16強入りした選手権で全国基準を学び、ピークの状態で挑んだ愛媛県予選で優勝。進学校・松山北は“集大成”のインハイでベスト8以上へ

選手権16強メンバーの大半を残す松山北高が愛媛県予選で優勝。“集大成”のインターハイの目標はベスト8以上
 昨年の選手権で8大会ぶり6回目の出場を果たした松山北高(愛媛)は、初戦で東海大山形高(山形)を下して選手権初白星を手にすると、続く2回戦の龍谷富山戦高(富山)でも勝利。3回戦は堀越高(東京)に1-6で敗れたが、愛媛県勢で4校目となる選手権での2勝(1976年度の首都圏開催以降)は、大会の一つのトピックスとなった。

 その選手権の登録メンバーに入っていた3年生は、MF森隼人(現、同志社大)のみ。残りは全員が下級生だった。「高校に入って、初めて味わうレベルで、一つひとつのパススピードや質が高かった。基準を教えてもらえたのは大きく、選手権が終わってからの練習でも、堀越の質を求めてやってきた」。そう話すのはMF河窪紘夢(3年)で、昨年度の選手権で感じた全国基準は今年のチームに生かされている一方、進学校ならではの悩みは今年も変わらない。

 授業時間が長いため、普段から他校よりも練習時間が少ないが、模試が多い1、2月はサッカーに打ち込む時間がより限られている。選手権の勢いのまま挑むはずだった今年1月末の県新人戦は、準決勝で新田高に敗戦。4月から始まった県1部リーグも、第5節まで3勝2敗の5位という順位だった。

 毎年、インターハイ予選を最後に3年生が大学受験に専念し、サッカーから離れるため、1からのチーム作りを余儀なくされる難しさもある。「リーグ戦をコンスタントに戦えない。コンディション面も含め、我々は年間を通して強い学校ではない」と口にするのは兵頭龍哉監督で、全国大会出場がかかったインターハイと選手権の2つに照準を定め、チーム作りを行なっているという。

 そうした中、今年のインターハイ予選は選手とチームのピークを上手く持っていくことができたという。「選手権と同じチームで出ているから、みんなにはやっぱり強いんだろうと思われている。なのに、早く負けたらプライドが傷つくだろ? なら、取らないといけないと」。兵頭監督からハッパをかけられた選手たちが奮闘し、準々決勝ではリーグ戦で敗れた済美高に3-0で勝利。準決勝は帝京五高をPK戦の末に下し、心身ともにピークの状態で決勝の今治東中等教育学校戦に挑めた結果が、3-0の勝利と、2014年以来3回目のインターハイ出場に繋がった。

 愛媛県の第1代表として挑んだ四国総体は、模試や天候不良によってほとんど練習できないまま挑んだ。コンディション不良でスタメンから外れた選手も多く、明徳義塾高(高知)に0-3で敗れ、初戦敗退。この大会を機に受験に専念するため、サッカーから離れる選手が多く、33人いた3年生は11人まで減る。

「もう1度選手権の舞台に立ちたい気持ちはもちろんあるのですが、国公立大学に行きたい。そのためには、今からでも勉強をしていかなければいけないと分かっているのですが、インターハイまではサッカーに全力で取り組みながら、勉強と両立したい」。河窪がそう口にする通り、夏以降もサッカーを続ける選手は更に限られる。

 現時点で最後までサッカーを続けると明言している選手は主将のDF末光瑛翔(3年)のみ。彼は昨年度の選手権予選準決勝で左ひざの前十字靭帯を損傷し、戦列を離れていた選手。「選手権に出ることが自分の夢で、北高に入った。1年生の頃から絶対に最後まで残ると決めていたし、昨年怪我によって途中から試合に出られなくなり、より一層選手権に対する想いが強くなりました」と口にする。

 インターハイは選手権に向けた通過点と捉えるチームが少なくない中、松山北にとっては高校サッカーの集大成と言える舞台であるため、選手の意気込みは強い。「自分たちの強みを全国でもしっかり出したい。3年間苦楽を共にした仲間なので、最後は良い結果で終わりたい」。そう口にするのは末光で、全国までの限られた時間をサッカーに注ぎ込み、ベスト8以上を狙いに行く。

(取材・文 森田将義)


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Source: 大学高校サッカー

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