中体連出身の守護神が感じたワンプレーの怖さ。大宮U18GK清水飛来は明確に思い描く未来予想図に向かって努力を重ねていく

大宮アルディージャU18の守護神、GK清水飛来(3年=深谷市立豊里中出身)
[6.30 プレミアリーグEAST第10節 FC東京U-18 2-1 大宮U18 東京ガス武蔵野苑多目的グラウンド(人工芝)]

 ゴールキーパーというのは難しいポジションだ。どれだけファインセーブを重ねていても、1つのミスがそのまま失点に、そのまま勝敗に、直結してしまうのだから。この日、その厳しい現実を突き付けられることになったオレンジの守護神は、それでもしっかりと前を向く。

「途中から凄く雨が強くなってきたので、キャッチする判断で行ったんですけど、その前もパンチングという判断は何回かできていたので、あそこも『パンチングするべきだったな』とは思いました。でも、キャッチすることもできた方がいいですし、そこはやり続けていきたいと思います」。

 大宮アルディージャU18(埼玉)のゴールマウスを託された背番号1。GK清水飛来(3年=深谷市立豊里中出身)は自身が下す1つの判断がもたらしていく結果への責任をより感じながら、さらなる成長を誓っている。

 FC東京U-18(東京)とアウェイで激突した、プレミアリーグEAST第10節の一戦。開始早々に先制されながらも、FW磯崎麻玖(3年)のゴールで前半のうちに追い付いた大宮U18だったが、後半に入ると相手の猛攻に耐え忍ぶ時間が続いていく。

 そんな劣勢の状況で、ことごとくゴールを死守したのが、今季のプレミアで全試合にスタメンフル出場を続けているゴールキーパーの清水だ。至近距離からのシュートにも恐れることなく飛び込めば、際どいコースを突かれたシュートも鮮やかなジャンプで弾き出す。

 実はこの試合に向けて、意識していたことがあったという。「普段チームの練習で、近い距離の速いシュートを受ける時に、顔が逃げてしまうことが多かったので、今日の試合でそれは絶対になくして、逃げずにやりたいと思っていましたし、そういうところに練習から良い意識で取り組めました」。

 ゲームが進んでいく中で、確かな手応えも掴んでいた。「逃げずにボールを見る意識でやったら、近い距離のシュートにも反応できましたし、もうボールに集中して、身体を動かすことも意識して、ボールを最後まで目で追ったら、結構止められましたね。『やっぱりちゃんと見れれば、止められるんだな』と思いました」。

 1-1で迎えた終盤の後半38分。雨は依然として、降り続いていた。左サイドからクロスが上がってくる。チーム状況を考えても、絶対に勝ち点3が欲しいゲーム。攻撃への移行を考えた清水は、パンチングで弾くのではなく、キャッチして収めるという判断を一瞬で下す。

 だが、掴んだはずのボールがその両手からするりと滑り落ちると、そこには相手のアタッカーが抜け目なく待っていた。プッシュされた軌道がゴールネットを揺らす。結果的にこの1点が決勝点に。1-2。奮戦した大宮U18は勝ち点を取り逃がす格好となった。

「せっかく1-1に追い付いてもらった中で、ああいうプレーをしたらチームにも迷惑が掛かってしまうので、凄く悔しかったです」。もちろん清水にとっても、痛恨のワンプレーだったことは間違いない。それでもサッカーという競技は、常にこういうことが起こる可能性をはらんでいる。冒頭の言葉のように、もちろん小さくない反省は行いながら、一方でポジティブに前を向く姿勢に、携えているメンタルの強さが滲んだ。

 小学校3年生で初めてのチームに入ったばかりのころ、ポジションはフォワードだった。4年生からの2年間はゴールキーパーを務めていたものの、「凄く良いチームだったんですけど、自分自身がサッカーを楽しめなくなってしまったんです」と当時を振り返る清水は、6年生になると1年ほどサッカーから離れていたという。

 ただ、中学に入学すると兄の影響もあって、再びボールと向き合う情熱を取り戻し、通っていた深谷市立豊里中のサッカー部に入部。ここでも最初の半年間はフォワードでプレーしていたが、1年生の途中からはゴールキーパーに“復帰”することになる。

 チームはごくごく普通のサッカー部だったため、練習するのは土のグラウンド。もちろん専門のゴールキーパーコーチもいるはずがない。「サッカー部は2人の顧問の先生が教えてくれていたんですけど、小学校の時のキーパー練習も少しは覚えていたので、自分なりにそれをやったり、あとは友達にボールを蹴ってもらって、それを止める練習もしていました。自分でメニューを考えたりもしていましたね」。

「そもそも土のグラウンドなので、硬い時も柔らかい時もあって、柔らかい時はもうジャージも全部泥だらけになったんですけど(笑)、それでもサッカーをするのが楽しかったですし、泥だらけになってでもダイビングしてシュートを止めた時は、凄く嬉しかったですね」。環境どうこうなんて関係なく、ただただサッカーをするのが楽しかった。

 少しずつポテンシャルを開花させていった清水の存在は周囲の目に留まり、埼玉県トレセンにも呼ばれるようになる。「他の選手はみんなクラブチームの選手で、普段は部活でやっていて、そこから県トレの練習に参加したら、もう全然世界が違ったんですけど、そこで揉まれてやろうという気持ちでやっていました」。

 さらにゴールキーパートレセンも経験するなど、県内でも知られる選手に成長を遂げていく中で、想像もしていなかったオファーが届く。「アルディージャのスタッフが自分のことを見つけてくれて、練習参加をさせてもらったんです。最初に声を掛けられた時は凄くビックリしましたね」。

より高いレベルでのプレーを目指していたため、清水は決断する。中学校のサッカー部から、プレミアリーグに在籍しているJリーグのユースチームへ。一時はサッカーからも距離を置いていた15歳は、未知の世界へと逞しく飛び込んだ。

 昨シーズンのプレミアリーグでも前半戦はスタメン出場を重ね、今季は不動のレギュラーとして大宮U18のゴールマウスに立ち続けている。アカデミーのラストイヤー。成し遂げたい目標もしっかりと自分の中に据えている。

「ここまでトップチームを目指して頑張ってきたので、まずはそこを目指していきたいですね。もちろん大学という選択もあるので、その場合は大学で4年間やって、プロの世界に戻ってきたいとも思っていますけど、まずトップに行くために、残りの半年を頑張っていきたいと思います」。

 そして、その先の未来予想図は、もう心の中にハッキリと描いている。「中学のサッカー部に入った時に、将来の夢が決まったというか、中学1年で『スペインでサッカーをしたい』ということを決めたんです。『大きな夢を持った方がいいよ』ということを顧問の先生に教えてもらって、大きな夢は絶対に自分を飛躍させてくれるというか、自分を上に引き上げてくれることもその時に学んだので、『バルサに行きたい』という大きな夢を立ててから、ずっと努力してきています」。

 夢は、大きければ大きいほどいい。オレンジ軍団を最後方から支える187センチの大型守護神。清水飛来がここから羽ばたいていく世界には、きっとまだまだ成長するための余地が、大いに散りばめられている。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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