慢心なく積み重ねた粘り強さと一体感で怒涛の8連勝!大津は東福岡との激闘を制してプレミア前半戦を堂々首位ターン!

大津高は怒涛の8連勝でプレミア前半戦を首位ターン!
[7.7 プレミアリーグWEST第11節 大津高 3-1 東福岡高 大津町運動公園球技場]

 率直に言って、負けてもおかしくないようなゲームだったことは間違いない。スコアが逆になっていた可能性も十分にあった。それでも、そういうシビアな試合も最後に勝ち切るだけの地力が、今年の彼らには確実に備わっている。

「今までは大差で勝っていましたけど、そんなゲームがずっと続くことはないですし、今日のゲームみたいな感じが本当のプレミアリーグだと思っているので、こういう試合で勝てたのはかなり大きいかなと思います」(大津高・嶋本悠大)

 苦しい一戦を粘り強くモノにして、怒涛の8連勝!7日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第11節で、大津高(熊本)と東福岡高(福岡)が対峙した九州の高体連対決は、終盤の2ゴールで東福岡を突き放した大津が3-1で勝利。プレミアの前半戦を首位で折り返すことになった。

 いきなりの歓喜は前半6分。大津はMF畑拓海(3年)が右へ振り分け、MF舛井悠悟(3年)の落としからDF野口悠真(3年)が丁寧なクロスを上げると、MF兼松将(3年)が頭で叩いたボールは、右スミのゴールネットへ吸い込まれる。フォワードも板に付きつつある6番の先制弾。早くもホームチームがリードを奪う。

 以降もペースは大津。最終ラインから丁寧に繋ぎつつ、畑とMF嶋本悠大(3年)で組むドイスボランチの配球から、ドリブルとパスワークを織り交ぜて繰り返す前進。13分には左から嶋本が蹴り込んだCKに、キャプテンのDF五嶋夏生(3年)が合わせたヘディングはクロスバーを叩き、20分にもMF中村健之介(3年)のパスからオーバーラップしてきたDF大神優斗(3年)のシュートは枠の左へ外れたものの、追加点への意欲も前面に押し出す。

 ただ、劣勢の東福岡は25分を過ぎるとウイングのMF神渡寿一(3年)を中心に、左サイドが一気に活性化。27分にはFW塩崎響(3年)との連携で左サイドを抜け出した神渡が中央へ折り返し、MF児玉愁都(3年)のシュートはわずかにゴール左へ逸れるも、決定機を創出。39分にもMF大谷圭史(3年)を起点に、左から児玉が入れたパスをFW齊藤琉稀空(2年)が丁寧に落とし、MF佐藤宏耀(3年)のシュートは五嶋が身体でブロックしたものの、「少し“出る、出ない”の判断が自分たちの中で曖昧になっていました」と嶋本も話した大津を押しこみ始める。

試合の流れを変えた東福岡高の左ウイング、MF神渡寿一

 40分。佐藤のインターセプトから塩崎が左へ流したボールを、マーカーと競り合って収めた佐藤は丁寧に中へ。走り込んだ塩崎のシュートはゴールネットを確実に揺らす。あの時間帯は取られ方も悪くて、セカンドボールを拾えなかったですね」とは大津を率いる山城朋大監督。攻勢を強めた東福岡が追い付き、最初の45分間は1-1で終了した。

「チームとしても良い状況にあるとは思いながら試合に臨んだんですけど、やっぱり東福岡は簡単な相手ではなかったです」。五嶋がそう話したように、後半もお互いが次の1点を目指して、アグレッシブにゴールを目指す。

 後半8分は大津。FW山下景司(3年)のポストプレーから、嶋本が左へ流し、兼松が枠へ収めたシュートは東福岡のGK神田謙二郎(3年)がファインセーブ。13分も大津。野口が果敢なインターセプトでボールを残し、山下が打ち切ったシュートは右ポスト直撃。23分は東福岡。塩崎が右からクロスを上げると、ファーへ潜った神渡のヘディングは大津のGK坊野雄大(3年)がファインセーブで回避。やり合う両者。双方に漂う“2点目”の香り。

 27分は大津にビッグチャンス。山下、舛井と繋いだボールを野口が右クロスまで持ち込み、飛び込んだ中村のヘディングはマーカーに当たってクロスバーにヒット。29分は東福岡のFK。左から佐藤が絶妙の位置に蹴り込み、ニアでフリックした大谷のヘディングは枠を捉えるも、「最後まで我慢して、ボールに食らい付いて弾きました」という坊野がここもファインセーブ。逆転は許さない。

