JFA新懲罰規定どう変わる? 一発レッドで「複数試合出場停止」となる例を徹底解説

JFA懲罰規定が改正へ
 日本サッカー協会(JFA)は今月7日の理事会で、Jリーグなど国内大会で退場となった選手を処分する懲罰規定の改正を決議した。従来の懲罰規定では危険なタックルや暴力行為で退場となった選手に対しても、通常1試合の出場停止処分が下されるのみだったが、今後は複数試合の出場停止処分が課されることになる見込みだ。

 新たな懲罰規定では「著しい反則行為」に最低2試合の出場停止、「選手等に対する暴行」には最低3試合の出場停止処分が下されることが決まった。これまではいずれの場合も最低1試合の出場停止と定められており、さらに悪質性に応じて処分を加重できる運用ではあったが、大半のケースでは1試合の出場停止処分にとどまっていた。

 もっとも1試合という出場停止処分は、累積警告や決定的な得点機会の阻止(DOGSO)と同じもの。危険なタックルや暴力行為とは行為の悪質性が大きく異なっている中、処分の重みづけが不釣り合いだとする意見も多かった。また悪質なプレーや行為を抑制し、選手の安全を守るという観点でも不十分なルール運用となっていた。

 さらにアジアサッカー連盟(AFC)の主催大会や欧州各国リーグ戦では、すでに反則の種類によって最低出場停止試合数が変わるという運用がされており、JFA基準とは乖離があった。そうした国際基準に合わせることも念頭に今回の規定改正に至っている。

 なお新規定でもこれまで通り、2試合以上の出場停止となった場合は罰金もあわせて課されるほか、情状によって罰が軽減される可能性もある。

 ちなみに新たな懲罰規定では「審判員の判定に対する執拗な抗議」や「観客に対する挑発行為」が出場停止基準に列挙されているが、その処分対象はあくまでも退場に値する行為であった場合。たとえば異議や相手サポーターを煽るようなゴールパフォーマンスをした選手が主審から注意されたり、イエローカードを受けたりした場合であれば出場停止処分は与えられない。

 各反則での懲罰内容は以下のとおりとなっている。

▽相手チームの決定的得点機会の阻止
懲罰:1試合の出場停止
 いわゆる“DOSGO“や、ハンドによる得点の阻止で一発退場になった場合が該当する。悪質性が小さいことから、これまで通りに1試合の出場停止にとどまる反則となっている。

▽選手等に対する攻撃的、侮辱的若しくは暴力的言葉またはジェスチャーの使用
懲罰:最低1試合の出場停止
 不適切な言葉やジェスチャーを使用し、レッドカードを提示された場合が該当する。なお、人種や性別などに関する差別発言に関しては、改正項目とは別に規則が定められており、最低5試合の出場停止処分、複数の選手が行った場合は勝ち点減点や下位カテゴリ降格などの重い処分が課されるルールとなっている。

▽著しい反則行為
懲罰:最低2試合の出場停止
 競技規則における「著しく不正なプレー」を処分する規定。足裏で相手選手に激しくタックルをした場合など、プレーの結果として安全を脅かす、過剰な力を用いるファールをした場合がこれにあたる。これまでは最低1試合の出場停止だったが、今後は最低2試合の出場停止となる。今年3月のAFCチャンピオンズリーグでは横浜FMのDF松原健が相手選手に不用意なタックルを行い、AFC基準で2試合の出場停止処分を下されていた。

▽選手等に対する暴行
懲罰:最低3試合の出場停止
 競技規則における「乱暴な行為」のうち、「肘打ち、パンチ、蹴り、噛みつき、唾を吐きかける、または殴打する等」したものを処分する規定。 上記の「著しく不正なプレー」とは異なり、ボールのないところでの粗暴な行為や、ボール保持者による相手選手への肘打ちなど、プレーの延長ではなく相手選手を傷つけるために行った事象がこれにあたる。これまでは悪質な行為でも1試合の出場停止にとどまることが多く、処分発表時に批判の声が上がることも少なくなかったが、今後は最低3試合の出場停止という重罰が下される。

▽選手等に対する反スポーツ的な行為
懲罰:最低1試合の出場停止
 反スポーツ的な行為は通常イエローカードの対象行為だが、時には退場を伴う出場停止事案に発展することもある。2018年のJ2第20節・大分対福岡戦では福岡DF篠原弘次郎が相手選手の足を蹴った後、倒れている選手の胸ぐらを掴んで引き起こす行為を行ったのが試合後に発覚。蹴ったことが乱暴な行為、胸ぐらを掴む行為が反スポーツ的行為にあたると判断され、2試合の出場停止処分を下された。

▽観客に対する挑発行為
懲罰:最低2試合の出場停止
 競技規則における「乱暴な行為」のうち、観客に対する挑発行為が該当する。20年のJ2第24節・栃木対長崎戦では長崎DFフレイレが試合後、栃木サポーターが陣取る観客席に向かってペットボトルを投げ入れたことで一発退場。当時の規定では「選手等に対する暴行・脅迫および一般大衆に対する挑発行為」および「乱暴な行為」に該当すると判断され、合計4試合の出場停止になったが、今後はこの規定が適用されそうだ。

▽審判員の判定に対する執拗な抗議
懲罰:最低1試合の出場停止
 審判員に「攻撃的な、侮辱的な、もしくは下品な発言をする、または行動をとる」ことでレッドカードが提示された場合が該当する。23年のJ1第18節・京都対横浜FC戦では控え選手のMF三田啓貴が判定に抗議し、副審に詰め寄って一発退場となったが、同様の基準が適用されて1試合の出場停止となった。

▽審判員に対する反スポーツ的行為、審判員に対する攻撃的、侮辱的もしくは暴力的言葉またはジェスチャーの使用
懲罰:最低4試合の出場停止
 審判員に対する「乱暴な行為」のほか、不適切な言葉やジェスチャーを使用する行為が該当する。過去には2011年のJ2第4節・富山対大分戦で、警告2枚で退場処分を下された大分FW前田俊介が審判員の頬を掴んだとして6試合の出場停止処分が下された例がある。

▽審判員に対する威嚇又は脅迫
懲罰:最低6か月間の出場停止
「攻撃的、侮辱的若しくは暴力的言葉又はジェスチャーの使用」よりも悪質性があった場合、この規定に該当する。

▽審判員に対する暴行
懲罰:最低1年間の出場停止
 審判員に対する「肘打ち、パンチ、蹴り、噛みつき、唾を吐きかける又は殴打する等」の行為が該当する。これまで最低6か月間の出場停止だったが、原則1年間の出場停止という重い処分対象になった。

 新たな規定は4月1日から順次施行。年度をまたいで開催される大会など特別の事情がある場合のみ、加盟団体の別段の決議を経ることで、施行日に前後して適用開始日を定めることができるという。


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Source: 国内リーグ

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