[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.19 関東大学L1部第22節 明治大0-1筑波大 味の素フィールド西が丘]
今シーズン最後の対戦カードは、拮抗した激戦となった。だが、筑波大は90分間で大きく崩れることなく、PKで手にした1点をしたたかに守り抜く。その中核を担ったのは主将・MF山内翔(4年=神戸U-18/神戸内定)だ。小井土正亮監督は実質的な指揮を執る平山相太コーチに次ぐ“ピッチ上の指揮官”として称賛。「実際の監督は私。実質の監督は平山。そしてピッチの中には翔がいる。いろんな監督がいて強いんです」と目を細めた。
すでに順位は確定している中でも、両チームは鼻息荒く最終節に臨んだ。対する明治大も球際で激しさを見せたが、筑波大は揺るがない。守備陣の奮闘もさることながら、山内が90分間で攻守を整え続けた。
盤石な守備だけでなく、攻撃でも最前線に顔を出した。後半8分には敵陣深くで起点を作る。筑波大の右CKは味方に合わずにクリアされるが、中盤に君臨するのは山内。明大に前を向かせずにプレッシャーをかけ、再び筑波大のボールとした。さらに、山内がPA左の深い位置までドリブルで運び切ると、こぼれ球をMF山崎太新(2年=横浜FCユース)が左サイドからクロス。混戦からMF角昂志郎(3年=FC東京U-18)のヘディングで相手のハンドを誘発する。角がPKを決め、決勝点となった。
山内は残り時間も試合を引き締め続け、そのまま勝利。すでに前々節に優勝を決めている中でも、強敵・明大を相手に有終の美を飾った。試合後のセレモニーでは各賞が発表され、山内はMVP、最多出場(5864分)、ベストイレブンの3賞を手にした。
圧倒的な存在感にも本人は謙虚だ。4年間を振り返り「まだはっきり自分の中でこれが成長したという確固たるものはない」と語る。ただ、サッカーをプレーし続ける理由は少しずつ変化しているようだ。
「学生や連盟の方もいろんな人たちがいないと何もできない。当たり前と言われたら当たり前だけど、その人たちのために、誰かのためにというのは、ユースのときとはまったく違う」
小井土監督は1年生時からの成長を語る。「わがままな小僧がこんなに成長するんだなと(笑)。それもまた大学サッカーのひとつの良さ。そういうのを感じられたのが彼だった」。いまではピッチ上の頼れる存在となった。「彼がいれば安心して見てられる。なんとかしてくれ翔と。大学サッカーではそれくらいの存在」と手放しに褒め称えていた。
それでも、山内自身はキャプテンとして、仲間とともにチームを築き上げてきたことを強調する。
「筑波の学生はみんないろんな考えを持っている。ぼくはヴィッセルの下部組織で育ってきましたけど、いろんなところから選手が来ているので、その人たちの考えをすり合わせて、その中で一番いい形を取る。独裁みたいな感じではやらず、みんなの意見を聴きながらやっています」
来シーズンからは現在優勝争い真っただ中の古巣・神戸へ。「プロに行って、自分がサッカー選手としてどこが成長したか初めてわかる」と4年間の成長を見せつける。「そこにしか答えはない」と強い覚悟をのぞかせた。
ただ、その前に12月の全日本大学サッカー選手権(インカレ)の頂点を目指す。「関東リーグ優勝は、インカレになったらそんなの関係ない。まったく別の大会が始まるので、そこに向けてやりたい」。最後のタイトルを手にし、大学サッカーを笑顔で終えるつもりだ。
(取材・文 石川祐介)
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Source: 大学高校サッカー
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