ユース取材ライター陣が推薦する「インターハイ注目の11傑」vol.2

土屋記者が注目するFW安野匠(帝京長岡高3年)
 令和6年度全国高校総体(インターハイ)男子サッカー競技が27日に開幕します。ゲキサカでは「インターハイ注目の11傑」と題し、ユース年代を主に取材するライター陣にインターハイ注目の11選手を紹介してもらいます。第2回は(株)ジェイ・スポーツで『Foot!』ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任し、現在はフリーランスとして東京都中心にユース年代のチーム、選手を取材、そしてゲキサカコラム『SEVENDAYS FOOTBALLDAY』も連載中の土屋雅史記者による11名です。

土屋記者「今年から福島の固定開催となったインターハイ!全国から精鋭が集うこの大会の参加選手の中から、是非注目していただきたい11人を選出しました。今回も設けている選考基準は「1チーム1名」と「過去に11傑ではご紹介したことのない選手」です。3年生にとっては仲間と一生モノの思い出を作る絶好の機会。とにかくこの最高の舞台を楽しんでほしいと思います!

以下、土屋記者が推薦する11名

GK山崎晃輝(近江高3年)
昨年度の選手権で全国準優勝と大躍進を遂げた近江高で、2年生から正ゴールキーパーを務めている実力者。「チームの雰囲気が下がらないためにも、自分が声を切らしたらダメだと思っているので、常に声を出すようにはしています。毎日の練習から声は嗄れていますね」と笑うように、試合中に発し続ける大きな声は途切れることがなく、的確な指示でディフェンスラインを動かしていく。加えてハイボールへの対応も安定感があり、守備範囲も昨季以上に広がっている印象。「自分は身長があるわけではないので、基礎のところはかなりこだわっていますし、積極的に行けるところが特徴だと思っています」とアグレッシブな姿勢も頼もしい。今回のインターハイに向けても「泥臭く、粘り強く、1勝ずつ登っていくことで最終的に結果が出るので、先を見過ぎずに、まずは目の前の相手に対して全力でやりたいと思っています」ときっぱり。“湖国の海賊”を束ねる守護神、要注目だ。

DF五嶋夏生(大津高3年)
「ビルドアップの部分では谷口彰悟選手を、守備の部分だったら植田直通選手のプレーを見ていますし、大津高校にも横断幕が貼っているので、自分の憧れではあります」と口にする、今季の大津高のディフェンスリーダーを任された五嶋の存在感が、日を追うごとに増している。首位を快走するプレミアリーグWESTでも、世代屈指のアタッカーたちを向こうに回し、リーグ最少失点を続ける守備陣を統率しながら、「去年と比べたら良くなっているとは自分自身も思っているので、ポジティブにやれているかなと思います」と自身の確かな成長も実感している様子。今大会も大津を優勝候補に挙げる声が多い中で、「自分の立ち振る舞いというのは隙がないようにというのは心がけてやっています」と語るように、キャプテンマークを左腕に巻く立ち姿も堂に入ったもの。伝統の背番号5を託された高体連有数のセンターバックとのマッチアップは、どんなフォワードにとっても厄介極まりない。

DF田所莉旺(帝京高3年)
「『帝京の一員として全国大会で名前を残したい』という想いがあってここに来たので、今年に懸ける想いはかなり強いです」。そう言い切っていた男が、ようやく全国の舞台へ登場する。もともとは川崎フロンターレの下部組織でプレーし、年代別代表にも選出されていた中で、1年生の冬に川崎F U-18から帝京高へと転籍したセンターバックは、高い技術を生かしたビルドアップ能力と187センチのサイズを生かした空中戦の強さを武器に、カナリア軍団でも定位置を確保したが、昨年は夏も冬も全国出場は叶わず。今予選で“3度目の正直”を果たし、目標のステージを手繰り寄せた。間違いなくこの夏の全国は大きなアピールの舞台。「ここでスタートラインに立てたというところで、2年前のチームのおかげで準優勝まで行ける力があることは全国的に知ってもらえたと思うので、今年こそ優勝できたらいいなと思います」。逞しさを増した万能型の守備者が、日本一を真剣に狙う。

