[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.21 関東大学L1部第11節 駒澤大0-1桐蔭横浜大 駒澤大G]
チームを連勝に導いたのはエースの一撃だった。スコアレスで折り返した後半7分、桐蔭横浜大はMF永井大士(3年=聖和学園高)のドリブル突破からDF飯島大地(2年=桐蔭学園高)のクロスをFW渡邊啓吾(4年=旭川実高/湘南内定)がワンタッチで流し込んだ。
「信じてゴール前に走って行った。飯島からいいボールが来たので、あとは触るだけだった。勝ちに繋がるゴールは嬉しい。駒澤大学さんが徹底したサッカーをしてくるのは分かっていたので、自分たちも一枚FWを落としたり、対策を行った上でも攻められた。守りを固めてゼロで終えたこともよかったです」
すでにJ1のピッチを経験している。5月2日に来季の湘南ベルマーレへの入団内定が発表になった渡邊は、同時に特別指定選手としての登録も完了。すると早速同6日にレモンガススタジアム平塚で行った鳥栖戦でベンチ入りを果たし、後半37分から出場してJ1リーグ戦デビューを飾った。
試合前日から緊張して眠れなかったという渡邊。試合も「もどかしさ」を残す不完全燃焼と初々しいデビューになった。ただ「改めてあのピッチで、あの声援の中でプレーできたことはいい経験になった」と振り返る。大学の試合で何度も経験していたスタジアムだったが、Jリーグのピッチはやはり特別だったようだ。
もともとは高校でサッカーを辞めるつもりだったが、誘いを受けて進学した桐蔭大で急成長を遂げた。大学3年時には神戸や千葉の練習に参加。いわきFCのキャンプにも帯同した。今春には全日本大学選抜にも選出され、韓国遠征を経験。今季の大学サッカー界きっての存在になった。
湘南からは全日本選抜の遠征が終わってから声をかけてもらった。4月上旬に練習に参加すると、すぐに“合格通知”が出たようだ。「湘南のサッカーは前から追ったりするので自分にマッチしていたし、泥臭くというところで貢献できるんじゃないかと思った」。渡邊も迷うことなくオファーを受諾した。
6月中旬には地元の北海道、母校の旭川実高で教育実習も経験した。もともと地元の教育系大学への進学を志望していたこともあり、教職課程は取りたいと思っていたことのひとつだった。「非日常というか、教える立場になったことがなかったので、何を言ったらいいかを考えた。それは試合中のコーチングだったり、練習中の声掛けに繋がるんじゃないかと思っています」。すべての経験を進化に変える。
大学リーグもちょうど半分が終了。ただここまでの得点数3は、やや納得のいかない数字でもある。「全日本で一緒にやった内野(航太郎=筑波大)や中村草太(=明治大)がたくさん点を取っている中で全然決められていない。今日を始まりの1点にして、プレーでみせていけたらいいなと思います」。
今夏の総理大臣杯出場を逃したことは残念だが、その間に湘南に帯同する可能性も出てきそうだ。「まだ何も決まっていないけど、いつでも準備しています。すべてがサッカーに繋がるようないい生活を意識していきたい」。プロ内定選手としての自覚を十分にするストライカーが、残り半年となった大学生活を全力で駆け抜ける。
(取材・文 児玉幸洋)
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Source: 大学高校サッカー
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