U-23日本代表 国際親善試合メンバー発表 大岩剛監督会見要旨

大岩剛監督
 日本サッカー協会(JFA)は15日に都内で記者会見を行い、国内で行われる国際親善試合2試合に臨むU-23日本代表メンバー26人を発表した。会見では大岩剛監督と山本昌邦ナショナルチームダイレクターが質疑に答えた。

 U-23日本代表は今月22日にサンガスタジアム by KYOCERAでU-23マリ代表、25日にミクニワールドスタジアム北九州でU-23ウクライナ代表と対戦する。4月にはカタールでパリオリンピックアジア最終予選を兼ねたU23アジアカップが行われ、今回の親善試合が大会前の最後の活動となる。

●山本昌邦ナショナルチームダイレクター
「パリオリンピックに出場するマリとウクライナという2チームとトレーニングマッチが組めるというところで、対応してくれた両チームの関係者の皆さん、そしてマッチメイクにJFA内のスタッフも奔走してくれて、いいカードが組めたと思っている。このことに関してはうれしく思う。われわれはまだ出場権を得ていない中で、出場が決まっている2チームと、レベルの高い強化試合ができるということは本当にうれしいこと。4月の最終予選に向けて、最後の本当に重要な準備の2試合となる。96年のアトランタオリンピック以来、今回の予選は本当に難しい過酷な予選になるかと想像している。この3月から、ぜひみなさんのエモーションの高まりというか、簡単じゃないアジアの予選をここから盛り上げて、4月から5月3日のファイナルに臨めるようにまず予選をしっかり戦う準備をしてまいりたい。京都、北九州の運営の皆さん、関係者のみなさんにサポートいただくことに感謝を申し上げたい。ご支援引き続きよろしくお願いしたい。メンバーではインターナショナルマッチウィークの活動において、特にFC東京さんはこの世代から4人の招集にご協力いただき、サムライブルーでは長友(佑都)選手を招集いただき、本当に多大なる負担になっているかもしれない。ご協力いただいたことに対して、感謝を申し上げたい。非常に厳しい制限のある招集の課題がある。そんななか、われわれ大岩監督を始め、スタッフが本当に厳しい招集条件のなかで落ち着いて、冷静に仕事をしてくれている。頼もしく見ているし、コーチングスタッフ、メディカルスタッフ、サポーティングスタッフを含め、感謝しているところである。正直4月の予選は危機感しかない。本当に厳しい条件の中で、この予選を勝ち抜いていけるのか。スタッフ、監督には本当に大きな負担になっている。できる限りのサポートをして、まずはパリ行きの切符を掴めるような、ここからの盛り上げにつなげていきたい」

大岩剛監督
「最終予選に向けてのわれわれの最後の活動になる。3月のマリ戦とウクライナ戦にしっかりと目的を持って、最終予選に向けて準備をしたい。さまざまなことを想定したなかで、選手に求めるもの、われわれのやるべきことをしっかりと確認しながら、2試合を戦っていきたい」

──今回呼んだ海外組は最終予選で呼べる目途が立っているという観点で呼んでいるのか。コアメンバーの海外組で今回不在の選手は、呼べない可能性が高いのか。
大岩監督「海外、Jリーグもそうだが、シーズン中、そしてシーズン終盤の非常に大事な時期。その中で非常にデリケートな問題なのではっきりと最終予選に呼べる、呼べないというところまでは実際に行っていないのが実情。いろんなリスクを管理しないといけなかったり、あくまでもお願いベースなので、そういうところも含めて山本ダイレクターが海外クラブとコンタクトを取ってくれているが、丁寧にオファーを出しながら、クラブの意向を聞きながら交渉し続けているのが現状。今回の活動に参加してくれる海外組は、確率としては高いと思っていただいて結構だと思っている。ただデリケートな問題なので、海外クラブの動向は把握した上で最終予選のメンバーを決めていきたいと思っている」

