最後の全国切符を巡る超激闘。湘南U-18は粘る東急SレイエスFC U-18を1点差で振り切って関東11番目の代表権獲得!

湘南ベルマーレU-18が関東最後の全国切符を獲得!
[6.9 日本クラブユース選手権関東予選3代表決定戦3回戦 東急SレイエスFC U-18 1-2 湘南U-18 拓殖大学G]

 何度でも、立ち上がってやる。倒れても、倒れても、チャンスがある限りは、何度でも、立ち上がってやる。このエンブレムを身に付けている限り、諦めるなんてことはあり得ない。最後に勝つのはオレたち、湘南だ。

「高いレベルの相手と『負けたら終わり』のゲームをトーナメントに入って僕らは5試合できたので、非常に経験値は上がったんじゃないかなと。最後に負けるのと勝つのではまったく違いますし、また全国の強い相手とできるので、楽しみが増えました」(湘南U-18・平塚次郎監督)。

 2週間の中で訪れた“3度目の正直”で関東突破!9日、第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会関東予選3代表決定戦3回戦が開催され、東急SレイエスFC U-18(神奈川)と湘南ベルマーレU-18(神奈川)が対峙した一戦は、湘南U-18が2-1で競り勝って、3年連続となる夏の全国切符を手繰り寄せた。

 7月から開催されるクラブユース選手権の全国大会へと出場する、関東の11チームの代表権を巡る今大会。グループステージを勝ち上がった両チームは、ノックアウトステージ1回戦こそ勝利を収めたものの、勝ち抜けを懸けた2回戦で負けたため、『3代表決定戦』という敗者復活戦に回る。そこでも負ければ敗退の1回戦を制し、勝てば代表権獲得の2回戦に敗れ、最後に戦うのが今回の3回戦。泣いても、笑っても、この一戦に勝った方だけが全国出場を掴めるという、正真正銘のラストマッチだ。

「今持っているものは比較的出たんじゃないかなと思います」と宮島俊監督が話したように、立ち上がりはレイエスU-18がアグレッシブに前へ出る。前線のFW池松遥(2年)へシンプルにボールを入れつつ、2シャドー気味に構えるMF經堂遥飛(2年)とMF門脇征直(3年)も果敢な仕掛けを披露。ドイスボランチのMF羽山倖生(3年)とMF伊香賀仁(2年)も中盤でセカンド回収に奔走すれば、右のMF小寺翔太(3年)、左のMF小川翼(3年)と両ウイングバックもオーバーラップを繰り返し、刺し切るチャンスを窺っていく。

 ところが、先に歓喜を迎えたのは湘南U-18。前半14分。相手陣内で前を向いたMF中村龍(1年)が丁寧なスルーパスを通すと、「背後をとにかく狙うと自分の中で決めていて、うまく裏に抜けられました」というFW寺下翔和(3年)が抜け出し、左足一閃。ボールはニアサイドのゴールネットへ力強く突き刺さる。「決定力には自信があるので、決められて良かったです」と話した10番は、これで今大会のノックアウトステージ4点目。1-0。湘南U-18が1点のアドバンテージを奪う。

 レイエスU-18もすぐさまやり返す。22分。左サイドでボールを持った小川は、門脇に預けるとそのまま縦にゴー。リターンを受けて完全に抜け出し、左足で力強く叩いたシュートの軌道は、右スミのゴールネットを鋭く貫く。「彼は突破する能力がある選手なんですけど、本当によく決めました。素晴らしかったですね」と宮島監督も称賛した、背番号2の痛快なゴラッソ。スコアは振り出しに引き戻された。

「まだまだゲームを読む力という面では、得失点で不安定になってしまう部分がありますね」と平塚監督も言及した湘南U-18は、MF崎野悠真(2年)と中村のドイスボランチがビルドアップを主導しつつ、DF野村拓矢(2年)のフィードに加えて、MF泉福創太(3年)やMF宮田岳來(2年)のドリブルをアクセントに攻める意欲は打ち出すものの、決定機は作り切れず。37分には崎野が狙ったシュートも左ポストに弾かれ、勝ち越しには至らない。最初の45分間は、1-1でハーフタイムへと折り返す。

 輝いたのは「こういう展開はK1(神奈川県1部)リーグでもよくあったので、そんなに焦らないで落ち着いて、自分たちがいつも練習をやっているプレーをしていこうと思っていました」という1年生ボランチ。後半7分。左サイドをMF山崎翔流(3年)が積極的に駆け上がり、そのままクロス。中央でボールを収めた中村が躊躇なく打ち切ったシュートは、DFをかすめながらゴールネットへ到達する。「選択肢はシュートだけでした。もう嬉しすぎて、覚えていないです」と笑った中村は、チームメイトが待つバックスタンド側へ一直線。2-1。再び湘南U-18が一歩前へ出る。

