[新人戦]初の3バック、ボールを保持して相手を外す攻撃など「新しいモノ」に挑戦。矢板中央が全試合3得点以上で栃木制覇

矢板中央高が栃木県新人大会の頂点に立った
[2.10 栃木県新人大会決勝 矢板中央高 3-1 國學院栃木高 栃木グ]

 矢板中央が新システム、ボールを保持して相手を外す攻撃など「新しいモノ」にトライし、新人大会制覇。令和5年度栃木県高等学校サッカー新人大会決勝が10日、宇都宮市の栃木グリーンスタジアムで開催され、矢板中央高が3-1で國學院栃木高に勝利。19年大会以来となる優勝を果たした。

 矢板中央の新チームは、2シャドーとアンカーの選手を配置した3-5-2システムを採用。高橋健二監督は「こうやって時間を掛けて3バックっていうのは初めて。いつもだと堅守速攻だけだったんですけど、今年はもう少し握って、外すというサッカーも『新しいモノ』として取り入れて、 チャレンジしていきたいなと思っている」とその意図を明かす。

 選手権で過去4度の3位を記録している矢板中央は、伝統的に堅守速攻が特長のチームだ。特に体を投げ出してのシュートブロックやクリア、ゴールを守ることへの執着心の強さなど全国トップクラスと言えるものがある。22、23年は2年連続でインターハイ8強。だが、選手権で上位に届かなかった。

 迎えた今年は、ゲームメーカーのMF外山瑛人(2年)や今大会準決勝で交代出場ながら4得点のFW堀内凰希(2年)ら攻撃タレントが多いこと、また「(全国で上位に入るためには)堅守速攻だけだと限界がある。新しいものにチャレンジしたい」(高橋監督)という考えからボールを握る、また人数をかけて攻撃することにトライ。全4試合で3得点以上をマークして頂点に立った。

「今回、団結してくれた」と中田勇樹監督が評した國學院栃木は、昨秋の選手権予選に続く決勝進出。昨年からのレギュラーであるMF高橋遙希主将(2年)、MF斎藤旺雅(2年)の2シャドーがボールを引き出し、ドリブルを交えてボールを動かした。
 
 だが、前半は矢板中央の切り替えの速さや鋭いプレッシャーに苦戦。攻め切る前にボールを失ってしまう。一方の矢板中央はアンカー役のMF田中晴喜(2年)らがボールを奪い返し、キープ力の高い外山やMF平野巧(1年)がチームを前進させる。

 まだまだ精度を欠く部分もあるが、人数を掛けた崩しや個の強さを活かした攻撃からCKの数を増加。また、浮き球を胸で収めたFW渡部嶺斗(2年)が、迫力のある仕掛けからシュートを撃ち込むシーンもあった。そして20分、矢板中央が先制する。再三攻撃参加を見せていた左WB中島漣音(2年)の右CKを、CB小倉煌平(2年)が頭でゴールへ突き刺した。

 國學院栃木もGKからボールを繫いで反撃。FW高橋力駆(2年)の力強い動きやMF(関優太}}(2年)の左足FKで相手ゴールを脅かす。だが、矢板中央は「そこが武器でもあって、売りでもある」というゲーム主将CB({佐藤快風}}(2年)が声でチームを鼓舞。また、前線からの守備を継続すると、38分、外山の展開から右WB池田拓歩(2年)が縦に仕掛けてマイナスのラストパスを送る。これを中島が右足ダイレクトでゴールへ流し込んだ。

 矢板中央の外山は、「今年のチームは全員、個で剥がせるっていう力があると思う。それを消したら多分守備的に、何もできなくなっちゃうんで、監督たちもコーチ陣も『もう攻撃的に行け』と。県予選でチャレンジできないと、プリンスリーグも多分通用しないと思うので、『怖がらず、行け』っていう指示があり、練習から日々、そういうところにこだわってやっています」。キープ力と展開力で攻撃をコントロールした外山や、ケガを抱えながらも前線で存在感を放つ渡部を中心に、得意の速攻だけでなく、ボールを保持しながら仕掛けることにもチャレンジ。2点リードに結びつけた。

 対する國學院栃木は、ハーフタイムに勇気を持って自分たちのサッカーを徹底することを確認。後半8分には、左SB池葉颯大(2年)の縦パスを受けた高橋遙が寄せてくるDFを1人、2人と剥がして右足シュートをゴール左へ突き刺した。主将のファインゴールで1点差。國學院栃木はアンカーへポジションを落とした高橋遙や斎藤、関が相手の間延びした中盤を狙ってボールを繋ぎ、右SB川原來愛(1年)がドリブルで2度3度と前進する。そして、クロスの本数を増やし、高橋力が抜け出しから左足シュート。矢板中央は我慢の時間帯となっていたが、「矢板中央の伝統は、やっぱり守備から入る。“赤い壁”っていうのは変わらず、自分たちが、そこの中心となってやっていきます」と誓う佐藤らDF陣が崩れない。

 逆に終盤、矢板中央は交代出場の堀内らが相手を押し込んで攻撃。中島のロングスローなどで追加点を狙う。國學院栃木もCB貴船大翔(1年)が球際で健闘するなど食い下がっていた。だが、矢板中央は40+3分、中島の右CKを田中がダイビングヘッドで決めて3点目。その後、1級審判員から勇退する高山啓義主審が試合終了の笛を吹き、矢板中央の優勝が決まった。

 矢板中央は全4試合で3得点以上をマークして優勝。高橋監督も「得点はだいぶ取れている。結果に現れている」と「新しいモノ」へのトライを評価していた。その一方、準決勝に続いて決勝も1失点。この日はリーダー格の注目CB清水陽(2年)やU-17日本高校選抜候補GK藤間広希(2年)が不在だったが、課題の守備を改善していかなければならない。佐藤は「これから始まるプリンス(リーグ)はプレミア(リーグ)まで行く。インターハイは去年はベスト8だったんで優勝、選手権も必ず日本一っていうのは掲げて、一日一日大切にして過ごしていきたいと思います」と誓った。後半に2トップが孤立してしまうなど、攻撃面もまだ課題があることは確か。質の部分もより向上しなければならない。それでも、矢板中央は今年のチームの特性を活かしてチャレンジを続け、より成長して4月のプリンスリーグ関東1部開幕を迎える。

(取材・文 吉田太郎)

Source: 大学高校サッカー

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