DF阿久津祐樹(共愛学園高3年)
6度目の県決勝進出となった今予選で、悲願の群馬初制覇を達成した共愛学園高を最終ラインから束ねるのが、このセンターバックのキャプテンだ。決して大柄ではないものの、鋭い読みを生かしたカバーリングとインターセプトは、チームの守備にとって欠かせない代物。指揮官からもチームメイトからも絶対的な信頼を寄せられている。シーズン開幕当初は個性派が揃う今年のチームを率いるのに苦心していたが、「チームがまとまらないこともありましたけど、インターハイを通してチームに一体感が出てきましたし、優勝が決まった時にベンチの選手が出てきたのもメチャクチャ嬉しかったです」と今ではチームの強い結束力にも手応えを掴みつつある。「チームとして点を獲る部分や粘り強く守る部分はもっとレベルアップさせていかないといけないですし、個人としてはもっとチームを引っ張る力を付けていきたいです」。群馬の新王者が期す全国での躍進には、この男のハイパフォーマンスが絶対に欠かせない。

MF峯野倖(市立船橋高3年)
高校入学後の2年間は起伏の激しい時間を過ごしてきた。U-16日本代表にも選出されるなど、1年時から注目を集めていたものの、数回の脳震盪が重なって9か月近く戦線離脱。ようやく復帰した昨夏のインターハイではハイパフォーマンスを発揮し、大会優秀選手にも選出されたが、夏過ぎに再び負傷離脱を強いられ、高校選手権は欠場。「去年は悔しさが多い1年でしたね。チームメイトの久保原(心優)やニコラス(・ロドリゲス)が成長して、高校選抜に行っているのを見るのも悔しかったです」と自身の中にエネルギーを溜めてきた。迎えた今シーズンはボランチの一角で好調をキープ。とりわけ8か月ぶりの公式戦となったプレミア開幕戦の青森山田高戦では攻守に奮闘し、「久しぶりの試合だったので、楽しい想いが大きくて、試合中なのに笑顔が出ちゃいました」と試合を楽しむ姿が印象的だった。前述したように相性の良いインターハイはさらなる飛躍のチャンス。イチフナの7番が福島の夏を熱く焦がす。

MF谷川勇獅(青森山田高3年)
プレミアリーグと高校選手権の二冠を達成した昨シーズンのチームの中で、ボランチのレギュラーとして不動の地位を築きながら、シーズン終盤に負傷離脱を強いられたこともあり、「チームは勝ったんですけど、個人としては悔しい想いをしたので、今年は三冠に向けてシーズンを通して戦える身体を作っていかないといけないと思っています」と、最高学年になった今季は食事改善と筋トレへ精力的に取り組んでいるという。プレミア開幕からしばらくは右サイドバック起用が続いていたが、ここ最近は本職のボランチへ復帰。「守備では一番走って、泥臭くやることは考えていますし、自分が中盤で簡単に突破されると後ろもキツくなると思うので、守備では絶対に負けないということを意識してやるのと、攻撃にもどんどん顔を出して、もう1人のボランチとうまく連携を取りながらやっていけたらなと思います」。青森山田の10番を背負った谷川の攻守に渡る活躍が、夏の日本一のカギを握ることは間違いない。

MF大内完介(尚志高3年)
右サイドでボールを持ったら、そこはもう大内のゾーンだ。「左利きなので、右足で持って縦に行く形もありますし、中にカットインして、左足を振るという形も多いですね」。久保建英やベルナルド・シウバを参考にしているだけあって、得意の左足を存分に駆使しながら、縦へと突破するドリブルも、中に潜ってのシュートも自在に操る、切れ味鋭いプレーが心地よい。昨季は開幕戦でプレミアデビューを果たしたものの、直後の骨折で4か月近く離脱してしまったため、以降はプリンスリーグ東北で地道に実力を磨いてきた。最高学年となった今シーズンは小さくない期待を掛けられてきた中で、やや不調に陥ってスタメンを外れていたが、ここに来て定位置を奪い返すと、直近のリーグ戦では2戦連発と復調傾向に。「(チェイス・)アンリくんみたいに、尚志からプロに行っている人もいるので、まずはプロを目指して、代表も目指していきたいです」。尚志の7番が秘める左足の威力は、一見の価値がある。

