一際強い向上心を持って取り組んできた成果。首位快走中の流経大柏が青森山田からプレミアリーグで11年ぶりとなる白星!

流通経済大柏高が青森山田高からリーグ戦11年ぶりの白星
[5.25 プレミアリーグEAST第9節 流通経済大柏高 2-1 青森山田高 流通経済大柏高グラウンド

 一際向上心の強い世代の流経大柏が、天敵からリーグ戦11年ぶりの白星――。25日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2025 EAST第9節で流通経済大柏高(千葉)と青森山田高(青森)が対戦。ホームの流経大柏がFW大藤颯太(3年)とFWオゲデベ有規(3年)のゴールによって2-1で逆転勝ちし、首位を守った。

 流経大柏は2014年シーズンの開幕戦(ホーム)で青森山田に3-2で勝利しているが、その後、4分13敗とリーグ戦で計17試合勝てていなかった。だが、今回、逆転で天敵から11年ぶりとなる白星。榎本雅大監督は「去年の我慢」などを経て、向上心の強い集団となったチームに目を細めていた。

 流経大柏は前節まで5勝2分1敗で首位。この日はMF島谷義進主将(3年)、FW金子琉久(3年)、GK藤田泰土(3年)がいずれも怪我のために不在で、先発はGK丸山ジェフリー(3年)、DFは右から乙川宙(3年)、廣瀬煌(3年)、大徳剛矢(2年)、もう一人の主将・増田大空(3年/U-17日本代表)の4バック、中盤の底に山元琉士(3年)が構え、2列目に石井友啓(3年)、上田哲郎(3年)、安藤晃希(3年/U-17日本高校選抜)、そしてメンディー・サイモン友(2年/U-17日本代表)と6得点で得点ランキング首位タイの大藤が2トップを組んだ。

 一方、青森山田は開幕4連敗から主軸のMF小山田蓮(3年)やMF長谷川滉亮(3年)を欠く中で立て直して4連勝中。この日はGK松田駿主将(3年/U-17日本高校選抜)、右SB菱田一清(3年)、CB月舘汰壱アブーバクル(3年/U-18日本代表)、CB大場光翔(3年)、左SB福井史弥(3年)、藤原栄之郎(3年)と小澤丈(2年)のダブルボランチ、右SH杉山大起(3年)、左SH麓莱凛(3年)、そして深瀬幹太(3年)、井上愼太(3年)の2トップの11人で首位チームに挑戦した。

名門対決

 強烈なプレッシング、球際の強さ、豊富な運動量をベースとするチーム同士の激しいバトルを流経大柏が制した。立ち上がりはアウェーの青森山田が押し込む。右SH杉山にボールを集め、縦への仕掛けからクロス。そこに深瀬や藤原が走り込む。また、菱田のロングスローからゴール前のシーンが生まれるが、流経大柏DFがシュートブロックするなど決定打を打たせない。

 青森山田は守備面でも大場が相手の大型2トップを空中戦で圧倒。月舘も高さと強さを発揮したほか、抜群の守備能力を備えた菱田が相手の注目MF安藤にドリブル突破を許さない。的確なボール奪取を見せる左SB福井や小澤、注目守護神のGK松田を含めて隙を作らずに守っていた。

青森山田CB大場光翔は抜群の高さを発揮
青森山田の右SB菱田一清は対人守備で抜群の強さを見せていた

 流経大柏はこの日、縦に速い展開を予想して186cmのメンディを先発起用。GK丸山らからのロングボールの競り合いで苦戦したものの、いずれも献身的な働きの光る山元や上田がセカンドボールを回収し、大藤、メンディの2トップが足元でボールを収めて起点を作る。

 そして、DF間のスペースを狙って攻撃。12分には攻め上がってきた増田が右足を振り抜き、17分には上田のラストパスから石井が対角の右足シュートを撃ち込む。さらに21分には大藤を起点にパスを繋ぎ、最後は上田のパスのこぼれに安藤が反応。だが、右足シュートはわずかにゴール右へ外れ、先制点にはならない。

流経大柏の10番MF安藤晃希がゴールに迫る

 青森山田は藤原のサイドチェンジやプレースキック、松田のロングキックも交えて相手ゴール前へ。45分には藤原の左CKから菱田が決定的なヘッドを放つ。だが、流経大柏GK丸山に反応された。流経大柏も地上戦での強さが魅力の廣瀬、前に強い大徳、増田を中心に堅く、前半は0-0で折り返した。

流経大柏のU-17日本代表左SB増田大空(左)と青森山田MF杉山大起が激しいマッチアップ

 青森山田の正木昌宣監督は「どっちも高い位置でボール持ちたいっていう戦いになっちゃっていて、そこで1クッション入れるだけでいなせたり、また違う展開になるところがあった気がするので。流経のプレッシャーが速いから後ろもリスクを負わずにって考えたのかもしれないですけど、流れとしてはもう1つ相手のパワーの逆を取りたかったかなっていうのは思います」と振り返る。

 それでも、後半12分、菱田の左ロングスローをファーの月舘が折り返し、中央の井上がコントロールから左足シュート。先制点をもぎ取る。だが、後半開始から石井をオゲデベに入れ替えていた流経大柏は16分、セットプレーから同点に追いついた。

