつ、細かい技術の部分には差を感じたという樺島は、ある選手の存在感に一際惹き付けられたという。
「奈良(竜樹)さんは去年の練習に行った時にもいろいろ話を聞かせてもらいましたし、川崎フロンターレでやってきたことも含めて、いろいろなことを教えてもらったので、『この人は違うな』と思いました」。トップチームでも強いリーダーシップを発揮している“大先輩”から学んだものは、小さいはずがない。


昨年末のプレミアリーグプレーオフでは、勝てば昇格が決まる2回戦の岡山学芸館高(岡山)戦で、樺島は後半アディショナルタイムに劇的な決勝点をマーク。アカデミーラストイヤーを戦う舞台を、自らのゴールで手繰り寄せている。
昨季のチームはともにトップ昇格を果たしたFW前田一翔とFWサニブラウン・ハナンの強力2トップを擁して、夏のクラブユース選手権でも全国ベスト4まで勝ち上がり、プリンスリーグ九州1部も制するなど、確かな実力を有していただけに、今季のチームに向けられる視線も十分に理解している。
「ハナンと一翔がいなくなったのは大きいですけど、またイチからみたいな感じなので、1人1人の意識が違うかなと思います。去年とは全く違う戦いになると思いますし、そこはもう年明けから自分たちの意識を変えてやっているので、難しいゲームもあると思いますけど、積み上げてきたことを出すだけなので、そこは継続してやっていきたいですね」。
きっと2025年のプレミアのピッチにも、この男の叫び声が響き渡る。突き進むのは『ダビド・ユーハ』という異名を全国に轟かせるための一本道。福岡U-18を束ねる漢気にあふれたキャプテン。視覚にも聴覚にも訴えてくる樺島勇波の存在感、要注目。


(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー
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