逆境の中で人間として、プレーヤーとして成長し、特別な1勝。青森山田DF小沼蒼珠主将は「誰よりも努力する」を継続してインハイへ

青森山田高右SB小沼蒼珠主将(3年=三菱養和SC調布ジュニアユース出身)は「誰よりも」
[7.7 プレミアリーグEAST第11節 青森山田高 1-0 柏U-18 青森山田高G]

「サッカー人生の中でも、本当に嬉しいモノ」「勝って泣くっていうのは自分、初めて」という1勝だった。2023年度のプレミアリーグ、選手権王者の青森山田高(青森)は柏U-18(千葉)を1-0で下し、今季ホーム戦6試合目で初勝利。主将の右SB小沼蒼珠(3年=三菱養和SC調布ジュニアユース出身、U-17日本高校選抜候補)にとって、特別な白星になったようだ。

「去年、あれだけ勝てるチームにいて、勝つことは当たり前じゃないんだなっていうのは、ホントに知れた(今年の春)遠征からでしたし、去年、当たり前にやってた(ホーム戦勝利後に部員全員で肩を組んで歌う)『We are green』も、(昨年11月以来)やっぱこんなにできないと辛いんだなって思って」。この日、計208人の仲間が一緒に勝利を喜んでくれる姿を見て、主将は「こみ上げてくるモノがありました」と感動していた。

「本当に忘れない勝利だったなって思います」

 小沼は昨年度、プレミアリーグファイナル、選手権決勝の勝利も経験。丸刈りのSBは抜群のロングスローや対人の強さ、タフネスによって知名度を挙げた。一際大きな声で仲間を鼓舞するほか、ピッチ外では笑顔も多く、人気のあるキャラクター。その一方、結果の出ていない今季、“青森山田の顔”は厳しい指摘などの矢面に立ち続けてきた。その逆境の中で小沼は人間として、プレーヤーとしての成長を実感している。

「(今は)チームが勝てない時にどうするべきか分かってますし、何が足りないのかなっていう冷静な分析ができるのも、3年生でキャプテンになって全体見るようになったのも負け始めてからです。去年はずっと(先輩たちに)付いて行ってばっかだったので、自分が先頭になってやる難しさも知れて、人間としてホントにそういった部分は成長できました」

 また、昨年の経験者として誰よりも口に出す分、誰よりもプレーで表現することを目指してきた。「やっぱり言ってるだけじゃ絶対付いてこないんで、やっぱりプレーで示すっていうのも、まだ得点では結果出してないんですけど、後半足が止まってくる中で身体投げ出して守備することだったり、誰より走ってオーバーラップすることも自分の持ち味だと思う。そういった部分では、去年よりもタフに戦える自分がいるなっていうのは感じています」。この日は柏U-18の左FW吉原楓人(3年)とのマッチアップで苦戦を強いられたが、“小沼らしい”プレーも随所で見せていた。

プレーヤーとしても成長中

 相手のキレのあるドリブルに振り切られるようなシーンもあったが、身体を投げ出して最後の一歩まで食らいつき、空中戦やゴール前の攻防でバトル。近い距離からの相手の縦パスに対して反射的に頭を出し、クリアするシーンもあった。また、チームメートにやるべきことを伝達。できることをやり尽くし、1-0で90分間を終えた。

 待望のリーグ戦ホーム初白星。悩みながら、何とか青森山田を強くしようとする主将の姿をチームメートも見てきた。CB山口元幹(3年)は、「何か問題があったら自分が悪いっていう風に。それがいいか分からないですけど、やっぱり蒼珠は責任感が凄く強くて。練習の時は『自分が嫌われてもいい』っていうぐらいの覚悟で声かけてくれている。でも、逆にオフの部分やったら、ムードメーカーとして凄い周りを笑わかしてる」と説明する。

声でチームを引き締め、ムードを高める

 小沼が戦術面以上に重視して共有してきたのは、“常勝軍団”青森山田の気持ちの強さ、プライドの部分だった。「気持ちの部分とか、チームのあり方の部分っていうのは、ミーティングして、『練習からやっていこう』っていうのは、蒼珠中心にやってきました。だから、こういう結果が出たのかなと」(山口)。“ゴールを隠す守備”や対人で負けない、攻守の切り替えなど青森山田のやるべきこととともに、大事にしてきた気持ちの部分がこの日の勝利に結びついた。
 
 同時に、主将は「誰よりも努力して、誰よりも苦労して飛躍する一年に」のモットーを貫いてきた。この日、特別な1勝を果たしたが、今後もブレることはない。「選手権終わった後、確か自分、『誰よりも努力する』っていうことを言ったと思うんですけど、それはずっとサッカーノートとかにも書いて、『誰よりも努力する』っていうのは常に頭にあります。『誰よりも努力して飛躍した1年にする』って言ってたので、それを達成するために、チームのためにも、インターハイまでの2週間ぐらいをやっぱり自分が1番やって勝たせるチームにして、インターハイで誰もが納得するように。『これが今年の青森山田だ』と言わせるために、絶対(タイトルを)取って周りを黙らせたいです」。勝つため、成長するために苦労することも歓迎。2024年度の青森山田の象徴と言えるリーダーが、チームメートとともにインターハイ前、大会期間中も成長を続けて目標を達成する。

青森山田がやるべきことを体現する

(取材・文 吉田太郎)


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Source: 大学高校サッカー

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