[プリンスリーグ関東1部]前後半で展開一変の桐蔭学園vs鹿島学園は1-1ドロー。自信をつけ、全国上位へ

鹿島学園高(白)と桐蔭学園高(青)の戦いは1-1ドローに
[5.12 プリンスリーグ関東1部第6節 桐蔭学園高 1-1 鹿島学園高 桐蔭学園多目的グラウンド]

 力のある両校は自信をつけ、全国上位へ。12日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2024 関東1部で桐蔭学園高(神奈川)と鹿島学園高(茨城)が対戦し、1-1で引き分けた。桐蔭学園は1勝3分2敗の6位。また、鹿島学園は1勝1分4敗の7位で、インターハイ予選による中断期間に入った。

 前半と後半で主導権が大きく入れ替わる戦いだった。前半は風上の鹿島学園ペース。いずれもサイズと強さを兼備する2トップ、FW山本葵(3年)とFW中川輝琉(3年)を起点に押し込み、守備ではファーストDFの選手が相手選手から離されないことを徹底する。

 いずれも鋭いアプローチと際の強さを見せたMF濱口聖主将(3年)とMF西川大翔(2年)のダブルボランチを中心にコンパクトかつ、一人ひとりが繋がって攻守。奪ったボールを簡単には捨てず、一際落ち着きのある10番MF松本金太朗(2年)らが係わりながら繋いでゴール前まで運んで見せた。

 13分、右サイドをコンビネーションで打開し、右SB文平千陽(3年)のクロスを中川が右足ダイレクトで狙う。16分にも右サイドを崩し、濱口のグラウンダークロスがゴール前を横切った。さらに26分には、濱口のインターセプトからショートカウンター。中川の右足シュートは枠左へ外れたものの、相手にカウンターの怖さも十分に植え付けていた。

 桐蔭学園もDFラインが右へ、左へスピードのあるパス。グラウンダーのパスを徹底して相手を揺さぶり、幾度かMF福田煌牙(3年)が相手の中盤を突破する。FW田村陸人(3年)へボールの入る回数が徐々に増え、MF高橋保好(3年)の飛び出しなどからクロス。だが、鹿島学園はCB齊藤空人(2年)がスライディングでクリアするなど、齊藤と189cmCB畠田凉聖(3年)を中心にゴール前でも隙を見せない。

桐蔭学園FW田村陸人は前線で起点となり、決定的なヘッドも

 桐蔭学園の右SB吉垣陽翔主将(3年)は、「いつも桐蔭はサイド攻撃が形っていう感じはあるんですけど、そのサイドは(自分のところを含めて)ちょっと対策されてた感じもあって、ちょっと攻めあぐんだというかありました」と振り返る。なかなか中央を使えず、SB、SHのところでプレッシャーをまとも受けてしまうシーンも。それでも34分、福田の距離の長いスルーパスでFW佐野煌太(3年)が右中間を抜け出す。

 だが、シュートは間合いを詰めた鹿島学園GK佐藤稜亮(3年)が手に当てて阻止。逆に鹿島学園は40分、敵陣左コーナー付近でボールを失いながらも、前から制限を掛けてクリアさせない。そして奪い返すと、MF山入端琉海(3年)がPAへ侵入。そのまま右足シュートをゴールへ叩き込んだ。

前半44分、敵陣での奪い返しから鹿島学園MF山入端琉海が右足シュートを叩き込む
先制点を喜ぶMF山入端琉海

 鹿島学園の良さが目立つ前半だったが、鈴木雅人監督が「あの入りの1本で変わっちゃっいましたね」というスーパーゴールで流れが大きく変わる。後半2分、桐蔭学園は自陣から速攻。田村がファウルを受けながらも身体を張ってボールを繋ぐと、福田が中央を抜け出す。そして、右サイドでパスを受けたMF中西康和(2年)がカットインから左足を一閃。素晴らしい弾道の一撃がファーサイドのネットへ突き刺さり、1-1となった。

