[3.24 大学日韓定期戦 韓国0-2日本 安養総合運動場]
ライバル・全韓國大学代表を絶望に叩き込んだのは、1年生FW内野航太郎(筑波大=横浜FMユース)の圧巻2発だった。
昨年の関東リーグでは、1年生ながら複数得点を重ねて得点ランキング3位に入った。U-20全日本大学選抜として参加した第38回デンソーカップチャレンジサッカー福島大会では初戦でハットトリックを達成。昨年の大学サッカーは1年生の当たり年といわれているが、その中でも抜きん出た結果を残し、この全日本大学選抜に選出されていた。
「全日本大学選抜がアウェーで1回しか勝ったことがないのは事前情報として聞いていました。でも自分が全韓國大学選抜と対戦するのは初めてだからフレッシュな気持ちだったし、やることは変わらず点をとることだけっていうところを意識していました」
日本以上に“日韓戦”に重みを持つ韓国にとって、なんとしてもホーム2連敗は避けなければならない。ある種、独特な雰囲気の中で行われたこの試合で、スコアレスで折り返しながらも日本はチャンスを作りながら試合を進めた。
内野も序盤の8分と35分に訪れた決定的なチャンスをモノにすることができなかったが、「外すことには慣れていますし、ストライカーである以上、たとえ外しても1点取ればOK。そういう気持ちでいるので、ネガティブな気持ちにはならずにやっていた」と気持ちを切らさずに残り45分の戦いを迎えていた。
すると“フィーリング”がピタリとはまったという後半11分、DF根本健太(流通経済大3年=東京学館高)がヘディングで折り返したボールを頭で叩き込み、先制点を決めた。「根本くんは当たりが強いので、CKは絶対に脅威になると思っていた」という予感どおりのセットプレーからの先制点。「相手のマークは厳しかったけど、そのタイミングで相手がボールウォッチャーになったのもよかった」と納得のいくゴールゲットになった。
そして後半31分にも内野らしさ溢れる追加点が生まれる。FW中川敦瑛(法政大3年=横浜FCユース)がスルーパスに反応してエリア内に入るとみるや、タイミングよくスペースに走り込む。「ノブくん(中川)が抜け出したとき、自分があそこに走るのはマスト」。味方の動きとスペースを連動させてゴールを狙う、いかにも内野らしい動き出しに相手GKは文字どおり手も足も出なかった。
後半34分にも内野にはビッグチャンスがあったが、シュートはポストを直撃。惜しくもハットトリックのチャンスは潰えたが、たたみかけるようにゴールを重ねる、内野らしい活躍で全日本大学選抜を勝利に導いた。試合後に行われた表彰式では最優秀選手賞(松本健一賞)を受賞。この賞を1年生が受賞するのは、大会が始まって以来初のこととなるが、それも納得の活躍だった。
この試合に臨むにあたっては、昨年秋に出場した杭州アジア大会でU-24韓国代表と対戦した経験が大きかったという。敗れはしたものの、決勝の韓国戦で先制弾を浴びせかけたのが内野だった。「あの大会で韓国の良さや強さを理解できたので、この試合では韓国の良さを出させず、いかに自分の良さを出せるかというところをやり続けられるかだった」。さらにその後も代表活動に参加したことで、「余裕の部分というか、自信もついたしメンタルの面で大きく成長できた」という。
ただアジア大会後のアメリカ遠征で早々に怪我を負い、終盤の筑波大でのパフォーマンスも本調子とは言い難かった。「リーグ戦の優勝に貢献したとはいえないし、インカレでもチームを勝たせることができなかった」と責任を感じている。
それだけに「今年はより筑波大に貢献したい」と力強く意気込む。この試合の結果を見る限り、“筑波大の怪物”は完全復調と見られるが、4月から始まる新シーズンでどこまで暴れられるか。内野航太郎の真価が問われる大学2年目、新シーズンの開幕はもう間もなくだ。
(取材・文 飯嶋玲子)
Source: 大学高校サッカー
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