求められるのは「相手の土俵になっても戦わないといけない」逞しさ。大宮U18は尚志相手に粘り強く完封勝利を収めて今季2勝目!

粘り強く戦った大宮アルディージャU18は完封勝利で今季2勝目を挙げる!
[5.12 プレミアリーグEAST第6節 大宮U18 2-0 尚志高 埼スタ第2グラウンド]

 いつでも思い描いたような試合ばかりができるわけではない。自分たちがペースを握る時間があれば、相手に押し込まれる時間だってある。それでも意識し続けるべきことはきっと変わらない。ゴールを守り、ゴールを奪う。シンプルではあるけれど、それ以外に勝利を引き寄せる術はない。

「今の自分たちはいつもシュート数が少なくて、相手の方が多いと。でも、ゲームの勝敗はそれだけでは決まらないわけで、『いかにして最後のところをやらせないか』『いかにして少ないチャンスを決め切るか』が非常に大事だから、今週1週間のトレーニングはそういうところも意識していこうと話はしていて、ずっとそういうところを言い続けてやっていけば、こういうゲームが増えていくのかなとは思います」(大宮U18・丹野友輔監督)。

 全員が粘り強く戦って手にした、今季ホーム初勝利!11日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 EAST第6節で、大宮アルディージャU18(埼玉)と尚志高(福島)が激突した一戦は、前半終了間際の43分にMF丹野豊芽(3年)のゴールで先制した大宮U18が、後半12分にもFW野口蒼流(2年)が追加点を奪い、2-0と完封勝利。3試合ぶりの白星をもぎ取っている。

「今日は『自分たちのサッカーをやろう』と。ミラーゲームにして勝負しようと思いました」と仲村浩二監督も話した尚志は、システムをここまでとは異なる4-4-2にしてスタート。DF大須賀元(3年)とDF西館優真(3年)のセンターバックコンビからボールを動かし、前線のFW矢崎レイス(3年)を基点に攻撃を組み立てる中で、前半25分には右サイドでMF大内完介(3年)のパスを受けたDF荒川竜之介(3年)のクロスから、DF板垣大翔(3年)のシュートは枠の上へ。両サイドバックでフィニッシュまで持ち込むも、先制点には至らない。

 一方の大宮U18はMF神田泰斗(1年)とMF斎藤滉生(2年)のドイスボランチがセカンド回収に奔走し、中盤からの配球を起点に右のMF田中奏良(2年)、左の丹野がサイドで仕掛けるアタックから窺う相手ゴール。29分には右サイドを巧みに運び、野口が放ったシュートはゴール左へ外れたものの、流れの中からチャンスを作り出す。

 お互いに決定機までは創出しきれない展開の中で、スコアが動いたのは43分。大宮U18はここも斎藤が右へ振り分け、田中のクロスを野口が合わせたシュートは西館が果敢にブロックしたものの、こぼれを拾った丹野のシュートがゴールネットを確実に揺らす。「あの時間帯でのゴールと、前半を1-0で終えられたことは結構大きかったですね」とMF山中大智(3年)も話したホームチームが1点をリードして、最初の45分間は終了した。

 追い掛ける展開となった尚志は、後半開始からMF根木翔大(2年)を投入。「今日は『自分たちのスタイルでパスサッカーをしよう』となっていたんですけど、ボールを蹴ってしまって、だんだん相手のペースになったので、もう根木を入れて、サイドから崩してロングスローで点を獲ろうみたいな感じになりました」と荒川が言及したように、システムも中盤をダイヤモンド気味にシフト。1分には左からMF高橋響希(3年)が枠内シュートを放ち、ここは大宮U18のGK清水飛来(3年)のファインセーブに阻まれるも、いきなり同点への意欲をチャンスに滲ませる。

 だが、次の得点を記録したのも大宮U18。12分。セカンドボールを収めたDF斉藤秀輝(3年)がMF菊浪涼生(3年)とのワンツーで右サイドを抜け出すと、「キーパーとディフェンスの間にクロスというのはいつも狙っているので、それがうまくできたと思います」と絶妙の折り返しを中央へ。走り込んだ野口のシュートはゴールネットへ吸い込まれる。「彼らはああいうコンビネーションでというのはもともと凄く上手なところがあって、そういう場面が出たのかなと思います」と丹野友輔監督も賞賛した完璧な崩しからの追加点。2-0。ホームチームが点差を広げる。