後半2分、桐蔭学園の2年生MF中西康和が鮮やかな同点ゴール

 その後、桐蔭学園はボールを支配。得意のサイド攻撃へ持ち込めなかった前半とは全く異なるような戦いを見せる。ボランチのMF山本涼(3年)と高橋がボールを引き出して中盤で相手を押し込み、右の中西、左の福田も内側のポジションで攻撃に係わる。そして、ともにキック精度の高い右SB吉垣と左SB初見渚音(3年)が高い位置へ進出し、吉垣の中への動きからの左足クロスや中西の左足クロスがゴール前へ。18分には高橋の左クロスから田村が決定的なヘッドを放った。

 この後、2トップを入れ替えた桐蔭学園は山本がセカンドボールを回収するなど連続で攻撃に持ち込んだ。素早く前線へボールを入れて仕掛けたが、鹿島学園はCB齊藤が抜群の高さを発揮したほか、左SB清水朔玖(2年)が守備能力の高さを発揮するなど崩れない。濱口は「相手ペースでも後ろが頑張ってくれたり、キーパーのセーブもあった」と後方の選手たちの奮闘に感謝した。

鹿島学園の2年生CB齊藤空人は抜群の高さを発揮するなど堅守の中心となった

 桐蔭学園は後半36分、怪我明けの強力アタッカー、MF大木清之介(3年)を左サイドへ投入。圧倒的な推進力を持つ大木を加え、そのドリブルなどからゴールをこじ開けに行く。左サイドから崩し、決定機も作ったが、鹿島学園はGK佐藤やDF陣が阻止。桐蔭学園の吉垣は「ゴール前の1つ1つとか、練習の時からこだわって、ゴール前守るところもそうだし、決めきるところとか質の部分をこだわってやっていきたいと思います」と誓う。一方の鹿島学園も走力に秀でた山入端の突破などから勝ち越しゴールを狙ったが、相手CB横山優雅(2年)やGK大川晴羽(3年)らに阻まれ、後半はシュートまで持ち込むことができなかった。

桐蔭学園は怪我明けのMF大木清之介がスケール感の大きな動き

 1-1でドロー。桐蔭学園の八城修監督は特に前半、慎重になりすぎていたことを残念がる。「一番悪かった。今まではかなり良いゲームで、戦うっていうか、気持ちが全面に出ていた。良いゲームをずっとしてたのに、もったいないです」。浦和ユースや東京VユースなどJクラブユース勢とも渡り合うなど力があることを示してきたが、なかなか勝ち切れていないことによって自信を持って戦うことや、目線を上げることができていない。

 指揮官は「現状、これが力。彼らが、どれだけ本気になるか。結局は苦しい時、人って何ができるかなんで。良い時は誰でも良いことができる。ただ、苦しい時にどれだけほんとに戦えるか。ほんとに勝ちたいのか。自分が何を手に入れたいのかっていう思いが、覚悟か、口だけじゃなくて、苦しい時にそれが思いっきり発揮できればまあまあ、良いチームだと思います」。苦しい時に力を発揮できるチームになることを期待した。

 一方、鹿島学園は2年生が昨年のミズノチャンピオンシップU-16 ルーキーリーグ優勝世代。その2年生と3年生が競争し、チーム力を高めているが、まだまだ若さが出てしまう部分もあるようだ。鈴木監督は「(経験を重ねながら)成熟してくるといいかなって感じですよね。鍛え直して頑張ります」と語った。

 また、濱口は「ビビんないことが、一番大事です」とコメント。結果が出ていないことによって、まだ自信を持ってできない一面があるという。ここから結果を残し、変わることができるか。「1個、勝てればまた変わってくると。こうやってやっていくうちにいい試合ができると思ってるんで。少しずつは自信になってるんで、あとは結果っていうところです」と主将は結果によって変わることを誓った。

 桐蔭学園はインターハイ予選で激戦区・神奈川県突破を懸けた戦い。鹿島学園も茨城県予選で昨年度日本一・明秀日立高などと全国切符を争う。全国大会でも上位に食い込むポテンシャルを持つ2校。「インターハイではまず勝つってことが大事」(桐蔭学園DF吉垣)、「(予選を突破すれば)全国にいい流れに乗っていける」(鹿島学園MF濱口)。勝って自信をつけ、全国大会で躍進を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)


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Source: 大学高校サッカー

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