2028年ロサンゼルス五輪まであと4年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ
中学時代の目立ったキャリアは兵庫県の地区選抜のみ。チームとしても県大会に出場することがやっと。全国どころか、県内では名が知れた選手ではなかったため、高校に進学する際も第一志望だったチームのセレクションに落ちている。
ただ、50m走5秒台後半の快足を生かした裏への抜け出しは魅力十分。そして、何よりもストライカーとしての感覚を持っている。40年以上、四国学院大香川西高の指揮を執る大浦恭敬総監督が「歴代のFWの中でも3本の指に入る得点感覚を持っている」と太鼓判を押す選手がFW玉田滉喜(2年)だ。
「同じ県にいる人同士で争っても面白くない」との理由で選んだ四国屈指の強豪校でも自らの足で絶対的なエースとしてのし上がっていった。入寮してすぐ行われた1年生同士の紅白戦で5得点を奪うと、その週のプリンスリーグからAチームに昇格。夏以降はスタメンに定着し、選手権でも後半から出場機会を得たが、出場時間はわずか8分に終わり、悔しさを味わった。
2年目の昨年、掲げた目標はプリンスリーグ四国での得点王だった。前期だけで10得点をマークし、得点ランキングの先頭を走ったが、対戦相手の警戒網が強まった後期は得点数の伸びが停滞し、最終的にはリーグ4位の14得点。「警戒されたことを言い訳にしてはいけない。メッシやロナウドなど一流の選手はどんなにマークさていても点を決める」。チームとしても無冠に終わり、悔しさが残る一年となったことは間違いない。
ただ、香川西で過ごす日々は無駄ではない。「1年間悔しい想いをしたから変わることができた」と話すように、速さを生かした裏抜けにプラスアルファの武器が加わっている。昨年は時間を見付けて筋トレに励むだけでなく、食事も意識した結果、高校に入ってからの体重が10kgもアップ。持ち前のスピードを上げるため、チューブトレーニングで腸腰筋も鍛えてきた。
取り組みの成果によって裏抜けの力強さは増している。加えて、相手が予想もしないほどの速さで身体を寄せるため、前線からのプレスでボールを奪う回数も増加。身体を張ってクリアボールを前線で収める場面も見慣れた光景になってきた。今年1月から3月にかけて行なわれる全国規模の交流戦「トライバルステージ」では2度のハットトリックを含め、8試合で10得点をマーク。ストライカーとして覚醒の予感が漂っている。
これまでは守備に回る時間が長いチームでプレーしてきたため、カウンターに慣れていることは改善点。「100回動き出しをして、1回でもゴールを奪うことができれば良いポジションなのに、1回でも良いボールが来ないと諦めてしまう」。大浦総監督が口にする通り、中盤からのパスに対するアクションを絶え間なく続ける姿勢を身に付けば、得点数は更に伸びていくだろう。
プレーを見れば大浦総監督が「より質の高いボールが出てくるチームで使われると面白い」と口にするのも頷ける。プロ入りを含めた先のステージをつかみ取るためには、本人も何をしなければいけないかをよく分かっている。「得点感覚は良くなってきているけど、チームが勝てなかったら目立たない」と話す通り、今年はチームを全国大会に導くことで自らの将来も切り拓く。
(取材・文 森田将義)
Source: 大学高校サッカー
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