 苦しくなった尚志も反撃を繰り返す。23分には野木の左ロングスローから、板垣が競り勝ったヘディングはクロスバーにヒット。30分にも左から切れ込んだMF長坂隼汰(3年)がシュートを放つも、清水がファインセーブで回避。37分にも荒川のパスから矢崎が打ち切ったシュートは、DFに当たって枠の右へ。劣勢の時間が続く中で斉藤、山中、DF酒井舜哉(2年)、DF大西海瑠(3年)の4枚が並んだ最終ラインを中心に、大宮U18の集中力はピンチを凌ぐごとに研ぎ澄まされていく。

 45分。矢崎が粘ってシュートまで持ち込むも、山中は身体を張ったシュートブロックでボールを弾き出すと、思わず気合のガッツポーズ。そこから程なくして、タイムアップのホイッスルがオレンジの選手たちの耳に届く。「今日は今シーズンで一番良い試合ができたんじゃないかなと感じていて、足りない部分も多いですけど、全員が機能して動いてくれて、凄く良い試合だったなと感じています」(山中)。ファイナルスコアは2-0。勝負への執念を披露した大宮U18が、リーグ戦では3試合ぶりの、今季のホームゲームでは初となる勝利を手繰り寄せる結果となった。

 大宮U18の2024年シーズンは、衝撃的な完敗から始まった。アウェイで川崎フロンターレU-18(神奈川)と戦ったプレミアの開幕戦は、先制こそしたものの、そこから4失点を食らって大敗。試合後に「ある程度劣勢になることは想定内でしたけど、攻撃の形が全然作れないと。やりたいことがまったくできなかったです」と話した丹野監督の厳しい表情が印象に強く残っている。

 前節までの5試合を終えた段階での成績は1勝4敗。指揮官はこのタイミングで、改めて自分たちの現在地を選手たちと共有したという。「5節が終わった段階で、シュート数も全部相手が上回っていて、いつもシュートが少ないと。でも、勝ったゲームもあれば、負けたゲームもあると。ただ、自分たちがゲームに勝つためには、より求めていかないといけないものがあるよねとは言っていたので、そういう意識は少しずつ出ていると思います。たぶん3節ぐらいやった時点でそれを言われても、選手もしっくり来ないだろうなと。少し待ちましたね」。

 やりたいスタイルはある。でも、それを貫くことだけがサッカーではない。チャンスが少なくても、それを確実に得点に結び付ければいい。ピンチが多くても、それを確実に失点へと結び付かせなければいい。

「もちろん自分たちのスタイルとしてはボールを大事にしたいし、攻守において主導権を握りたいというのがあるので、ボールを保持するところのこだわりは大事にしています。それに加えてボール非保持の時は、積極的にボールを奪いに行きたい。でも、ボールを奪えなくて、どうしても押し込まれちゃう時もあるよねって。その時はしっかりゴールを守ろうぜと。結局は『アカデミーの選手であれば何でもできなきゃダメなんだ』って思うんです。だから、本当に技術だけにフォーカスしていてもダメで、いろいろなことができないといけないですし、相手の土俵になっても戦わないといけないんです」(丹野監督)。

 この日のシュート数も大宮の4本に対して、尚志は11本。決して『自分たちの土俵』で戦えたわけではなかったが、後半はたった1回のチャンスでゴールをもぎ取り、相手の猛攻にもゴールを割らせることなく、2-0というスコアで勝ち切っている。

「一番求めることは勝って成長することだとは思うんですけど、『勝っても負けても成長は絶対に止めないようにしよう』ということは選手とも共有していますし、開幕からも凄く苦しかったんですけど、その中でも1つずつ1つずつ、ちょっとずつちょっとずつ積み上げてきたものが今日はこういう形で出たと思うので、このゲームをベースとしながら、これ以上のものをどんどん積み上げていきたいなと思います」(丹野監督)。

 全員で掴んだ今シーズンの2勝目。試合後の選手たちは一様に明るい表情で、勝利の喜びを噛み締めていた。「ちょっとずつですけど成長はしてきていると思います。でも、監督も言っているんですけど、その成長のスピードを上げていくという部分は求められると思うので、ここから勢いに乗って、また来週の練習からしっかりやっていきたいなと思っています」。山中はきっぱりとこう言い切った。

 1つずつ1つずつ、ちょっとずつちょっとずつ、そう簡単には崩れないベースを積み上げていく。シンプルだけど、それ以外に成長するための術はない。このクラブの未来は自分たちが担っていってやる。今シーズンを戦い抜くための輪郭が大宮U18の選手たちには、おぼろげながらも見え始めているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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