後半12分、青森山田FW井上愼太が左足で先制ゴール
流経大柏の堅い守りをこじ開けた
歓喜の青森山田

 増田の右FKのクリアボールを上田が繋ぎ、山元がPAへ浮き球パス。これを右中間の大藤が胸コントロールで前方へ落とすと、そのまま角度のない位置から右足シュートを左隅に決めた。大藤の得点ランキング単独首位へ浮上するスーパーゴールで同点。青森山田は再びギアを上げようとするが、カウンターから次の1点を奪われてしまう。

後半16分、流経大柏FW大藤颯太がスーパーゴールを決めて同点
大藤(左)は得点ランキング単独首位の7得点目

 後半25分、流経大柏は運動量豊富な乙川が自陣右サイドでボールを奪い返すと、安藤がPAへスルーパス。メンディがゴールを背にキープし、右へ繋ぐ。最後はオゲデベがターンからの右足シュートを決めて逆転した。

後半25分、流経大柏のU-17日本代表FWメンディー・サイモン友がPAでキープ
パスを受けたFWオゲデベ有規が右足シュートを決める
流経大柏が逆転に成功

 青森山田は迫力のある反撃を見せる。27分には麓の左クロスを井上が折り返し、走り込んだ藤原が決定的な右足シュート。だが、流経大柏はリフレクションしたボールをゴールライン際の山元がクリアしてゴールを死守する。

 大徳が「試合前からもうずっと10年勝ててないよっていうことを話したんで、そこはもうみんな気合入ってたんで、やれていました」と振り返ったが、その後も流経大柏は気迫の守り。29分には安藤をMF加島宏樹(2年)と交代し、青森山田も32分に麓、井上をMF今田匠(3年)、FW桑原唯斗(3年)と入れ替えた。

 青森山田は35分、菱田の右クロスから深瀬がヘディングシュートを放つもゴール左。藤原と杉山に代えて復帰戦の小山田、FW斉藤雅人(2年)を投入した直後の39分には深瀬が右サイドを突破する。そしてラストパスに斉藤が飛び込むが決め切ることができない。

 青森山田はその後も小山田が右サイドからドリブル突破したほか、菱田のクロスなどで相手にプレッシャーを掛ける。だが、上田とMF古川蒼真(2年)を交代し、最後まで運動量と集中力を維持した流経大柏が封じ切って2-1で勝利。青森山田から勝ち点3をもぎ取った。

青森山田はFW深瀬幹太のヘディングシュートなどで反撃も、2点目を奪うことができなかった

 流経大柏の榎本雅大監督は試合直後の選手たちの表情、様子を評価していた。「今日、帰ってきた時に、顔が凄え良かったんですよ。集合させた時なんか、増田とか(各選手が)『(相手のサッカーに)付き合いすぎでしょう』とか、『やっぱりああいうとこで、もっとこうやれないと』『オレのここのところで空いているから』とかって、結構そういう具体的な話をしながら帰ってきた。ああ、こういうチームは強いだろうなと思いました」。勝ったことを素直に喜ぶ選手がいる一方、大一番を制した直後でも、興奮しすぎずに先を見据えた話をできるような選手が複数いる。1、2年時の苦しい経験が、彼らを向上心の強い集団に変えたようだ。

 現3年生は1年時の関東ルーキーリーグでなかなか勝ち点を重ねることができず、最終節の勝利で残留決定(10チーム中7位)。2年時のプレミアリーグ開幕戦に出場したのはMF昇純希(3年)だけで、Bチームのプリンスリーグ関東2部開幕戦で先発した選手は島谷のみだ。昨シーズン開幕当初は先輩たちのチームに割って入ることができていなかった。だが、榎本監督は「3年生が上手かったから歯が立たなかった。それで、やっぱり自分たちが頑張んなきゃダメだって。とにかく去年から見てて、自主練しているのは2年生(現3年生)なんですよ」と振り返る。その成果が出て、数か月語には現3年生がBチームで先発の半数を占めるようになり、現在の活躍、「能力が目覚めている」(榎本監督)状況に結びつけた。

 島谷は「僕たちはずっと1年の頃から“最弱世代”ってずっと言われていたんですけど、結構僕たちの代は練習終わった後とか、朝とか練習しに来る人が多くて。そういう面でみんな向上心持って取り組んだ結果が今の1位っていう結果に繋がってるとは思います。元々みんな練習熱心だし、手抜く人もいない。他のチームよりは圧倒的に練習してる時間が多いと思いますし、サッカーに対しての熱っていうのは、やっぱみんな高いと思います」と説明する。

 島谷と増田だけでなく、全員がキャプテンシーを持って行動することもチームの目標。島谷は、プレミアリーグEAST首位に相応しい雰囲気がチームにあると感じているようだ。個人個人が飛躍と3冠という大目標を達成するための日々。島谷は「選手権もインハイもこれから先あるので、コンディションを落とさないように。今良くても後からダメになったら結果的にダメになっちゃうんで、やっぱり先を見据えて戦っていくっていうのは大事にしたいと思います」。プレミアリーグEASTの次節は6月21日で、5月31日からインターハイ予選がスタート。U-17日本代表のスペイン遠征メンバーに選出されたDF増田を欠くことになるが、トーナメント戦でも一喜一憂することなく成長しながら勝ち続ける。

流通経済大柏はインターハイ予選に挑む

(取材・文 吉田太郎)


●高円宮杯プレミアリーグ2025特集
▶ゲキサカでは高校サッカーの最新情報を伝えるポッドキャスト番組も配信中
Source: 大学高校サッカー

コメント

タイトルとURLをコピーしました