[10.28 選手権北海道予選準決勝 旭川実3-0札幌大谷 札幌厚別]
あいつがいたから頑張れた。「自分が後期から出るようになって悔しいと思うけど、いつも支えてくれている。紀一の分も頑張って、2冠を取れるように、選手権で全国に行けるように頑張りたいです」。GKイルング侑良(3年)はGK越後紀一(3年)との共闘を誓った。
旭川実には今季、レギュラー争いをする2人のGKがいる。ケニア人の父と日本人の母の間に生まれたイルングは、身長190cmに迫る長身GK。しかし昨年も選手権予選でゴールマウスを守ったが、12月にあったプレミアリーグ参入戦の直前に右ひざ半月板を損傷。全治8か月の大怪我を負ってしまった。
そこでイルングの怪我をカバーしたのが、越後だった。プレミア参入戦決勝戦では京都サンガF.C.U-18の猛攻を無失点で封じると、PK戦でも1本をストップ。プレミアリーグ昇格へと導くと、今シーズン開幕戦では横浜F・マリノスユースを完封して、波乱を演じる立役者となった。
しかしGKというポジションは1人しか先発できない。地元開催のインターハイまで越後が出場したが、9月のプレミアリーグ再開とともにイルングが復帰。越後が控えに回ることになった。
ただそこで越後が腐ることはなかったという。「いつも頑張ってサポートしているし、越後がいなかったらプレミアは間違いなく上がれていない」。立場を受け入れ、全力でサポートに徹する姿に、富居徹雄監督も感心するしかないようだ。
2人の物語も最終章。高校卒業後は別々の道に進むことになり、イルングは道外の強豪大に進学してサッカーを続けるが、越後は理容師になるための学校に進むつもりだという。すでにチームメイトの散髪をして「練習」していると笑う越後は、「自分ももちろん出たい気持ちはありますが、イルングのほうが自分より背も高いし、能力もある。悔しいけど、全然任せています。出るときは全力でプレーして、出ないときは全力でサポートすると決めている。だからチームが全国に行けるように、全力でサポートしたいです」と笑顔で話した。
(取材・文 児玉幸洋)
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Source: 大学高校サッカー
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