 違いを見せ付けたのは“大津の10番”。38分。坊野のフィードに山下が競り勝ち、こぼれたボールに途中出場のMF南平晴翔(3年)が食らい付くと、DFのクリアを拾った嶋本は「ノーバンで打つか、ショーバンで打つか、メッチャ迷ったんですけど、気付いたらショーバンで打っていました」とショートバウンドで右足一閃。軌道はゴールネットへ突き刺さる。一直線に走り寄ったスタンドの応援団と共有した歓喜。2-1。ホームチームが一歩前に出る。

 試合を決めたのは最終盤に投入された3年生アタッカーだ。45+1分。畑の右クロスのこぼれを大神が拾い、嶋本の優しいパスをFW岩中翔大(3年)は丁寧なインサイドキックでゴールへ流し込む。

「振り向いてシュートを打つか迷ったんですけど、ちょうど翔大が左にいて、フレッシュな選手なのでもう任せました」という10番のアシストからジョーカーが沈めた3点目で勝負あり。「全国大会では苦しい試合もたくさん出てくると思うので、ここでひと踏ん張りして、勝ち切れたというのは良い経験になると思います」と大神も話した大津が逞しく勝利を引き寄せ、リーグ戦の連勝を8まで伸ばす結果となった。

大津はFW岩中翔大(19番)の3点目で試合に決着!

 同点に追い付かれたハーフタイムのこと。山城監督はロッカールームでのある光景を教えてくれた。「前半が終わって、嶋本と畑が『セカンド拾えんくてゴメン』とみんなに謝っていたんです。大勝した後の試合でしたし、僕も最初は『今日はバーッと言ってやろうかな』と思ったんですけど、意外とみんながそういう感じで、自分のできていないところがわかっていたので、『それならもう大丈夫だな』と思いました」。

 守護神の坊野も「今まではずっとうまく行っている試合が多かったんですけど、プレミアはうまく勝てる試合ばかりではないですし、そもそも厳しい戦いなので、相手のカウンターを受ける時に全然戻れていなかったところは、みんなでハーフタイムに声を掛け合って、『後半はまず守備から入ろう』と話しました」と言及。2人の話と後半の展開を照らし合わせてみても、大津の選手たちの問題発見能力と、それに対する解決能力の高さの一端が窺える。

 この試合でプレミアリーグの前半戦は終了。大津は11試合を終えて、9勝1分け1敗で2位のサンフレッチェ広島ユースに6ポイント差を付けて、堂々と首位に立っている。だが、選手たちの口から次々と謙虚な言葉ばかりが口を衝くのも印象深い。

「前期は思ったよりもいい形で進みましたけど、このまま簡単に行くようなリーグではないので、もっともっと個人もチームもレベルアップしないと、プレミアリーグ優勝という大きな目標は達成できないと思いますし、『浮かれないように』ということは山城先生がずっと口酸っぱく言ってくださっているので、練習での強度も上げていきたいですし、自分もキャプテンとしての立ち振る舞いに隙がないようにというのは心がけてやっています」(五嶋)

「今は勝ちが続いていますし、このまま勝ち続けられるのが一番いいですけど、必ず負ける日が来ると思っているので、その時はしっかりと負けを受け止めつつ、自分たちは『常にしっかり全力でやる』という共通理解があるので、ここからも相手より1点でも多く獲って、勝って終わることを目標にしていきたいです」(嶋本)

「今は勝ち続けているので、そこに対する自信はあるんですけど、そういう時こそ慢心したり、勘違いした気持ちが出てくると思うので、それをどれだけなくせるかというのを意識しながら、自分自身ももっと結果を求めてやっていきたいと思います」(大神)

 山城監督はここまでのリーグ戦を総括しつつ、選手たちにフィードバックしたことを教えてくれた。「前期では4試合ぐらい自分たちの試合ができて勝てて、2試合は引き分けと負けがあって、残りの試合は負けてもおかしくなかったり、引き分けてもおかしくなかった試合を勝ってきているので、この夏のインターハイでしっかり経験を積んで、『絶対勝てるよね』という試合を増やしていきたいですね。でも、絶対に今日みたいに『負けるかもしれない』という試合が来ると思うので、結局“一回り”だけではなくて、“二回り”した時に大津がその相手に2連勝できるかどうかを考えたら、もっと細かいところを詰めていかないといけないよね、という感じでは話しています」。

 苦しい試合を勝ち切った試合後。応援席とメインスタンドに一礼を終えた選手たちは、必要以上に喜ぶこともなく、ピッチ上でクールダウンをしながらあれこれ話し合っていた。その傍らではスタンドから声援を送っていた応援団の選手たちが、粛々と試合会場の撤収に勤しんでいく。いわゆる慢心の類は、チーム全体にまったく見られない。

「こういうゲームは今まであまりなかったので、こういったゲームを勝ち切ったことで、もう1回チームが1つになれたと思いますし、良い雰囲気でインターハイに臨めるのかなと思います」(五嶋)。

今シーズンの高校サッカー界は、このチームを軸に回りつつある。大津の強さは本物だ。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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