悩み抜いた末に「帝京高校で全国大会に出たい。優勝したい」と決断して歩み始めた道。壁にぶつかった。自身の力不足、悔しさも味わった。それでも、この一年に懸ける思いは誰にも負けない。家族、恩師、そして先輩たち……助けてくれた人々への感謝の気持ちを必ず結果で表現する。
帝京高(東京)はこの年末年始、横山杯で優勝し、「NEW BALANCE CUP 2024 IN TOKINOSUMIKA」(通称:裏選手権)でも4強。大型CB田所莉旺(2年)はFW森田晃(2年)やMF砂押大翔(2年)ら昨年からの経験者とFW宮本周征ら1年生の「融合が上手く行っている」と説明する。
そして、「自分的には後輩が活躍してくれると強いかなというのを去年一年間で強く感じて、(去年は)自分たち(2年生)がもっとやんなきゃいけなかったなと。その中で、(今冬は)1年生が前線の選手中心に活躍してくれているので、それで助かっているのがあります」と加えた。
23年シーズン、帝京は激戦区・プリンスリーグ関東1部で高体連チーム最上位の4位。一方で日本一を目指したインターハイ、選手権はいずれも東京都予選で敗退した。帝京は選手権優勝6回、インターハイ優勝3回の名門校。22年インターハイで19年ぶりの決勝進出を果たして全国トップクラスの力があることを証明したが、23年度は全国舞台で活躍することができなかった。
田所にとって、PK戦の末に敗れた選手権予選準決勝は「もう同じ思いはしたくない」という敗戦に。「お父さん世代とか、帝京が東京ではずっとチャンピオンで絶対的王者。自分もそれを取り戻したい」と誓う。
「(近年、帝京は)本当に良いサッカーをしていると良く言われると思うんですけれども、そこに今年はもっと貪欲さとか強さ、最後走れるとか昔の帝京はあったと思うので、今から階段を上っていって、最後身体を張れるとか、そういうところに目を向けて今年はやっていきたいと思っています」
自分を助けてくれた先輩、そして後輩たちのためにも帝京を完全復活させる。田所は小・中学生時代、川崎Fの育成組織でプレー。06年生まれ世代の代表チームが始動当初からメンバーに入り、22年3月にはU-16日本代表も経験している。だが、23年シーズン開幕直前に川崎F U-18から帝京へ転籍。「(理由は)違う環境になった時に、自分に何ができるのかという思いも強くあった」と振り返る。それまでとは違うサッカースタイル、環境での挑戦。すぐには結果を出すことができなかったが、帝京の日比威監督やコーチ陣、3年生たちのおかげでチームに溶け込み、自分の特長を表現できるようになったと感じている。
「3年生が受け入れてくれたというのが、自分としては大きかったのかなと思います。日比先生にも感謝の気持ちが強くて、信頼関係を築けたというのもあるんですけれども、そこで自分を使ってくれた先生には本当に感謝していますし、3年生のためや日比先生のためという気持ちが心の中であるので今、こういう大会(“裏選手権”)とかに出ると、その気持ちが原動力になっているかなと思います。帝京高校で勝ち上がることが、今、教えて下さっている先生方や先輩への恩返しになる。本当に結果が大事だなと思っています」
田所は身長187cmのサイズに加え、攻撃センスの光るCBだ。状況に応じて精度の高いロングフィードや中盤へつけるパス、スペースへ運ぶドリブルを使い分ける。この“裏選手権”でも「他の選手に負けちゃいけない」という組み立ての部分で力を発揮。課題の守備強度などを改善し、川崎Fアカデミーの先輩でもある「板倉(滉)選手みたいに本当に何でもできる選手に」なることが目標だ。育ててくれた川崎Fや後押ししてくれている帝京に恩返ししたいという思いや、自身への厳しい声も力にして理想像に近づき、結果を残す。
「信じてくれている、応援してくれる家族がいるのと、受け入れてくれる帝京のみんながいる。途中から入ってきた身にはなるんですけれども、3年生が引退する時に『途中からだけど、オマエが引っ張っていけ』と声を掛けて下さって、それを伝えられた時に自分としては強く責任感が出てきましたし、周りの人にも(転籍したことで)色々なことを言われていると思うけれど、やっぱり『凄いんだな』となるには結果しかないと思う。自分は遅れて入ったけれど、(強い帝京を取り戻したいという)人一倍強い思いはあるので、そこは求めていきたい。一つ一つ重ねて行くしか無いのでステップアップしながら、周りの方々に『凄いんだな』と思われる選手になりたい」
旧友たちの選手権やU-17ワールドカップでの活躍は刺激になった。「出れなくて見る側なんですけれども、(選手権3位の)堀越の仲谷(俊、選手権で2試合連続決勝点)なんて小学校の時に同じチームでやっていて、代表の時の(神村学園のエースMF名和田)我空とか見ていると、自分もあの舞台に立ってないといけないと思いますし、もう一回代表に入りたいなと。(ともに川崎F U-18所属で、U-17ワールドカップに出場した)柴田(翔太郎)とか土屋(櫂大)とかの活躍もやっぱり戦友として戦ってきた身としては嬉しさもあるんですけれども、それよりも歯がゆさっていうか悔しさの方がテレビを見ていてある。自分が次の大会で注目されて、優勝候補でちゃんと結果を残せるように。(自分だけでなく、)期待してくれている方のためもあるんで、そういうところを心の中に持って日々の練習に励んでいきたいと思っています」。代表復帰や日本一への道のりが簡単なものでないことは確か。それでも、1年後の主役候補になる可能性を秘めた大器は、覚悟を持ってそのための日々を過ごす。
(取材・文 吉田太郎)
Source: 大学高校サッカー
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