[7.16 E-1選手権 日本 0-0 中国 水原]
5月になでしこジャパンデビューを飾ったばかりの昨季のWEリーグMVPが、大きく起用の幅を広げてEAFF E-1選手権を終えた。22歳のMF山本柚月(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)は今大会で3試合連続の先発出場。初戦・台湾戦(◯4-0)は左サイドハーフ起用だったが、2戦目・韓国戦(△1-1)からは右サイドバックに持ち場を移し、攻守に奮闘する姿が見られた。
この日の中国戦は90分間フル出場。「攻撃の面ではなかなかドリブルでチャレンジしづらいSBなので、どう攻撃の一手になるかというのを意識したなか、キックのところでFWや奥の選手を見ることを意識していた」。序盤から持ち味のドリブルを随所に絡めつつ、相手最終ライン裏への配球でチャンスメイクを試みた。
守備では相手が空中戦を多用してくるなか、空中戦やクロスへのカバーリングでも奮闘。「ロングボールの多い中国が相手だったので、背後のスペースやCBのカバーは意識して臨んだ」。同じく右SB起用だった韓国戦からの1試合だけでも、守備の対応がより整理され、レベルアップしているように思われた。
「サイドバックをやったことはそんなにないけど、サッカーという意味では優先順位は変わらないので。頭の中では整理して臨めていた。ただ試合の場面にならないとどこでチャレンジして良いのかだったり、ステイしないといけないかは実戦で積んでいく必要があったので、それをアジアの相手にできたと思う」(山本)
昨季のWEリーグで全22試合に出場し、主に攻撃的ウイングバックとして8ゴールを記録した山本。なかなかゴール前までは出られないSBの仕事には葛藤もあるかと思われたが、なでしこジャパンでの生き残りに向け、そして自身の成長のため「全然後ろ向きなことはない」と言い切る。
「もちろん前でどんどん仕掛けるところが自分の特徴でもあるし、好きなプレーではあるので、そういった場面が減ってしまうのはサイドバックをやる上でしょうがないと思うし、自分はやっぱりサッカーがやりたいわけで、それにポジションは関係ないと思う。なので前向きに捉えられています」(山本)
ニルス・ニールセン監督は山本のSB起用について「日本のシステムからしてもSBに攻撃的な動きを求めるところがあるので、攻撃力のある選手であればSBができるんじゃないかということで試している」と語っており、攻撃重視のオプション起用であるのは明らか。また欧米列強と対戦する際はサイドハーフにもサイドバック水準の守備強度が求められる展開も想定されることから、このトライの効果は今後の戦いでさらに表れてくることになりそうだ。
奇しくも男子の日本代表でも三笘薫、伊東純也ら推進力あるウインガーがウイングバックを務めており、このトレンドは男女を問わない。山本は「どのポジションでも守備ができるというところは日本のサッカーで求められているところだと思うので、そこは男子のサッカーの強度、攻撃参加に行く、どのタイミングで行っているかはすごく参考になると思う」と前向きに語った。
5〜6月のブラジル遠征、今月のE-1選手権で全5試合に出場し、なでしこジャパンでのキャリアが軌道に乗っている。
プレーの幅を広げ続ける22歳は「まず次の代表にも呼んでもらえるように自チームに帰ってより成長しないといけない。今回もプレーの質、成功率がどうだったかというと中国にプレッシャーをかけられる時にミスをすることもあったし、攻撃が求められるSBで自分の力を発揮できたかというとそうではないなというのを感じるので、自チームに戻ってやりながら、次の代表に呼ばれた時にそういったところを出していければ」と明確なテーマを持って成長を誓った。
(取材・文 竹内達也)
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Source: サッカー日本代表
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