[7.22 クラブユース選手権(U-18)GL第1節 大分U-18 1-2 山形ユース ヤンマーフィールド長居]
ゴールが決まった瞬間の手応えは、身体の中にはっきりと残っている。いつだってその喜びに身を委ねるのは最高だけれど、全国大会という舞台で味わったそれは、控えめに言っても最高過ぎた。
「もうマジで気持ち良かったです!プリンスリーグではかなり不調だったので、この全国大会で自分がゴールを決められたというのは超嬉しかったです!これで自信にもなったので、このままもっとチームの良い流れに乗っていけたらなと思います」。
今シーズンはトップチームの公式戦でも出場機会を得ている、モンテディオ山形ユース(東北1)のアグレッシブなストライカー。FW井上椋太郎(3年=福島ユナイテッドFC U-15出身)はさらなる歓喜の瞬間を求めて、ひたすらゴールを狙い続ける。
「1試合目ということでみんな緊張していて、入りはガチガチでしたね」。井上もそう振り返るクラブユース選手権の初戦。大分トリニータU-18(九州2)と激突した山形ユースは、立ち上がりから相手にボールを動かされ、守備の時間を強いられる。
ただ、そんな展開もある程度は想定済み。「我慢の時間帯はあると思っていたので、やることを変えずに我慢し続けたら、自分にチャンスが巡ってくると信じていました」という17番は、前線からの守備に奔走しながら、その時が来るタイミングを虎視眈々と狙い続ける。
その始まりは自分で仕掛けた守備からだった。前半35+1分。井上は果敢なプレスバックで相手のボールを奪い取ると、素早くMF今野勇夢(3年)へ渡して、そのままエリア内へダッシュ。MF永井英次(3年)、MF菅原大幹(3年)と繋がったボールが、再び自分の元へ戻ってくる。
「いつもクロスには後ろから入ることを意識していて、菅原くんが相手を引き付けてくれて、フリーになっていた自分のことを見てくれていたので、あとは決めるだけでした」。左足を振り切ったシュートは、ゴールネットへ吸い込まれていく。
今シーズンのここまでは苦しい時間が続いていた。プリンスリーグ東北では開幕からスタメン起用されていたものの、なかなか得点が生まれない中で、5月半ばから無念の負傷離脱を強いられ、クラブユース選手権の東北予選も欠場。「ただただ悔しくて、恥ずかしい想いもありました」と複雑な感情を抱えてきた。
ただ、確かな光が差し込む。7月13日。プリンスリーグの帝京安積高戦で、後半から2か月ぶりに実戦のピッチへ解き放たれると、敗色濃厚だった終盤に今シーズンの公式戦初得点となる同点ゴールをゲット。間違いなく“きっかけ”は掴みかけていたのだ。
「この前の試合でやっと初ゴールが獲れて、良い流れに乗りかけていたので、そのままの勢いでこっちに来ることができて良かったです」。チームもいったんは大分U-18に追い付かれたものの、きっちり勝ち越しゴールを奪って、2-1で勝利。井上にも、チームメイトにも、最高の笑顔が弾けた。
3月13日。井上はトップチームの公式戦の舞台に立っていた。2024JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド1回戦。カターレ富山とアウェイで対峙した一戦で、ベンチ入りを果たした井上は、1点をリードした延長後半開始からプロのピッチへと足を踏み入れる。
「正直、試合に出られるとはあまり思っていなかったですし、呼ばれたらやってやろうという気持ちだったんですけど、そう簡単にはいかなかったので、悔しかったですね」。試合はそこから2点を奪われて、まさかの逆転負けを喫してしまう。
「自分が出てから逆転で負けてしまったので、まだまだ足りないところがあるなと思いましたし、もっと成長する機会を作ってくれた1試合でした」。サッカーに日々の生活が懸かっている選手と一緒のピッチに立った経験は、自身の中にしっかりと刻み込んでいる。自分も同じ立場を目指すのであれば、まだまだ足りない。あの日の15分間を経て、成長への渇望感は格段に増している。
トップチームの練習に参加した際には、レフティのボランチから大きな刺激を受けたという。「小西雄大選手は超上手かったですね。ずっと左右に首を振っているので、真ん中に首がないんですよ(笑)。質も高いですし、強度もありますし、ちょっと違うなと思いました。カッコよかったです」。ルヴァンカップで井上が登場したのは、既に小西がベンチに下がった後だった。いつかは、同じピッチに、必ず。新たなモチベーションも自分を前へと進ませてくれるはずだ。
夏の全国大会はまだまだ続く。この日の結果は、この日のもの。もう視線は次へととっくに向いている。「結果が出たのは嬉しいですけど、明日以降も試合は続いていくので、切り替えて、もう1回気持ちを入れ直して、チームに貢献できるように頑張っていきたいです」。
山形ユースの17番を背負った、献身的なストライカー。爆発の予感を漂わせる井上椋太郎は、チームメイトへ歓喜をもたらすため、何度でも、何度でも、ペナルティエリアの中に飛び込んでいく。
(取材・文 土屋雅史)
●第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)特集
Source: 大学高校サッカー
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