負傷乗り越え代表復帰の田中碧、プレミアリーグでの激動2か月「心の底から楽しんでいる」

練習前、森保監督と話し込むMF田中碧(リーズ)
 初挑戦のプレミアリーグで過ごす激動の2か月間を経て、MF田中碧(リーズ)が日本代表に帰ってきた。8月下旬のアーセナル戦で右膝を痛め、一時は戦線を離脱していたが、いまでは「普通に練習しているのでここからかなと思う」と回復。復帰後の直近3試合は途中出場が続いているものの、世界最高峰のリーグの厳しいポジション争いに前向きに挑んでいるようだ。

 昨季のEFLチャンピオンシップ(イングランド2部)で名門リーズを優勝に導き、今季からプレミアリーグに挑戦している田中。開幕節のエバートン戦(◯1-0)でさっそくデビューを果たし、攻守にわたるハイパフォーマンスで開幕白星に導いたものの、第2節アーセナル戦(●0-5)で右膝を痛めて途中交代し、約3週間にわたる戦線離脱を強いられた。

 負傷の影響で9月のアメリカ遠征の招集も見送られ、国際Aマッチウィーク明けのプレミアリーグでは4試合連続ベンチスタート。第5節ウォルバーハンプトン戦で7分間、第6節ボーンマス戦で3分間、第7節トッテナム戦で23分間とプレータイムが伸びる兆しはあるが、厳しいポジション争いに晒される形となっている。

 それでも日本代表合流初日、田中は自身の現状を前向きに語った。

「大前提に試合に出られていないのが悔しいのはあるけど、プレミアリーグというのはそういうところだし、自分のチームに限らずどのチームを見ても、ベンチの選手や試合に出ていない選手が圧倒的なクオリティーを持っているのはすごく感じる。まだ別に7試合。自分が最初にエバートンやアーセナルとの試合に出ていなかったら多少焦りもあると思うけど、自分の中で課題はたくさんあるけど、できるという感覚はある。出た時にやれればいいと思っている」

 長年憧れてきたプレミアリーグの舞台に立つことができた矢先のアクシデント。それもアーセナル戦というビッグマッチを不完全燃焼で終えたこともあり、「メンタル的にキツかった部分もあった。久々にどん底を見たわけじゃなかったけど、ケガをしたことも含めてだいぶキツかったのはあった」という悲痛な本音も明かす。

 それでも今は「ある意味吹っ切れて、自分のやるべきことをやればいいかなというのがある」という田中。「プレミアリーグで試合をできるのは個人的に毎試合、毎試合ワクワクしているので。出られないのは圧倒的に悔しいとはいえ、ベンチになった時に10分でも20分でも試合に出ることがどれだけ楽しみかというのをすごく感じている。なので出た時にやって、結果を残して。開幕スタメンで出るのも簡単じゃなかったし、それも自分の力で掴み取ったわけなので。(チームメートは)どの選手もいい選手だし、その中で自分だけどちらかというと違うタイプなので、あとは自分の特徴をより出していければいいかなと思っている」と気丈に語った。

 その心の支えになっているのは開幕期に掴んだ自信と、世界最高峰の舞台で課題に向き合えるというポジティブな覚悟だ。

 開幕節エバートン戦では昨季のアンカーではなくインサイドハーフで出場し、幅広いポジション取りでボール保持を安定させた。また守備でもトップ下のような役割での果敢なハイプレスで相手を苦しめると、試合終盤にはGKとDFへの“三度追い”でミスを誘い、決勝点につながるPKを獲得していた。

 その役割には「キツいですよ」と言いつつも、「でも90分間持たそうとは思っていないので、できないのが当たり前だと思いながらやっているところもある」と田中。「全部がチャレンジというか、心の底から楽しんでいるというか、自分の力を試しながらやっている部分もあるので、できないならできないで課題はたくさんあるなと思うし、できたらできたでああこんなのができるんだなと思って毎試合やるだけなので、成長しているかなと思います」と手応えを口にする。

「個人的にはどのくらいできるんだろうという不安のほうが大きかった部分があった。でもプレシーズンで(マンチェスター・)ユナイテッドとかACミランとやって、ある程度できるというなかで、ああやって自分が思っていた以上にできた。とはいえ、課題がたくさんあるというのも同時に感じる。他の選手、相手チームのプレーを見ていても、もっとこうしなきゃいけないなというのを感じる。でもそれを38試合やり続けるのが難しいリーグだと思うので、それは僕に限らずいろんな選手を見ていても、今までのパフォーマンスができない選手もいるだろうし、そういう意味ではプレミアリーグはタフなリーグだなと。ケガをして出られないところも含めて、世界一のリーグだなと感じます」

 そのような舞台で過ごす1シーズンは間違いなく、8か月後に控える北中米W杯にもつながっている。

「それはプレミアリーグに来てより感じる。中盤の選手で言えば、毎試合対戦する選手が各国の代表なので、ワクワクもあるし、毎週がW杯じゃないけど、CLじゃないけど、それくらいのクオリティー。上位は上位で力があるし、中位・下位もプレミアリーグに残るという意味で毎試合死に物狂いでかかってくる。1試合1試合の緊張感も違うし、自分としては成長できるリーグだし、あそこで何年もやっていくことがどれだけすごいことかを感じる」

 だからこそ、今年3月以来の復帰となる代表活動に対しても特別な気負いはなく、「選ばれて嬉しいというのはあるけど、代表戦だからというのはそんなにない」と自然体で臨んでいく構えだ。

「ブラジルのメンツを見ても中盤の選手で言えばウルブス、ニューカッスルだったりプレミアの選手なので、日頃の相手だと思う。もちろんチーム全体のクオリティーで言えばブラジル、パラグアイはすごく高いけど、個人のバトルで言えば日頃の延長線じゃないけど、どの試合も、自分のチームの練習もそんなに変わらない。あとは自分がどれだけやれるかと、そこでの課題と、何ができるかを見極められるかだと思う」

 ベスト16敗退に「ここには“バケモノ”しかいないけど、自分が“バケモノ”になってここに戻ってきたい。そして優勝したい」と語ったカタールW杯から3年。その誓いを実現させるための準備は着実に進んでいる。

(取材・文 竹内達也)


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Source: サッカー日本代表

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