[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.11 プリンスリーグ九州2部第7節 東海大熊本星翔高 1-1 柳ヶ浦高 松前記念サッカー場]
首位の東海大熊本星翔相手に、1点ビハインドで迎えた後半25分。前線からのプレスで相手守備陣のミスを奪うと、冷静にDFをかわして右足シュート。このゴールによって同点に追い付き、柳ヶ浦高にとって貴重な勝ち点1をもたらした。エースとして、キャプテンとしての仕事を果たしたかのように思えるFW緒方惺(3年)だが、決して自身の出来に満足していない。
このゴールの直後に訪れた決定機を生かせなかった後悔を口にしながら、続ける。「こういう試合で自分がしっかり決めきらないとこのチームは勝てない。きつい試合で決めきりたい。ここで満足せず、どんどんゴールを狙っていきたいです」。
インターハイ出場を果たした昨年のチームを知る選手が少ない今年は、緒方がチームの生命線と言える存在だ。「柳ヶ浦はしっかり守ってカウンターのチーム。一番前の自分がそこをやらないといけない。チームも自分に頼ってもらっているので、枚数が少なくてもしっかりゴールまで行こうと狙っています」。言葉通り、カウンターの急先鋒となって相手ゴールに力強く迫るだけでなく、相手DFにボールが渡ったらファーストディフェンダーとしての役割もサボらない。得点場面のように高い位置での守備から決定機を生み出す場面も多いという。
山本隼斗監督がそうしたFWとしての仕事以上に評価しているのはメンタル面だ。「3年生でキャプテンをやるようになってから、段々と自覚が出てきて声掛けも良くなった。常にプレーで引っ張ろうとしている。負けた時や今日みたいな引き分けたゲームでは、絶対、自分にベクトルが向いている。自分がもっと圧倒的な選手にならないといけないって」。
キャプテンに就任した当初は慣れない役割に戸惑いも感じていたが、スタッフ陣に相談するうちに「まずはプレーで引っ張りたい」という気持ちが強くなったという。プリンスリーグが始まってからは守備やゴールなど自らの背中を見せることで、チームを引っ張っている。
今でこそ柳ヶ浦の顔として逞しい姿を見せているが、高校1年生の頃は違った。高校に入学するタイミングで大分トリニータU-15宇佐から大津高に加入したが、「初めての寮生活に戸惑い、メンタル的に自分の弱い部分が出てしまった」と元気をなくしてしまったという。
知り合い経由で緒方の話を聞いた山本監督から声がかかり、地元に近い柳ヶ浦への転校を決意。「今になったら、なぜ大津で頑張れなかったのだろうと思う時もありますが、今はこうやって良い環境でプレーさせてもらっているので後悔はない」と今では立ち直り、充実した日々を送る。
「大津の先生方にもいろいろお世話になったので、自分が成長した姿を見せたい。もし大津と対戦した時は勝って、“これだけ成長しましたよ”と示したい」。目標を達成するためにも全国大会への出場を狙っている。
昨年もチームとしてインターハイ出場を果たしたが、緒方には出番が訪れなかった。1学年上のFW八尋馳が帝京長岡相手にも好プレーを披露する姿に勇気をもらいながらも、悔しさを感じていたという。「ベンチから試合を見ていたことが、今年になってから強い気持ちになっている。なので、今年もあの場所にもう1回立ちたい」。そう意気込むストライカーはこれから始まるインターハイ予選でもチームのために前線で走り続け、勝利をもたらす。
(取材・文 森田将義)
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Source: 大学高校サッカー
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