 またも追い掛ける展開を強いられたレイエスU-18は、失点直後にビッグチャンス。後半から投入されたFW西田遼太(3年)が強烈なシュートを放つも、ボールはゴールポストにヒット。以降もGK伊藤周平(2年)を最後尾に、右からDF徳丸耀太(2年)、DF関藤悠矢(2年)、DF村澤隼(2年)が並んだ3バックも集中力を保ち、狙う一刺し。26分にはMF中崎煌矢(3年)のパスから、門脇が枠内へ収めたミドルは湘南U-18のGK島田悠生(2年)にキャッチされるも、ファイティングポーズは下ろさない。

 ただ、湘南U-18は冷静だった。「後半はボールを繋いで、相手のラインが高かったら、背後をうまく使ってという形で、自分たちの時間帯は結構作れたと思います」と口にしたのはキャプテンマークを巻いたMF篠崎清輝(3年)。守備面は右から山崎、DF加藤真(2年)、野村、DF増森正悟(2年)で組んだ4バックがきっちり安定感を打ち出しつつ、ボールを動かしながら、機を見て寺下を走らせるアタックを徹底。29分には途中出場のMF今澤百助(2年)を起点に、寺下が粘って残し、篠崎のシュートはゴール右へ外れたものの、3点目への意欲をチラつかせる。

 39分にはレイエスU-18にセットプレーのチャンス。左から門脇が丁寧に蹴ったキックはファーサイドを襲うも、飛び込んだ村澤の右足はわずかに届かず。「1つ入れば行けそうな流れもありましたけどね」と村島監督も言及したが、わずか1点のビハインドが重くのしかかっていく。

 そして、4分のアディショナルタイムが過ぎ去ると、タイムアップのホイッスルが鳴り響く。「『やっと決まったか』という感じでしたね。ラストのラストでやっと全国を決められたので、ホッとしました」(寺下)「どっちが勝ってもおかしくないような拮抗したゲームだったので、とても嬉しかったですね」(平塚監督)。湘南U-18が激闘を制して、最後に残された関東で11番目となる全国への切符を、逞しくもぎ取る結果となった。

選手たちを称える湘南U-18・平塚次郎監督

 この日の前日に行われた3代表決定戦2回戦。湘南U-18は横浜F・マリノスユース相手に好勝負を演じながら、PK戦で競り負けて3回戦へと回ってきた。ノックアウトステージ2回戦の柏レイソルU-18戦、そして横浜FMユース戦と、勝利すれば全国出場という試合に2度敗れて、臨んだ今回の一戦。だが、チームのモチベーションはとにかく高かったという。

「昨日のゲームが終わった瞬間から、『明日の準備をしよう』ということはコーチからも選手たちからも話が出ていて、食事や睡眠のこともみんなで話し合いましたし、今日に向けての準備は前日からできていたと思います」(篠崎)「『これで行ける』となってからのPK負けだったので、少し気持ちも落ちるかなと思ったんですけど、『全然明日でしょ』というような、先週のようなモチベーションがあったので、自分もそれに乗り遅れないようにという想いもありました」(中村)。

 そんな彼らを後押ししたのは、“ネットの外”から声援を送り続けたメンバー外の選手たちだ。トップチームの試合でも使われているチャントを歌い、飛び跳ね、ピッチに立つ選手たちを鼓舞し続ける。「去年の応援ではチャントとか歌っていなかったんですけど、今年はみんなチャントも歌いながら応援してくれているので、それが力に変わりましたし、応援してくれる人たちのために『連戦でも頑張ろう』という想いがあったと思います」と感謝を口にしたのは篠崎。チーム全員でこのゲームを戦い抜いたことは、間違いない。

 とにかくシビアなゲームを重ねたこの数週間は、体力的にも精神的にもタフさが求められてきた。寺下の言葉が印象深い。「自分が1点獲った良い流れの中で失点しても、連続失点しないようなチームとしての粘り強さが身に付いてきたので、危ないところでも失点せずにもう1点獲れましたし、この予選で毎試合毎試合、毎週毎週、全員が成長したからこそ勝ち獲れた結果かなと思います」。プレミアリーグやプリンスリーグで戦う強豪と真剣勝負で肌を合わせたことは、グループを確実に進化させていたようだ。

 篠崎が全国大会への抱負を、力強く教えてくれた。「僕たちは他のどのチームよりもチームワークはあると思いますし、新チームの始動から全国優勝を目指しているので、そこはブレることなく、みんなで優勝に向かって頑張っていきたいと思います」。

 自分たちで掴み取った、日本一を巡る晴れ舞台への挑戦権。せっかく戦うのであれば、頂上を目指さないなんて選択肢はない。いつでも、どこでも、ともに戦う。一体感を纏った緑と青の若き勇者が、堂々と歩みを進める真夏の進撃は、果たしてどこまで。

(取材・文 土屋雅史)
Source: 大学高校サッカー

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