[MOM1103]前田快(3年)_話題のロングスローは“ハンドボール由来”福岡内定MFが伝家の宝刀で同点弾演出

ロングスローを投げるMF前田快
[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.20 関東大学L2部第12節 神奈川大2-2順天堂大 神奈川大学中山キャンパストラック内フィールド]

 前半からロングスローを投げ続けていたMF前田快(3年=大手前高松高/福岡内定)だが、とっておきの場面で違いをつけた。それまでは相手GKにキャッチを許すようなボールになっていたが、1点ビハインドの後半40分に右サイドから投げたボールは、それまでよりも強いライナー性のボールになった。

 するとこれがゴール前の混戦を生み、最後はMF細田優陽(4年=西武台高)が押し込んで同点となった。ただ後期リーグで上位を追撃するために勝利が欲しかった神奈川大だが、最低限の勝ち点1を積み上げるにとどまった。

「自分的にはロングスローで目立てるので、最近はそれ以外で目立つことを意識している。自分の特長はボックスtoボックスで下で繋いで前線に上がってという、走行距離を生かしたプレー。でもああやってロングスローでチームが勝ち点が取れたのは良かったかなと思います」

 前田快の27シーズンのアビスパ福岡入団内定が発表になったのは、今月8日のことだった。神奈川大からJリーガーが誕生するのは3年ぶりで、J1クラブに直接入るのは、2018年に中退して湘南ベルマーレに入ったMF金子大毅以来。卒業すると仮定すると、15年にヴァンフォーレ甲府入りしたMF伊東純也以来になる。

 大学で急成長を遂げた選手だ。香川県の強豪・大手前高松高で1年生の時から全国高校選手権に出場した実績を持つ前田快だが、大学進学時はどこからも声がかからなかったという。自らセレクションを受けられる大学を探して神大にやってきていた。そして神大では2年生でレギュラーを掴むと、複数のJ1クラブスカウトが関心を寄せる選手になった。

 今夏の練習参加の打診は想定よりも少なかったというが、8月に福岡から練習参加の声がかかった。当初は1週間を予定していたが、お盆期間中の練習場所を探しているとクラブに相談すると、日程を早めてくれたという。「2週間が終わった段階でオファーは貰えたんですけど、秋野さんが怪我をして、ボランチがいなくなったからもう一週間いてくれとなった」。結果的には3週間、濃密な時間を過ごすことになった。「本当に自分は運がいいとよく言われます」。

 大きな武器の一つのロングスローは、福岡の公開練習の際に投げたこともあって、SNSでも話題を集めた。金明輝監督にも評価してもらったというロングスローだが、投げ始めたのは高校1年生の時だという。「当時投げていた高3の人がいたんですけど、隣で思い切り投げてみたらその人より飛んだ。高2からストレッチや呼吸法だったり、ロングスローについて研究するようになった。もともと背中が柔らかいんですけど、そこから飛距離が伸びました」。

 もっとも幼少期の経験も大きかったようだ。社会人ハンドボールチーム・洛北クラブの監督をしていた父親の智さんに連れられて、試合会場によく顔を出した。「試合をやっているときは外でボールを蹴っていたんですけど、アップのときはキャッチボールに入るみたいなことをやらせてもらった。そこで自然と全身を使うことを覚えたのかなと思います」。ボールを投げる才能はこうして培われた。

 今季は特別指定選手としての登録も完了。今夏のデビューは叶わなかったが、Jリーグデビューが近づいていることを実感している。ただ全国的に無名だった自分を、3年間でここまで引き上げてくれた神大への感謝も当然持っている。「自分を育ててくれた場所を高いところに残したいという思いはあります」。早期のJ1デビューへの思いは一旦封印。しばらくは再開された大学リーグの戦いに集中する。

(取材・文 児玉幸洋)


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Source: 大学高校サッカー

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