[1.22 練習試合 U-17日本高校選抜候補 1-4 東京国際大]
「チームでも今年はキャプテンになったので、こういうところでもリーダーシップを持ってやろうというふうに思っていましたし、いつも一緒にやっているメンバーではないので、練習や練習外でもコミュニケーションを取って、すぐ合わせられるように意識しました」。
チームの最後方で悠然と構えたその人から、仲間を鼓舞する檄が聞こえてくる。U-17日本高校選抜候補の最終ラインに組み込まれたセンターバック、神村学園高(鹿児島)DF鈴木悠仁(2年=神村学園中出身)がその声の主だ。
まず、携えている意識が頼もしい。「今回の選抜のメンバーに選ばれたことは嬉しかったですけど、まだ候補なので『やったあ!』という感じではなかったですね」。ただ参加するだけでは意味がない。多くのものを吸収した上で、それを自チームへと還元するために、この4日間を過ごしに来た。
合宿3日目に行われた東京国際大とのトレーニングマッチ。昨シーズンの関東大学リーグ1部で2位になった強敵と肌を合わせたことで、さらに高いレベルで戦うための課題を明確に突き付けられたという。
「自分はまだまだ何もできていないなという印象です。背後を取られてしまうこともありましたし、セカンドボールへの反応がちょっと遅かったなと思います。やっぱり大学生は1つ1つのスピードが速いなと感じましたね。いつもなら自分が先に触れるところでも、向こうが先に触ってくるので、『もっと反応も速くしないとな』と思いました」。
初昇格となったプレミアリーグで1年間を戦い抜いた、昨シーズンの神村学園。少しケガで出遅れた鈴木が初スタメンに指名されたのは、第4節の米子北高戦。そこからしばらくは試合に出続けていたが、「ケガから復帰してからもうまく自分のプレーができなくて、試合に出られない時期もあって、とても悔しかったですね」と本人も振り返ったように、リーグが進むにつれてベンチスタートを強いられることが増えていく。
ただ、後半戦の初戦となったサガン鳥栖U-18戦で先発起用されると、チームはその一戦にきっちり勝利。以降はDF難波大和(3年)と組むセンターバックコンビが不動のものになっていく。
「夏を過ぎてから『自分が変わったな』というタイミングがあって、そこからはどんどん成長していけたと思いますけど、自分の1本のパスミスで失点することもあって、常に高いレベルが求められるリーグなので、そういうところに身を置いてプレーすることで、ワンプレーワンプレーの大事さもよくわかりました」。
ハイレベルなアタッカーたちと対峙しながら、トライアンドエラーを繰り返すことで、プレミアで戦っていくための基準も身につけていく。シーズンが進んでいく中で、その存在感が神村学園にとって欠かせないものになっていったことは間違いない。
3試合を戦った高校選手権は、リラックスして臨むことができたという。「とても楽しかった印象があります。攻められる試合も多くて、常に自分たちのペースで試合はできなかったですけど、個人的には楽しかったなと思います」。大勢の観客の前でプレーすることが、さらなる力を引き出してくれることも体感した。
国立競技場を目前に敗れた準々決勝の近江高戦で痛感したのは、日常の大切さだった。「近江戦は前半でチーム全体が『行けるな』という雰囲気になってしまって、ハーフタイムにも『気を引き締めて、0-0のつもりで行こう』と言ったんですけど、気の緩みがあったから、最後の最後にああいう形で負けてしまったのかなと。日常のところで“あと一歩”が詰め切れていなかったところが、最後に出たのかなという試合でした」。突き付けられた“あと一歩”の重要性を、今シーズンのチームへと強調し続ける決意は定まっている。
鈴木は既に2024年シーズンを始動させている神村学園の新キャプテンにも指名されている。大迫塁、西丸道人という仰ぎ見ていたような先輩から引き継ぐ重責に、身が引き締まらないはずがない。
「偉大な先輩方が務めてきた『神村学園のキャプテン』なので、そこに負けないように、自分なりのリーダーシップを持って、チームを引っ張っていきたいと思います。自分はセンターバックなので責任感が必要ですし、『負けたら自分のせいだ』と思うぐらいのメンタリティがないとプロに行ってもやっていけないかなと考えているので、キャプテンになったことを通じて、そういうメンタリティもさらに身につけていきたいです」。
神村学園中等部3年時には、今も同じチームで戦うU-17日本代表MF名和田我空(2年)やMF新垣陽盛(2年)、MF大成健人(2年)らとともに全国中学校サッカー大会で日本一を経験しているが、まだ高等部はそのタイトルの獲得に至っていない。
「去年はインターハイも選手権も悔しい想いをしていて、プレミアも残留争いという形になっていたので、今年は三冠を目標にしています。その中で最初に開催される夏のインターハイも『今年は絶対にタイトルを獲ろう』という話を全員でしているので、まずは少しずつ力を付けていけるように頑張っていきたいですし、個人としてはプロのスカウトの方々の目に留まるようなプレーをしたいなと思っています」。
堅実に、実直に、それでいて圧倒的な存在へ。神村学園のディフェンスリーダーにして、キャプテンマークを託された屈強なセンターバック。「日本一のキャプテン」という称号を戴くための新シーズンが、鈴木悠仁の躍動を待っている。
(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー
コメント