2028年ロサンゼルス五輪まであと4年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ
「3年生のために何もできなかった」
佐賀東高が全国8強まで勝ち進んだ第102回全国高校サッカー選手権大会。その結末はハッピーエンドではなかった。チャンスの数では上回りながらも、少ないチャンスを決め切ってきた堀越高を相手に苦杯。悔いを残す試合をしてしまった直後、DF田中佑磨(2年)は冒頭の言葉を残した。
それから1カ月余りを経た現在、キャプテンマークを腕に巻き、新たな一歩を踏み出している。
KYFA男子第45回九州高等学校(U-17)サッカー大会(鹿児島)の予選リーグ第3節では、鹿児島城西高と対戦。序盤から機能的な攻撃を見せた佐賀東が2-0と快勝したこのゲームでも、確かな存在感を見せ付けた。
「前半から内容的に良いゲームだったからこそ、しっかりリスク管理しながら戦う部分は特に意識してやっていた」
苦い薬を飲み干すことになった堀越戦の反省も活かし、闇雲に攻め上がるのではなく、後方からゲームを作るプレーを見せつつ、バランスを保持。サイドの1対1守備では自慢のパワーに裏打ちされた対応力を見せつつ、“違い”を見せ付けた。
元より機動力と馬力を兼ね備えた選手であり、SBとしては高身長でもあり(179cm)、CBとしてもプレーできる防空能力も備える。タイプ的にはカタールW杯の日本代表だったDF酒井宏樹(浦和)を彷彿とさせるスタイルで、実際に本人も目標として挙げてきた。
ただ、昨年はU-17日本高校サッカー選抜の活動にも参加して刺激を受け、全国大会でのタフな試合経験も積んだことで、さらに上のレベルを目指す意識もより高まったと言う。意識するのは、現役の日本代表選手であるDF毎熊晟矢(C大阪)だ。
「いまも酒井選手のような高さで勝てて対人にも強い自分と似たタイプの選手を参考にしてきたんですが、そこはしっかりやりつつ、いまは毎熊選手のような攻撃で違いを出せるSBの映像もよく観ています」
最終的な理想は、「酒井選手の守備能力を持ちつつ、毎熊選手のような攻撃のクオリティを出せるような選手」だ。
もちろん言うほど簡単な目標ではないが、佐賀東でのここまでの2年で見せた進歩のスピードを思えば、さらなるスケールアップにも期待は膨らむ。かつては課題に感じることも多かったキックの質も目に見えて向上している。
「キックのところは練習でかなり蹴り込んできました。いまは回転とかにもこだわって、キックの種類も増やしている」(田中)
そんな田中の姿勢を蒲原晶昭監督も高く評価する。
「成長の理由は人間性です。あれだけ欲を持って取り組めますから。ああいう選手は成長するしかないとさえ言えると思います」
どん欲に取り組んできた結果、スピードと馬力という持ち味に加え、クオリティも着実に向上してきた。次は年代別日本代表でのプレーも観てみたくなる選手である。
「そこは目標にしています」とハッキリ語りつつ、そのためにもチームでの結果にこだわりたいと言う。
さらにタフネスとスキルを磨き、チームを勝利に導くリーダーシップでも輝き、さらなる注目を集められるか。九州高校サッカー最強SBの最終学年での「どん欲な成長」に注目してもらいたい。
Source: 大学高校サッカー
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