──U23アジア杯は23人だが今回は26人。このメンバーの中から絞り込むのか。
「ここに名前のない選手たちもいる。今回の活動だけでいえばこの26人で2試合を戦うこと、しっかりとしたわれわれのビジョンを持って戦うのがひとつ。その後もJリーグも含めて試合があるので、そこで最終予選に向けたメンバーを選んでいきたい」

──荒木遼太郎が久々に招集された。期待するポイントはどこか。
「彼は久しぶりの参加。我々もこれくらい長くいなかったのか、というくらい離れていると思うが、彼の今のパフォーマンス、FC東京で出しているパフォーマンスをそのままわれわれのグループでも発揮してくれれば。力を持っている選手だと思うので、久しぶりというところより現在のパフォーマンスに期待して招集した」

──A代表に選出されていた細谷真大が招集された。彼に期待したいことはどこか。
「すばらしい経験を彼自身したと思う。そういう経験は発言であり、姿勢であり、われわれのグループの選手たちにしっかり見せてほしい。ただそれだけが目的になりがちだが、彼のセンターフォワードとしてのわれわれのグループでの役割をしっかりと発揮してくれた上で、彼の経験をみんなに伝えてくれればものすごい力になるし、彼自身もいいパフォーマンスに変えていけると期待している」

──久保建英鈴木彩艶は最終予選に出場できる見込みか、それとも厳しいのか。A代表とU-23日本代表の間で、森保一監督と大岩監督の狙いはあるか。
山本ダイレクター「森保監督、大岩監督、コーチングスタッフも含めて、選手の情報共有は日々できている。森保監督と大岩監督は、私と話すよりもコミュニケーションが取れている。選手のパスウェイ、成長、経験の部分は2人で話している。私としては安心していて、それで今回の選択になっていると思う。鈴木彩艶と久保建英について、本大会は7月にある。さまざまな配慮をJリーグもしていただいており、2人は海外でプレーしているので、その時期はオフになる。海外オフィスのスタッフもいるので、常に選手とやりとりしていて、パリの本番につながれば本人の意思確認はできている。ハードルは簡単ではない。クラブとの交渉がまとまらないと招集できない。前向きには進んでいる。(最終予選は?)ゼロとは言わないが、クラブとの話し合いでは厳しい状況とお伝えしたい」

──“A代表経由”の方針は、最終予選を前でも変わらなかったか。
大岩監督「私の方針というよりJFA、サムライブルー、われわれのスタッフと話をした上で、森保監督も普段から言うが、個人の成長を第一に考えないといけない。能力があればあるほど上のレベルでやる必要があると私自身も思っている。重要な試合が続いていたので、選手が上のカテゴリでプレーするのは極めて普通のことだと認識している。われわれの世代でも各ポジションにその選手の代わりではなくて、それ以上になりうるポテンシャルを持った選手もいる。それによってチャンスを得て、成長していく循環が日本サッカーとして重要なことだと思う。そういうサイクルにしていくことが優先なんじゃないかと思う」

──この2試合はどういうところを見たいか。
「マリ代表もウクライナ代表も本大会出場を決めており、実際に欧州予選とアフリカ予選も視察に行った。その中で個々のレベルが非常に高い、この年代でのレベルが高い印象を受けた。所属クラブを見ても欧州の主要各国でプレーしている選手が多いので、そういう意味では強敵だと分析している。システムはオーソドックスだが、非常に組織されている。特にウクライナは非常に強い印象を受けている。アジア予選に向けての準備だが、強豪国とやることでわれわれのやるべきこと、やらないといけないことが明確になる。その中で修正、改善、成長することで最終予選に向けてのいい準備になると思っている。そのための準備をした上で、初戦のマリ戦に準備していきたいと感じている」

