[2.28 五輪アジア最終予選(女子)第2戦 日本 2-1 北朝鮮 国立]
通訳をさえぎるように自ら語り出した。試合後の記者会見。最初の質問で韓国紙『東亜日報』の記者が質問をすると、質問を日本語に通訳している途中で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)女子代表のリ・ユイル監督が口を開いた。
「申し訳ないが、神経を逆なでするような媒体ということで、今の質問にはお答えできない」。会見場が凍り付く雰囲気の中、続いて日本メディアがフェアプレーに関して質問。指揮官は「スポーツ選手としてルールを尊重する、審判の判定を尊重するのは大事なこと。道徳的にも倫理的にもルールを守るのは大切なこと」と強調したうえで自身の見解を述べた。
「私どもは主審の判断を尊重するし、その決定も尊重するが、私どもにとってはアウェー戦ということで、ホームである日本をかばうような判定が少し見受けられたのではないかと思う。道徳的にも倫理的にも、アウェーで戦うゲストである私たちをもうちょっと尊重する判定があってもよかったのではないか。釈然としないものもあるが、あくまでも主審の判断にのっとって最後までフェアプレーを貫いた」
前半45分にMFチェ・クムオクのシュートがゴールラインぎりぎりでGK山下杏也加にかき出されたシーンを指していたのか、競り合いの中での判定への苦言だったのかは定かではないが、回答を終えると、「次を最後の質問にさせてもらえないでしょうか」と切り出した。
続いて日本メディアから「これだけ大事な試合でVARは必要だったと思うか」と質問されると、「公正な判定のためにはVARが導入されればいいと思うが、VARを導入する、しないよりも今回は重要な一戦だった。その試合に臨む姿勢そのものが重要だったと思う。技術的にVARが導入されていれば役に立ったかとは思う」と応じた。
司会者が「もう一問だけ良いか」と尋ねると、指揮官自ら「朝鮮新報社の記者でいいか」と、挙手する記者を指名。「勝利を目指して最後まで走り続ける選手の姿に感動した。3000人の同胞が応援に詰めかけ、熱烈な応援をした。3000人のほかにも日本各地で同胞たちが熱い応援を送った。その同胞たちに一言お願いします」。質問を聞き終えたリ・ユイル監督は言葉に詰まり、涙をこらえながら小声になって答えた。
「日本全国から声援を送ってくれたサポーターの皆さんに良い結果をもたらすことができず、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。さらに良いプレー、良い試合をお見せできるように努力したい」。会見場では指揮官の言葉が日本語に訳される前から拍手が沸き起こるなど、終始異様な雰囲気で10分余りの短い記者会見は終了した。
(取材・文 西山紘平)
Source: サッカー日本代表
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