チームの戦い方の幅を広げる究極のマルチロール。神村学園MF堀ノ口瑛太が悲願の日本一に果たした役割の絶対的な価値

神村学園高が誇るスペシャルなマルチロール、MF堀ノ口瑛太(3年=神村学園中出身)。(写真協力=『高校サッカー年鑑』)
[8.2 インターハイ決勝 大津高 2-2(PK6-7) 神村学園高 Jヴィレッジスタジアム]

 この人がピッチ上にいるだけで、チームはいくつもの戦い方を選択できる。最終ラインで屈強な壁になったかと思えば、中盤で全体のバランスを整えながら、仲間の攻撃を下支えする。タレントの居並ぶグループの中でも、彼が絶対に欠かせない存在であることに、誰も異論はないだろう。

「もちろんキツさもあったんですけど、決勝の雰囲気の中で楽しさはありましたね。チームのみんなとも絶対に去年のリベンジを果たそうということは言っていたので、それが達成できて良かったです」。

 とうとう悲願の全国制覇を成し遂げた神村学園高(鹿児島)の重要なパーツを担う必殺仕事人。MF堀ノ口瑛太(3年=神村学園中出身)が披露するプレーには、チームを勝たせるための要素が存分に詰め込まれている。

「大津も中盤が上手いので、そこで『守備でタフに行かないとな』と思っていました」。最後の1試合を前に考えていたことを問われ、堀ノ口はそう口にする。昨年は決勝で昌平高に逆転負けを喫し、涙に暮れた神村学園は、1年前のリベンジを達成すべく、またこのステージに戻ってきた。

 相手は同じ九州勢であり、同じプレミアリーグWESTに所属している大津高(熊本)。両チームは5月17日にもリーグ戦で対戦しており、神村学園は1-2で敗れている。その試合の堀ノ口は中盤アンカーでスタメン出場していたが、前半の終盤にDF今村太樹(3年)がケガで交代したため、以降は4バックの左センターバックで奮闘。大津の戦い方のイメージは、2つのポジションをこなしたその日の90分間で掴んでいた。

 決勝がキックオフされると、背番号6は中盤の中央に陣取る。「今日や昨日は3ボランチでやったんですけど、(佐々木)悠太や(福島)和毅が攻撃は上手くやってくれるので、守備でチームを助けられたらと思ってやっていました」。トレスボランチを組むMF佐々木悠太(3年)とMF福島和毅(3年)がより攻撃に関われるように、トライアングルのバランス維持に腐心する。

 試合が進むにつれて、堀ノ口は対人の強さやセカンドボールの回収はもちろん、180センチ近いサイズを生かした空中戦でも威力を発揮。彼が中盤で競り勝てることも、チームの小さくない強みになっていることは間違いない。

 試合は後半16分に先制点を奪われると、なかなか1点を返すことができず、試合は最終盤に。堀ノ口は35+1分に交代でベンチに下がったが、35+6分にFW日高元(3年)が執念の同点弾を叩き込み、スコアは振り出しに。延長戦でも1点ずつを獲り合う展開の中で、優勝の行方はPK戦へと委ねられる。

PK戦をベンチから見つめる堀ノ口(右から3人目)

「もう仲間を信じることしかできないので、みんなならやってくれると思っていました」。ベンチからチームメイトを信じ、見つめたPK戦。8人目のMF東若泰雅(3年)のキックが成功した瞬間、日本一が決まる。「もう嬉しいという感情だけでした。去年のリベンジが果たせて嬉しいです」。堀ノ口も笑顔を弾けさせ、戴冠の歓喜にみんなで酔いしれた。

 前述したように、堀ノ口のストロングの1つは、複数ポジションをこなせるマルチロールぶり。もともとはボランチを主戦場にしてきたが、九州新人大会では右サイドバックで優勝に貢献。リーグ戦では3バック時も4バック時もセンターバックを務めており、チームの戦術の幅を広げている。

 本人も「どこでもしっかりこなせるということはチームにとってプラスだと思うので、どこで起用されても、いいプレーをできる準備はしたいですし、攻守で役割を果たせる選手になっていきたいと思います」ときっぱり。やはりこの人の存在が神村学園に与えているポジティブな影響は測り知れない。

 ただ、本人は夏の全国大会を通じて、改めて見つめ直すべき課題も、しっかりと抽出したようだ。「ディフェンスで出ている時に、特に山梨学院戦では競り合いで負けることもありましたし、ロングボールに対するフォワードとの競り合いのタイミングが課題として挙がったので、どんな相手でも競り勝てる力を付けていきたいです」

「そういう課題も見つかりましたし、良いところも出せた部分はあるんですけど、課題を潰して冬に向けてやっていきたいと思います」。空中戦でもあらゆる面で対峙する相手を上回るだけの力を養うため、また明日からのトレーニングに向かっていく。

 ここからは『夏の全国王者』という称号を背負って、残された5か月近い高校生活の時間を過ごすことになる。中等部から一緒にプレーしてきた仲間と過ごせる時間も、もうあとわずか。だからこそ、獲れるタイトルは全部獲りたい。

「まだプレミアと選手権が残っているので、三冠目指して、自分たちの力を成長させながら、それを獲りに行きたいと思います」。

 神村学園のサッカーを円滑に機能させる、高いサッカーIQに裏打ちされた確実なプレーを打ち出すミスターポリバレント。堀ノ口瑛太はさらなる歓喜をみんなと分かち合うため、自分にできることをとにかく、真摯に、突き詰めていく。

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(取材・文 土屋雅史)


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