MF内田龍伊(駒澤大高3年)
チームの10番を託され、駒澤大高の攻撃のタクトを振るうファンタジスタだ。3-4-3のシステムの右ウイングに配されながら、そのポジショニングは変幻自在。「ウイングのポジションからトップ下の位置に入って、左ウイングと2トップ下みたいなことを一緒にやりつつ、ボランチと一緒に4枚で中盤を形成して、ボールを運んでいくというのも任されています」と幅広いタスクを軽やかにこなしている印象がある。今予選の2回戦では、昨年度の高校選手権全国4強の堀越高を沈める決勝点を奪ったが、その試合後には「ゲームに入る前の応援は震え上がるような感じがしますし、仲間が必死に応援してくれている中で、不甲斐ないプレーはできないので、そういう責任感は強く持たないといけないと思います」と応援への感謝も。イニエスタやシャビ、ブスケツといったバルセロナのレジェンドを参考にしているという高い技術を装備した上で、仲間の想いを力に変えられるこの男の存在が、駒澤大高に勇気を与え続ける。

FW岩谷勇仁(昌平高3年)
愛知の刈谷JYから昌平の門を叩いたサイドアタッカーは、「昌平に来たら周りのレベルが高すぎて、トップにも食い込めないんじゃないかなと思っていました」と振り返ったように、2年までは一度もトップチームの活動に加われなかったが、今シーズンに入って右サイドから左サイドにコンバートされると、一気にその才能が開花。「右サイドの方が縦に行きやすかったんですけど、Jヴィレッジカップの時に左サイドで縦に行くコツを掴んで、そこから縦に行けるようになりました」と果敢な縦突破と、しなやかなカットインを巧みに使い分け、技巧派集団の左ウイングとしてプレミアリーグの舞台でも躍動を続けているが、サラッと口にした強気な目標設定も頼もしい。「自分は『絶対に試合の中で相手を10回は抜きたい』と思っていて、それはまだ全然できていないので、今後試合に出られたら達成していきたいです」。どんな試合でも自信を持って仕掛け続ける昌平の左ウイングから、目が離せない。

FW安野匠(帝京長岡高3年)
帝京長岡高のエースが代々背負ってきた14番は、この男に託された。「自分がイメージしているように味方を動かすというか、オレが点を獲るためにチームメイトをどう動かすかというのは、中学生の頃からイメージしていました」と言い切るストライカーの安野匠だ。そのプレースタイルはアグレッシブの一言。まず最優先で考えるべきはゴール。本人は「アイデアは豊富だと思うので、ボックス内とか相手陣地に入ってからは、自分の好きなようにアイデアを発揮して、スピードとかドリブルを生かしながら、攻撃に関わるのが得意かなという感じです」と話しているが、最大の特徴はゴリゴリと突き進める推進力。時には強引とも捉えられるようなドリブルは、Jクラブへ練習参加した際にも十分に通用したという。明るいキャラクターも実に魅力的。「チームのためにできることをもっと増やして、『ああ、アイツは帝京長岡の14番だな』と言われるプレーをしたいと思っています」。この夏にブレイクの香りが漂う。

FW石橋聖凪(神戸弘陵高3年)
昨シーズンは左サイドに北藤朔(関西学院大)という絶対的なドリブラーがいたため、右ウイングを任されることが多かったが、今季は本来得意だという左ウイングの位置で、ひとたびボールが入ると、必ずと言っていいほどドリブルで仕掛ける積極性を前面に打ち出し、圧倒的な突破力を披露。Jクラブの練習参加も経たことで、「県内とか関西ではサイドハーフとして誰にも負けたくないですし、全国でもトップレベルを狙えるぐらいの力を付けていきたいなと思います」とさらなる進化にも余念がない。自身で捉えている課題は「味方を使ってシュートまでは行けるんですけど、まだまだシュートが課題なので、そこで決め切れたらもう1個上のレベルに行けるのかなと感じています」というフィニッシュの精度。「厳しい試合でチームを助けるのが10番の役割だと思うので、チームを助けるゴールを求めていきたいですね」と言い切るように、この夏の全国での得点量産を誓っている。


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Source: 大学高校サッカー

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