クリスマスの“W杯中止通達”から3年半「相当なショックだったけど…」無念乗り越えパリ五輪王手の教え子たちに影山雅永JFA新技術委員長がエール

2020年12月25日、W杯中止の知らせを受けながらトレーニングマッチに臨んだU-19日本代表
 日本サッカー協会(JFA)の影山雅永技術委員長が26日、新体制発足後初の技術委員会後に報道陣の取材に応じ、カタールで開催中のパリ五輪アジア最終予選を戦うU-23日本代表に「まだまだ油断できないが、勝利に向かって頑張ってもらいたい」とエールを送った。

 大岩剛監督率いるU-23日本代表は前日25日、AFC U23アジア杯準々決勝で開催国カタールに4-2で勝利。パリ五輪出場に王手をかけた。影山委員長は延長戦にもつれ込んだ一戦を「簡単じゃないですよね」と振り返りながらも、「試合に関して言えば立ち上がり、相手国のカタールがこんな戦いをしてくるだろうというさまざまな予測でゲームプランを立てていたと思うが、そのままうまくいくわけではないという難しい状況になった。あの状況になってもベンチ含めて大岩監督はさすが。慌てることなく、時間があるから、どんなことをチームとしてやっていけば勝つ確率が上がるかを考え、選手たちもそれを忠実にやっていくことができたと思う」と前向きに語った。

 さらに影山委員長は「簡単じゃない一方、JFAは長期にわたって『アジア全体のレベルが上がらないと僕らは世界チャンピオンになることはできない』という姿勢を取ってきた。いまも日本の指導者を20人くらい送っている」と自身もマカオ代表、U-16シンガポール代表の監督として経験した指導者派遣事業に言及。「今後はW杯出場枠が増えることで楽になるということもあるだろうだけど、東南アジア、中東のレベルアップが著しいので、U-23でもそういったところが垣間見えるどころか、これから本当にそうなるんだなということを改めて感じている。勝って良かったなとホッとすると共に、これから本当のアジアの戦いになっていくんだなと感じている」とアジア全体のレベルアップを前向きに受け止めた。

 また影山委員長にとって、現在のパリ五輪世代は思い入れの深い選手たちだ。結果的には新型コロナウイルスの影響で中止となったが、2021年のU-20W杯を目指して共に戦っていたMF藤田譲瑠チマ、MF山本理仁、GK小久保玲央ブライアン、MF荒木遼太郎らがU23アジア杯では中心的な活躍を見せている。

 U-20W杯中止の知らせは2020年12月25日未明、当時のU-19日本代表のトレーニングキャンプ中に届いた。同日、チームはトレーニングマッチを行ったが、影山委員長は選手たちに「『もしU-20W杯が開催されていたら、世界を獲れていたんじゃないか』と言われるぐらいのチームになってやろう」と声をかけていた。

 この日、当時を振り返った影山委員長は「クリスマスプレゼントみたいでしたけど……」と苦笑いを見せつつ、「選手は自らのパスウェイをいろんな大会を含めて考えているじゃないですか。その中でW杯がなくなったことは相当なショックだったけど、そういった思いも込めて、五輪という舞台に是が非でも出たいという思いが選手にとって大きいと思う」と述べ、世界舞台に熱意を注ぐ選手たちを思いやった。

 加えて影山委員長はMF松木玖生やDF高井幸大といった昨年のU-20W杯経験者の台頭にも言及し、近年の育成フローに手応えを語った。

「僕がU-20で見ていた学年は海外経験が1次予選が終わったところで止まってしまった。彼らと何人か下のカテゴリで世界を経験した選手を融合させて、あのチームになっている。海外経験の少なかった年代に経験を積ませながら、経験のある選手を混ぜ込みながらチームを作って五輪を目指している。全部がつながっているという気がしている」

「大抵のフェデレーション(各国連盟)はU-17W杯とU-20W杯が2年に1回、五輪は4年に1回なので、そこに合わせた強化をしているが、僕らは間がなくなるようにしてきた。以前は狭間の年代と言われていたが、狭間というのは残酷だし、そういったものをなくすのが大事だろうと、隙間なくやってきた。そこで『この年は良かったけど、次はダメだったよね』というような波がなくなってきているのが、長年の力だと感じている」

(取材・文 竹内達也)


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Source: サッカー日本代表

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