[関東]悔しい3年間を味わってきたエネルギッシュなエアマスター。国士舘大DF畑橋拓輝は盟友の想いも背負ってさらなるステージアップを志す!

国士舘大のディフェンスリーダー、DF畑橋拓輝(4年=三菱養和SCユース)
[8.10 関東大学L1部第11節 中央大 1-2 国士舘大 中央大G]

 もともと思い描いていたような3年半を過ごしてきたわけではない。ハッキリ言って心が折れかけた時だって、一度や二度ではなかった。それでも、結局はやり続けた。今の自分と、置かれている現状に向き合って、必死にボールを追いかけてきた。その先にさらなる成長を遂げた自分の姿が、必ず待っていると信じて。

「前期は一通り試合に出て、もちろんやれる部分とやれない部分がありますけど、ヘディングだったり、前への強さだったり、守備で声を出して統率する部分は全然通用すると思っていますし、全然戦えるなと感じています。ディフェンダーとしてやれることは結構ある方なのかなとは思いますね」。

 国士舘大が誇るエネルギッシュなエアマスター。DF畑橋拓輝(4年=三菱養和SCユース)は最高学年になってようやく積み重ね始めた実戦経験を、少しずつ確かな自信に変えながら、より高いステージで戦うイメージを膨らませている。

「ああやって後半は天候が変わったのは相手も条件は一緒なので、そんなのは言い訳にできないですね」。国士舘大のディフェンスラインを統率する畑橋は、そう言い切る。中央大のアウェイに乗り込んだ延期分の関東大学リーグ1部第11節。前半終了間際から降り始めた雨はみるみるうちに勢いを増し、いわゆる“ゲリラ豪雨”に。ピッチには水が溜まってしまい、ボールも至るところで止まってしまうような状況を強いられる。

 そんな中で後半4分には先制点を献上。終盤にPKで追い付いたものの、最後は45+5分に決勝ゴールを叩き込まれ、1-2でタイムアップの笛を聞く。「最後の失点も本当にラストワンプレーというところで、自分たちの日頃の甘さが出たと思うのが正直なところです」。悪夢のような幕切れ。国士舘大の選手たちは、次々とピッチに崩れ落ちていった。

 試合後。この日はキャプテンマークを任されていた畑橋は、とにかく悔しそうな表情を浮かべて、応援団への挨拶に向かう。「チームとしてもリーグ戦は失点が多くて、自分はスタートからずっと出させてもらっている中で、ディフェンスとして失点が多いのは自分の責任だと思っていますし、最後の詰めの甘さは全部自分のせいだと思ってやらなきゃいけないなと思っています」。

 三菱養和SCユースに所属していた高校時代も、キャプテンを務めていたようなリーダータイプ。この男の発するエネルギーは、いつだってチームに大きなパワーを与えていくが、その上でベクトルはいつも自分自身に向いている。「いつもチームを勝たせることにフォーカスしてやっているので、キャプテンマークを巻くか巻かないかは関係なしに、悔しいですね」。1人の選手として、目の前の試合に勝てなかったことが何よりも悔しかったのだ。

 ここまで大学で過ごしてきた時間は、順風満帆とは程遠いものだった。「1年目が一番キツかったですね。半年近くまともにサッカーもできていなかったので……」と本人も振り返るように、1年時はヒザの半月板を傷めてしまい、半年近く戦線離脱。ただでさえ高校時代とは大きく変わった環境へ必死に適応していた中で、ボールを蹴ることすらできない事態に陥ってしまう。

 ケガから帰ってきても、自身の立ち位置が大きく変わったわけではない。1年時のリーグ戦は1試合にメンバー入りしたのみ。2年時はベンチに座る機会すら訪れない。「試合に出られない時期が長くて、自分の中でどうしたらいいかわからない時期が結構あって、練習もキツいですし、それに付いていく部分でもまだまだでしたね」。一向に光の見えないトンネルを、とにかく手探りで進むしかなかった。

 初めてリーグ戦で出場機会が巡ってきたのは、3年生になった昨年の7月。2点をリードした終盤にクローザーとしてピッチに送り込まれ、チームの勝利を味わったが、以降もスタメン出場はわずかに3試合だけ。明確な立ち位置を築き上げるまでには至らない。

 苦しい時間を支えてくれたのは、周囲の人たちの存在だったという。「一番の支えは家族や友達でした。自分を応援してくれる人がいっぱいいて、特に家族は身近で支えてくれたので感謝していますし、そこに対して『恩返ししたい』という想いが一番強かったですね」。大学最後の1年となる今シーズンには、並々ならぬ決意で臨んでいた。

 迎えた2024年。リーグ開幕戦となる拓殖大戦でスタメンに指名された畑橋は、国士舘大の今季初ゴールでもあり、自身にとっても4年目にしてリーグ初ゴールとなる先制点を記録。チームも2-1で開幕白星を飾ると、そこからはセンターバックの定位置を掴み、ここまで最終ラインを逞しく束ねてきたことで、少しずつ自信も纏いつつあるようだ。

 この春には“盟友”との思わぬ別れもあった。高校時代から5年近い時間をチームメイトとして過ごしてきた影山秀人が、サッカーを続けられなくなってしまったことを自身のXに投稿。「ずっと寮でも一緒で毎日会っていたのに、急にいなくなっちゃったので、正直寂しい部分もありましたね」と畑橋も正直な気持ちを明かしながら、こう言葉を続ける。

「ただ、カゲは本当に頭がいいので、サッカーをやめなきゃいけないという状況になっても、その先をちゃんと自分の中で考えているというのは凄いところで、アイツなら何も問題なく、この先もやっていけるのかなと。その分も自分はどんどん上に行けるように頑張らないといけないなと思っています」。

 実際に畑橋にはJクラブからも興味が寄せられているという。思わぬ形でサッカー選手としてのキャリアを断念せざるを得なくなった友人の想いも背負いながら、この先の自分が進むべき道も、しっかりと見据えている。

「4年間挫折ばかりでしたし、大学生活の中で何回か自分を見失う時もあったんですけど、こうやって試合に出られるようになってから、もともとの自分の良さは取り戻せているのかなという感覚はあります。これからの自分がどこまでやれるのかというのは楽しみですし、大学サッカーの先のステージも見据えながら、自分のストロングや課題を見つめて、伸ばせるところは伸ばしていかないといけないかなと思っています」。

 突き付けられた悔しさは、すべて自らのパワーに変えてきた。国士舘大のディフェンスラインにそびえ立つ、元気いっぱいのハイタワー。三菱養和時代から培ってきた魂で戦う畑橋拓輝は、まだまだ自分にはのびしろが十分に残されていると信じて、さらなる成長へと繋がる一本道を突き進む。

(取材・文 土屋雅史)


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Source: 大学高校サッカー

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