──選手の成長度という言葉を使っている。選手たちの成長度の中でどこに手応えがあるか。
「発足当初は今と立ち位置が違ったり、所属が違ったり、彼らも苦しんだなかで発足したが、今年に入って活躍する場が変わり、もがきながら彼らが非常に目の色を変えて取り組んでいる姿を見ている。各活動ごとに変化の色が見える。ここまで強豪国と言われている国と対戦することで、勝ったり、負けたり、競り勝ったり、競り負けたり、いろんな経験をする中で個人でやらないといけないこと、グループとしてやらないといけないことが徐々に明確になることで、所属クラブに戻っても日々、彼らの努力で成長していると感じている。個の成長をグループとして大きくしていく作業をこれまでもしてきたし、これからも次の成長に活かしていくことをやり続けていきたい」

——右SBに厚みがあるが、競争をどう考えているか。
「少し前であれば我々の苦しんでいるポジションであったが、今季に入ってからものすごく各クラブでわれわれの年代の選手たちが活躍してくれている。グループとしても非常にいいことだし、個人においてもライバルという認識かはわからないが、同じ世代の同じポジションでしのぎを削り合うことが彼らの成長につながっていると思う。右SBばかりたくさん呼ぶわけにはいかないので、今回の活動を見ながら最終予選で名前を連ねることができるよう、クラブでパフォーマンスを見せてほしいと期待している」

──ベースとスペシャルな武器のバランスが難しいと思うが、植中朝日はFWだけでなくインサイドハーフもシャドーもできるが、そういったチームとしてのタスクとスペシャルな部分をどうやって出すイメージか。
「個人の名前が出たが、我々のチームではやはりセンターFWに限らず、アタッカー陣にはスペシャルな部分と、チームとして重要なタスクを求めている。それは守備のところ、トランジションのところ、囮になる動き。FW、アタッカーの選手にはそういう部分を求めている。そういう部分を求めながらそれぞれの特徴、強みを出してくれればチームにとって非常に有益になる。それを期待して2試合を戦っていきたいと感じている」

──MF、DF、GKも含めて求めているタスク、こういうものを求めていきたいというものは何か。
「われわれグループのプレー原則、プレーモデルがあって、それはポジションごとにもあるし、ポジション関係なく全員に求めているものがある。代表チームは自分の強みを出す場所であると思うし、それを踏まえた上でポジション、中盤であれば10番の動き、8番の動き、6番の動きを認識した上で強みを出してほしい。タスクばかり言っていると思われがちだが、それを踏まえた上での強みを重要視している。グループの中で自分の色を出すことがチーム内での信頼を得る道かなと思っている」

──最終予選に向けて2試合あるが、この2試合をどう使っていきたいか。全選手に出場機会を与えるか。
「26人の選手で戦うので全員にプレーする機会を与えたい。時間が長い、短いがあると思うが、その試合での役割を認識した上でプレーしてほしいと思う」

──海外組を呼ぶのに難航したと思うが、何人くらい呼びたかったのか。交渉材料はあったのか。
山本ダイレクター「未来を考えたときに非常に重要な質問。選手たちが成長することで海外のクラブで五輪世代、U-20世代の選手たちも海外でプレーできる選手が増えてきた。A代表の強化にもつながっている。ひとつ転換点を迎えていると感じている。というのもJリーグの協力は昨年9月にルール作りをして、そのなかで協力していただけることはひとつの強みで、大学も協力をいただいている。日本国内でのベースは作れている。しかし海外でリーグの終盤を迎える非常に重要なところで、クラブには選手をリリースする義務がない。拒否ができる中で、選手を招集するところで本当にハードルが高くなっている。一面は喜ばしいことで、海外のトップクラブでプレーできるようになったということ。選手の一人ひとりが自信を持って成長してくれる流れは悪くない。ただ五輪でメダルを目指すのも重要なポイント。そこの交渉は昨年の夏前、1年前から継続してやってきた。海外でプレーする選手が増えることで海外オフィスも設けて、日々クラブとコミュニケーションを取らせていただいている。ご協力していただけるクラブもあるし、難しいクラブもある。負担を現場にかけているが、それに踏まえて対応していただいている。正直、今回は呼べない選手がいる。日本の底力が試されているし、日本の中にも選手たちがたくさんいるということ。アジア大会も同様に五輪と同じ日程だった。IW外でいくつかクラブと交渉した。出してくれるクラブ、出していただけないクラブがいて、出していただいたクラブの選手たちがレギュラーになっているし、今回もアジア大会のメンバーから何人か入っている。成長は目指していかないといけないことで、うまく活用して選手の成長につなげていただけるのも頼もしく思う。そのチャンスを生かして選手も自信を持って、入り込んできたことが大事。才能がどれだけあっても、いい経験をしなければ成長は難しい。五輪予選と五輪本番で6試合を戦い抜けた選手たちが成長していくと思う。招集には選手の意思とクラブの事情という優先順位があるので、これからも継続してクラブとコミュニケーションをとって、一人でも監督の呼びたい選手を呼べるようにしたい。どういう条件になったら招集できるかを詰めている。ヨーロッパオフィスに優秀なスタッフを置いている」

