2年連続全国8強・中京大を支えた“23歳”主将DF多田風太「濃い4年間でした」今後は母校で高校サッカー指導の道へ

中京大DF多田風太(4年=中部大一高)
[12.13 インカレ3回戦 筑波大 2-0 中京大 AGFフィールド]

 Jリーグ内定選手6人を揃え、インカレで2年連続のベスト8入りを果たした中京大を支えていたのは、ストレート入学の4年生よりも一つ年上の23歳キャプテンだった。準々決勝での敗退後、取材に応えたDF多田風太(4年=中部大一高)は「濃い4年間でしたね。サッカーも今日で終わりで……。でも、めっちゃ楽しかったです」と、大学生活をしみじみと振り返った。

 筑波大とのインカレ準々決勝。昨季は2回戦でPK戦の末に勝利した相手とあり、堂々と挑んだ中京大だったが、厳しい戦いを強いられた。ファーストチャンスが相手GKに阻まれると、その後は防戦一方。自慢のハイプレスをことごとくいなされ、なかなか前に出られない時間帯が続き、前半は持ちこたえたものの後半13分に先制点を献上した。

「相手を意識しすぎて引いてしまう部分が多くなって、自分たちの特徴である前からプレスをかけて奪ってというのができなかった。リスペクトしすぎたかなと思います。相手のボランチが下がって4枚で回している時は行かずにという話をしていたけど、何回か行っても良かったのかな。最後まで行けずに押し込まれてしまったので」(多田)。左CBを務める主将は、どこか葛藤を抱えながら戦っていた。

 それでも最後尾に多田がいることの価値は、守勢の中でも際立っていた。周囲に身体的にも技術的にも恵まれた選手が並び、「自分は技術的なことより、みんなを落ち着かせようと思ってやっています。みんな僕より上手いので(笑)」と控えめに話すが、クレバーなポジショニングと冷静な声かけでどっしりと君臨。相方のDF前田寛太(3年=履正社高)を押し出してチャレンジする指示も的確で、“関東撃破”で野心に燃えるガツガツとした選手たちをまとめ上げていた。

「プレーはみんな自信を持ってやれているから、ちょっと慌てた時に抑えられるようにと思いながら振る舞っていました。みんな本当に上手で、自信を持ってやれるので、どちらかというと僕は見守る感じで。見守りながら、ちょっと慌てることがあれば落ち着かせる。そういう時以外はみんなに自由にやらせて、楽しくやってくれればと(笑)」(多田)。結果的には0-2で敗れたものの、多田がこのチームのため、仲間のために捧げてきたものが見ている者にも伝わるパフォーマンスだった。

 そうした達観したメンタリティーは元来のキャラクターだけでなく、“1浪入学”という立ち位置にも端を発していたようだ。「おじさんキャラじゃないけど、年齢が一つ上なので、やっぱり冷静に見るところはありましたね」。多田は中部大一高を卒業後、中京大のスポーツ科学部志望で大学受験に挑んだが、1年目は不合格。より合格ラインの低い他学部なら通るチャンスは広がっていたものの、浪人で再挑戦する道を選んだ。

 その揺るがぬ覚悟は1浪での入学後、サッカーに注がれた。「1年目は浪人明けだったのもあって怪我が多くて、もちろんトップチームに上がれるとは思っていなかったんですけど、運も良くてここまで来られました」。1年時にセカンドチームが出場する「Iリーグ」で全国大会出場を果たすと、そこでトップチームの選考対象に。2年時もなかなか出場機会を得られなかったが、最後のインカレで大抜擢され、想像もしていなかったスピードでの全国デビューを果たした。

 初のインカレでは大きな挫折も経験していた。1回戦で阪南大に敗れたが「僕のサイドから2失点して負けてしまって、悔しい思いをして……」。それでも大きな責任を前に進む力に変え、3年時からは左サイドバックの主力に定着。今季からはCBに持ち場を移し、ピッチ内外で2年連続の全国8強躍進に貢献してきた。

「ずっと関東とは差があると言われている中、うちもJリーグ内定者が増えたけど、やっぱり関東は強いなというのがありました。でも自信にはなりましたね。2年前くらいから戦えるようになってきた実感が少しずつあって、それが自信につながって、東海リーグでも勝てるようになったり、全国でもベスト8に行けるようになったので、常に成長を感じながらやって来られました」

 東海学生リーグでは今季、Jリーグ内定者が特別指定選手としてJクラブに帯同するようになった影響もあり、序盤戦で苦戦を強いられる時期もあったが、3年ぶりの優勝を達成。「3連敗したときにもう一回選手たちでミーティングをして、何がダメかを話し合って、うまく調子を取り戻したことで、特別指定の選手がいなくてもリーグ戦で1位を取れました」。その躍進の要因も、頼れる主将の存在が大きかったことは想像に難くない。

 全国ベスト4、そして日本一への夢は後輩たちに託すことになる。「頑張ってほしいですね。みんな本当に上手ですし。今日出てきた子たちも上手ですけど、他の子たちも本当に上手いので、今年の結果を超えてもらえるように期待したいです」(多田)。CBで相方を務めた前田についても「あの子は強さもあって、プレーはほぼ言うことないんです。熱くなって周りが見えなくなることもあるので冷静にできたらいいなと」と“親心”をにじませながら期待を寄せていた。

 そして自身はサッカー選手とは異なる道で新たな生活をスタートさせる。大学卒業後、母校でもある中部大一高の教員になることが内定。教師という立場に加えて、2年前に県3部所属から全国初出場を成し遂げたサッカー部の指導にも携わるという。「まずはいまの監督から学んでいきます。3バックでめちゃくちゃ前から行って、3点取られても4点取れるようなチームにしたいと言っていたので、それを体現できるようなチームにしたいです」。

(取材・文 竹内達也)


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Source: 大学高校サッカー

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