[MOM4726]青森山田MF川口遼己(3年)_指揮官も評価する「山田らしさ」の体現者が県24連覇を引き寄せる決勝弾!

決勝ゴールを叩き出した青森山田高MF川口遼己(3年=大阪市ジュネッスFC出身)
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.3 インターハイ青森県予選決勝 青森山田高 1-0 八戸学院野辺地西高 カクヒログループアスレチックスタジアム]

 少しだけ軽くなった背番号も心地良い。大阪から青森にやってきて、今年で3年目。ようやく掴み始めているチャンス。手放せない。手繰り寄せたい。このユニフォームに袖を通して獲れるものは、1つ残らず、すべてを。

「インターハイはちょっと若い番号になって、主力としてこうやって活躍できているので、ホッとしている気持ちもありますけど、まだ全国が決まっただけなので、またイチからやっていきたいと思います」。

 昨年度の全国二冠王者、青森山田高(青森)で着々と存在感を高めつつある、努力家のアタッカー。MF川口遼己(3年=大阪市ジュネッスFC出身)は自ら叩き出した値千金の決勝ゴールで、苦しむチームを窮地から救い出してみせた。

 八戸学院野辺地西高と対峙した令和6年度全国高校総体(インターハイ)青森県予選決勝。県24連覇が懸かる大きなプレッシャーの中で、青森山田のトップ下のポジションに入った川口は、明確なイメージを持ってゲームに入っていた。

「前半から監督の指示もあって『ゴール前に飛び込もう』という話はしていて、サイドから何本も良いクロスが上がっていた中で、なかなか入り切れずに苦しい展開が続いていたんですけど、個人的には『1本も逃さずに入ろう』と決めていました」。積極的にボールを引き出し、サイドに展開したら、そのままゴール前へ。クロスが来ても、来なくても、何度でもそれを繰り返す。

 スコアレスで迎えた後半10分。好機が訪れる。中央でボールを受けた川口は、そのまま右サイドへパス。縦に運んだMF別府育真(3年)のクロスに自ら飛び込むも、頭で合わせた軌道は枠を大きく外れたが、少しずつゴールへのピントは合い始めていた。

 それから15分後。再び、好機が訪れる。25分。別府が右サイドで時間を作り、外へ流したパスに駆け上がってきた右サイドバックのDF中島斗武(3年)は、グラウンダーのクロスをニアへ。走り込んだ14番がダイレクトで放ったシュートは、左スミのゴールネットへ到達する。

「ムチャクチャ嬉しくて、何をしたらいいかわからなくて、とりあえず応援団のところに行きました(笑)」。ゴールが決まったことを確認すると、ダッシュで向かった先にいたのはバックスタンドから大声援を送り続けた緑のチームメイトたち。彼らの笑顔を見て、ようやく自分の成し遂げた大仕事が実感できた。

「相手も力強くて、苦しい展開もあったんですけど、まずは失点ゼロで行こうという話はしていて、後ろの選手が凄く頑張ってくれていたので、その中で自分中心に前が決めるから耐えてくれという話はずっとしていて、その責任はありましたし、結果的にゴールを決められてチームの役に立てたかなと思います」(川口)。

 八戸学院野辺地西にも十分にチャンスがあった難しいゲーム展開の中で、「今大会は『怖い選手になろうよ』というところで、得点というところもかなり意識して伝えていたので、そういう形ではやってくれたんじゃないかなと思います」と正木昌宣監督も認めた川口の1点は、ファイナルの勝利を引き寄せる貴重な決勝ゴールに。試合後には絶対に負けられない強烈なプレッシャーから解放された選手たちに、ようやく満面の笑顔が戻った。

 今大会の川口は14番を背負ってきたが、プレミアリーグを戦う時の背番号は23番だ。春のプレシーズンではBチームの遠征に回ることもあり、なかなか思うような時間を過ごせなかった中、スタメンに抜擢されたプレミアの開幕戦で、期待に応えて先制ゴールを記録。チームの勝利に貢献してみせると、以降はリーグ戦全試合にスタメン出場を果たしており、完全にレギュラーを確保。「最初は立ち位置もそんなに良くなかったんですけど、自分なりに努力はしてきたので、それを信じてやってきました」という言葉を証明するような好パフォーマンスを続けてきた。

 正木監督は試合に継続して出場する中で、川口に見えてきた特性をこう語っている。「誰よりもチームのために声を出したり、味方を動かしたりできる選手で、思っていたよりもリーダーシップのところも凄く良くて、どんな時も一生懸命やってくれるので、やっぱり『山田らしさって何?』と言えばそういうところかなと思っています」。

 本人にも自身のリーダーシップについて尋ねてみると、「正直、自分は一応関西人で、ピッチ内外でうるさいので(笑)」と笑顔を見せながら、「そういう部分を生かしてチームに声を掛けたりしていますし、チームに声を掛けるからには自分にも責任が伴うので、自分のプレーをしっかりやりながら、チームにも求めながらやっています」とも言及。レギュラーとしての自覚も十分に芽生えてきているようだ。

 中学時代を大阪の大阪市ジュネッスFCというチームで過ごした川口には、全国の舞台で再会したい“同級生”がいる。「静岡学園の7番の天野太陽選手はジュネッスで一緒にやっていて、ボランチで一緒に組んだりしていたので、対戦したいですね」。もし対戦が実現したら、成長した姿を見せつけてやる。

 指揮官も評価する『山田らしさ』の体現者。プレミアリーグのチームファーストゴールに、県24連覇をチームにもたらす決勝ゴールと、今季の大事な得点を奪ってきた、絶対王者をフルエネルギーで牽引するアタッカー。川口遼己の攻守に渡る献身的なプレーは、夏の日本一を真剣に狙う青森山田にとって絶対に欠かせない。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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