──国内組にも素晴らしいメンバーが揃っているが、改めて期待することは何か。最終予選に向けての対戦国のスカウティングをどうしていきたいか。
大岩監督「分析はもう始まっている。各国もU-23チームの活動は限られている。今回、分析にサポートとして1人入るが、スタッフの中で今後のスカウティングのスケジューリングを立ててやっている。今ある材料でのスカウティングは始まっているし、IWの期間も別のところで大会を開いているので、そこもスカウティングをしていきたい。また国内組に期待するところだが、私の中で戦っている場所で区別はしていないつもり。ただ海外での厳しい条件、環境も含めて、その中で揉まれている選手とJリーグで勝手知る中での違いは当然ある。ただ今のJリーグはレベルが高い。特にJ1は。その中でゲームに出続けること、チームで活躍し続けること、チームメイトの信頼を得続けることに期待しているし、それが日本代表に居続けることにつながると思っている。いま現在、国内でプレーしている選手もいずれはいろんなところでプレーすることを望んでいるので、われわれのグループでもレベルの高いプレーをわれわれのところでもやり続けて、チームとして大きくなっていくことを期待したい」

山本ダイレクター「厳しい最終予選で万全を期するために、選手とコミュニケーションがあるので、今回からテクニカルスタッフを増員している。引田という桃山学院大を卒業する4年生。アンダー世代の代表をサポートしていただいたし、われわれのテクニカルスタッフともコミュニケーションを取れていた。4月からJFAのテクニカルスタッフに入るので、U-23のサポートで増員している。アジア杯でテストした、最終予選の連戦になるところの組み合わせが決まりにくいところの対応は、組織は整ってきたので、しっかりサポートできるように私からも準備を進めたい。4月は別のサポートをしないと万全な状況は作れないと思うので、そこはこれから詰めていきたい」

──山本ナショナルダイレクターは危機感があると言った。アトランタ五輪以来ではないかと話していて、どこが厳しくなりそうだという展望を持っているか。
山本ダイレクター「招集のところが非常にハードルが上がっていて、監督が求める全員が呼べるわけではないというハードル。日程が4月にずれ込んだことで、ヨーロッパとの関係も含めて厳しい交渉になっている。カタールで行われる最終予選は処熱の戦いもあるし、過去に例のない状況。各国とも本当に力をあげている。W杯の出場枠がアジアで増えたことで、トップ4グループの次のグループが本当にさまざまな面で強化を進めていて、育成の強化が入って、アンダー世代から世界に出てきている選手が育っている。そこからの流れもあり、W杯の枠と五輪の3.5という枠は本当にハードルが高いと思っている。全体のアジアの底上げも含めて、厳しい戦いになると覚悟している」

(取材・文 石川祐介)
Source: サッカー日本代表

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