プレミアWEST首位の大津が延長後半の2発でインハイへ。苦戦の熊本決勝も進化、全国制覇への糧に

目標は全国制覇。大津高は苦しみながらも熊本6連覇を達成
[6.5 インターハイ熊本県予選決勝 大津高 3-1(延長)熊本国府高 えがお健康スタジアム]

 大津が苦しみながらも全国制覇への挑戦権を獲得――。令和6年度全国高校総体(インターハイ)熊本県予選決勝が5日に行われ、大津高熊本国府高が対戦。延長後半に2点を挙げた大津が3-1で競り勝ち、6大会連続24回目の全国大会出場を決めた。

 昨年から主力の半数以上を残す今年、大津は“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグWESTで7勝1敗と首位。リーグ最多の25得点をマークし、現在は5連勝中だ。今大会も準決勝(熊本商高)を5-0で制すなど、4試合で24得点無失点と力を見せつけてきた。決勝はトーナメント戦を勝ち抜くことの難しさを実感するゲームに。それでも、全国大会でも優勝候補に挙げられる強豪校は、厳しい試合を勝ち切った。

 2016年以来のインターハイ出場を狙う熊本国府は今年、プリンスリーグ九州2部へ初昇格。昨年までに比べ、90分間の強度の高いゲームを重ねてきたチームは走力が向上している。「あまり(大津のことを)リスペクトせずに、前からしっかりコンパクトゲームを展開しよう」(佐藤光治監督)と挑戦心を持って臨んだチームは、開始直後に右SH岩崎祷真(3年)が右サイドから仕掛けてFKを獲得。ここから岩崎が頭でファーストシュートを放つ。

 だが、その後は大津ペース。U-17日本高校選抜の注目10番MF嶋本悠大(3年)や1タッチパスで攻撃をコントロールするMF畑拓海(3年)、準決勝3得点のMF中村健之介(3年)らが非常に距離感良くボールを動かし、シュートにまで持ち込む。そして10分、右サイドで時間を掛けて攻撃を組み立てると、PAの右ポケットへランニングした嶋本へSB野口悠真(3年)がスルーパス。最後は、嶋本の折り返しをFW兼松将(3年)が右足ダイレクトでゴール左隅へ流し込んだ。

前半10分、大津FW兼松将が右足で先制ゴール
スタンドの祝福に応える

 その後も、大津が押し込む時間帯が続いた。ボールを保持し、プレミアリーグWESTで8戦10発のFW山下景司(3年)や左SB大神優斗(3年)がPAへの抜け出しを狙う。だが、山城朋大監督が「自分たちのちょっとしたファウルとかで相手にちょっとずつ流れを渡してしまって、なかなかセカンドボール拾えずに距離が遠くなって、国府の距離感でサッカーをやってしまった時間帯が凄く長くなってしまった」と振り返ったように、自分たちのミスなどで相手に主導権を渡してしまう。

熊本国府は2人がかりで相手の攻撃を阻止

 熊本国府はコンパクトな陣形で維持し、相手を2人がかりで止めるなど集中力の高い戦いを見せる。19分には、10番MF古川慎恩(3年)が相手のミスパスをインターセプトし、ドリブルシュート。また、マイボールを長くすることで王者にプレッシャーを掛けることを目指してきたチームは、GK竹馬奈玖(3年)やキープ力抜群の古川らが勇気を持ってボールを繋いで攻める。加えて、前線でFW{{清水駿}(2年)が健闘するなど、敵陣でセットプレーを獲得。29分には、GK竹馬から縦パスを受けた古川が右ハイサイドへロングパスを通す。そして、右サイドで攻撃力を発揮していた岩崎のクロスがゴール前を横切った。

 大津は長い芝にも苦戦。ややボールを大事にし過ぎたところもあってバックパスが増え、特長である前線を追い越すような動きを増やすことができない。後半4分には、嶋本が強烈な右足シュート。こぼれに反応した中村が決定機を迎える。また7分には、MF舛井悠悟(3年)が抜群のスピードで右サイドを突破。クロスを上げ切るもゴールには結びつかない。

 熊本国府も5分、左ロングスローの流れからPAへ縦パスを差し込み、DF裏のこぼれをFW松元海斗主将(3年)が右足で狙う。だが、大津GK坊野雄大(3年)が反応。後半は熊本国府のペースで試合が進む中、大津はU-17日本高校選抜候補の190cmCB五嶋夏生主将(3年)が抜群の高さを発揮したほか、こぼれ球を畑や嶋本が回収して攻撃に結びつけようとする。

