[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[9.18 NBチャンピオンシップU-16準決勝 帝京高 1-1(PK4-5) 飯塚高 時之栖うさぎ島G]
190cm、100kgの巨体以上に目立つのは試合中にずっと絶やさないポジティブなコーチング。「15歳とは思えない。みんなのメンタルをコントロールしてくれている」。今大会、飯塚高(福岡)の指揮を執った島田一真コーチが信頼を寄せるのが、GK高田大雅(1年)だ。
中学は静岡県のFC Fujiでプレーしたが、高校では親元を離れ福岡へ。「これから大学生、社会人になっていくにつれて中学生から高校生の間に一人で飛び立って新天地に過ごした方が良いと思っていました。九州の全く知らない場所で色んな関係性を作って、コミュニケーション能力を高めたかった」。
今大会は生まれ育った富士市から近い御殿場市での開催とあり、両親や姉も応援に駆け付けた中でのプレー。自信があったキックは強風に煽られ、思い通りには行かなかったが、「キックの不安定さを取り返すには、自分のコーチングが大事だと思って、声出しをやめないでおこうと思っていた」。
中学生の頃は感情を露わにし、試合中であっても仲間のミスを指摘。チームの雰囲気を悪くしていたというが、今は違う。「一番後ろにいて誰よりも試合が見えているので、両親からも鼓舞しろ、とよく言われている」こともあり、高校に入ってから試合中はチームが良くなるための声掛けを意識。厳しい指摘はハーフタイムなど試合の合間にするようになったという。
帝京高(東京)との準決勝でも「俺たちならやれる」などチームメイトが前向きになる声掛けを終始絶やさなかった。1点を追い掛ける展開が続きながらも試合終盤に追い付き、準々決勝に続いてPK戦へと持ち込んだのは高田の貢献度が大きい。
「全国大会は0-0や引き分けが続いたり、厳しい試合が多くて苦しかったのですが、自分が後ろから後押しして、チームにプラスの貢献ができればと思っています」。PK戦に入る前は「PKのことは忘れろ。今日は昨日とまた違った相手だぞ」と声をかけ、チーム内に漂っていた“昨日勝ったから今日も勝てるだろう”という雰囲気を消し去った。
ゴールマウスに立つ前にはDF木下宗祐(1年)が巻いていたキャプテンマークも託された。「PK戦はキーパーとキッカーの1対1の勝負だと思っているのですが、キャプテンマークを背負うことでチーム全員の想いを背負って戦える。飯塚高校サッカー部は選手全員、スタッフ、保護者のみんなで戦っているので、その想いも揃ってキャプテンマークも任せて貰っています」。相手の3番手のキックがポストに当たり、4-4で迎えた後攻・飯塚の5人目。キッカーの木下が決めれば勝利が確定する状況では、「チームとして繋げたバトンを最後キャプテンに(キャプテンマークを)巻いて貰おうと思って返しました」。そして、木下がきっちり決めて勝利。これは、きちんと想いのバトンが渡った結果だった。
高校に入ってから食事の質とトレーニングに拘った結果、体重は15kgもダウン。現在も体重を活かしたセットプレーでの肉体戦に拘りながらも、ウェイトダウンも進めてGKとしての進化を図っている。
また、Aチームに帯同しているため、今大会は不参加だったGK小松恍士(1年)の存在も刺激になっている。「自分はできることを最大限にやって、評価をして貰いたい。評価して貰うためにも、自分が人一倍頑張りたい。ウェイトを落とすのもそうですし、チームのためにやるのもそうだし、PK戦の場面で自分がチームを引っ張るのもそう。やっていくことに絶対価値があると思うので、(優勝して)勘違いしてはいけない。まだ上には上がいるのも忘れずに、次は選手権を狙って行きたいですね」。存在感抜群の守護神は日本一に満足することなく、視線を先に向けた。
(取材・文 森田将義)
Source: 大学高校サッカー
コメント