後半5分、熊本国府FW松元海斗主将が決定的な右足シュート

 熊本国府はMF溝口晃史(3年)がマンマーク気味に相手エースMF嶋本を監視。また、左SB新屋颯波(3年)が対人の強さを見せるなど、各選手が良く戦っていた。1点差のままで食い下がるチームは、17分に怪我によってベンチスタートのFW鎌田竜輔(3年)を投入。29分には、鎌田が相手DFからボールを奪い取り、独走する。だが、大津CB村上慶(2年)が猛然とカバーしたことで力強いシュートを打ちきれなかった。

 大津は村上が素晴らしいカバーリングを連発。GK坊野の存在も大きく、1-0のまま試合を進める。だが、後ろへの意識がやや強くなってしまっていた。一方の熊本国府は松元をボランチへ下げて守りの強度、運動量を維持。挑戦者は終盤も切れることなく戦い続け、1点をもぎ取った。

大津は2年生CB村上慶が好守を連発

 後半35+4分、熊本国府は新屋が左サイドへ展開すると、交代出場MF福田倖大(3年)が右足でクロスを上げる。これにファーから飛び込んだ岩崎が頭でゴールへねじ込んだ。試合終了直前の同点弾に熊本国府イレブン、応援団が歓喜を爆発。その最中に後半終了の笛が鳴り、試合は延長戦へ突入した。

後半35+4分、熊本国府MF岩崎祷真が同点ヘッド
後半ラストプレーでの同点ゴールだった

 だが、大津が底力を見せる。延長後半6分、交代出場のMF溝口晃史(3年)が左中間で前を向いて前方の嶋本へパス。そして、嶋本が中へ繋ぐと、山下がマークを外してからの右足シュートをゴール右隅へ突き刺した。

延長後半6分、大津FW山下景司が右足で勝ち越しゴール
エースがチームを救った

 さらに7分、山下からのラストパスを受けた嶋本が豪快な左足シュートを叩き込んで3-1。熊本国府の佐藤監督は、「(2点目を取られずに試合を進めたが、)やっぱり取るべきところでしっかり取る感じなんですね」と大津の決め切る凄さについて、認めていた。

延長後半7分、大津の10番MF嶋本悠大が左足で決めて3-1
勝負を決定づける一撃

 大津は延長戦で差をつけて3-1で勝利。山城監督は「決勝戦の雰囲気に本来彼らは2年生の時から経験しているんで慣れてるはずなんですけど、まだまだ選手としての未熟さがそれぞれあるのかなって痛感しました。経験をいっぱいしている分、ナーバスになっているところもちょっとあったのかなと思います」。今年、ここまで主導権を握れなかった試合はないのだという。それでも、我慢の戦いで勝ち切ったことは次に繋がる。

 主力の多くが残っていることで、例年よりも早い段階でチームが構築できていることは、間違いない。大津は伝統的に、意識の高い才能たちが激しい競争の中で大きく進化。シーズン序盤から結果を残している今年、より高いレベルへ進化を果たすか。この日はプレミアリーグで1試合、19分出場のみの溝口も交代出場で奮闘。「ああいう選手がどんどん出てきて、今、(背番号)1から11番が(先発として)試合に出ているんで。そういうものを脅かすようなメンバーがまた出てくることを期待したい」と山城監督は語った。

 勝利したものの、試合直後は険しい表情をしている選手が多かった。プレミアリーグWEST首位という成績に慢心せず、自分たちに矢印を向けて反省と努力。五嶋は「こういったゲームで1つ勝ち切れたっていうのは、チームとしての自信になるかなと思います」と語り、「プレミアと戦う中でチームとして自信もつけてきていますし、去年のインターハイを経験したメンバーがたくさんいるんで、今年こそは本当に(初の)全国制覇っていう目標に向かって頑張りたいなって思います」と力を込めた。この日の苦戦も進化への糧に。今後のプレミアリーグ、インターハイで対戦相手を一つ一つ全力で乗り越え、支えてくれている人々への感謝を示す。

苦戦も必ず進化に結びつける

(取材・文 吉田太郎)


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Source: 大学高校サッカー

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