インハイ優勝後の初戦で「目が覚めた」。静学に苦戦し、1-1ドローの昌平は夏を新たな挑戦と課題克服の期間に

インターハイ優勝校・昌平高(緑)と同8強・静岡学園高(白)の戦いは1-1ドローに
[8.13 ECLOGA 2024 IN ナラディーア 静岡学園高 1-1 昌平高 ナラディーア]

 王者がリスタートの一戦で「目を覚ました」。今夏のインターハイで初優勝した昌平高(埼玉)と同8強の静岡学園高(静岡)が13日、「ECLOGA 2024 IN ナラディーア」初戦で対戦。昌平は前半、圧倒的にボールを支配されるなど苦戦したが、後半に立て直して1-1の引き分けに持ち込んだ。

 昌平の玉田圭司監督はインターハイ初優勝から5日間のオフを挟んでの初戦を終え、「(日本一のことは)もう忘れたでしょ。今日の前半で」と指摘し、「ここ(静岡学園)とやれたのはマジで良かった。逆に目が覚めた」と個性の強い選手が並ぶ静岡学園との対戦を感謝していた。

 静岡学園は8強入りしたインターハイ後、「2024 CONSADOLE SUMMER CUP in HOKKAIDO」(北海道)に参加。日章学園高に6-0、タイの強豪・ブリーラムに1-0、札幌U-18に4-0で全勝優勝と状態を上げていた。

 前半はその静岡学園がほぼ相手陣内で試合を進めるような展開に。前からの守備がハマり、相手の1トップ、FW鄭志錫(3年)にボールを入れさせない。そして、奪ったボールを保持して波状攻撃。Jクラブ注目の右SB野田裕人主将(3年)と左SB鵜澤浬(3年)がその技術力でゲームを作り、強烈な突破力も披露していた。

静岡学園の右SB野田裕人主将は巧さで対戦相手を驚かせていた
昌平MF大谷湊斗主将がボールを前進させようとする

 そして前半28分、鵜澤の左FKからファーのCB岩田琉唯(3年)がヘディングシュートを決めて先制した。その後も左サイドで鋭いドリブル突破を連発したFW加藤佑基(3年)がクロスバー直撃のドリブルシュートを放つ。昌平は受け身の前半となり、玉田監督も「(相手が)巧いからこそやらないと」。技術力の高い静岡学園にプレッシャーを掛けに行けなかったことでボールを握られ続け、守勢の流れを全く変えられなかった。

前半28分、静岡学園CB岩田琉唯が先制ヘッド
静岡学園はMF堀川隼が攻守で存在感のある動き

 DFリーダーのCB坂本航大(3年)は、「やっぱりインハイ王者っていうプレッシャーも多分あったと思いますし、それで受け身になってる状態が前半凄く長く続いて、(前半0-2だった)桐光学園との準々決勝の前半みたいになってしまった」と振り返る。

 インターハイ優勝によって、「お祝いの言葉をたくさん、頂きました」(坂本)という大反響。チームにとって初の全国タイトルを獲得したばかりで、普段とは異なる重圧を感じてしまっていたようだ。ハーフタイムの指揮官の檄もあり、後半は重心が前に。それでも、静岡学園は攻守に存在感を放つMF堀川隼(3年)や万能型のMF篠塚怜音(2年)、トップ下で1タッチパスなど精度を発揮するMF山縣優翔(2年)らが正確にボールをサイドへ繋ぎ、加藤や鵜澤がドリブルシュートを打ち込む。

静岡学園のMF加藤佑基は左サイドで抜群の突破力を発揮

 昌平は我慢の展開が続いたが、インターハイ同様、簡単には崩れなかった。注目GK佐々木智太郎(3年)が好セーブを続けたほか、CB坂本航大(3年)を中心に自陣ゴール前での集中力が高い。PAへ入ってくるボールに対して相手よりも先に反応。こぼれ球をかき出すなど2点目を許さなかった。

昌平はGK佐々木智太郎の好守などで2点目を許さず

 また、大黒柱のMF大谷湊斗主将(3年)やMF本田健晋(3年)が相手の鋭い奪い返しに対し、ボールロストせず前進。そして後半28分、鄭が獲得した左CKを大谷が蹴り込む。これを坂本が左足ダイレクトで決めて同点に追いついた。

後半28分、昌平CB坂本航大が同点ゴール
後半、昌平はMF本田健晋らがボールを失わずに前進させた

 静岡学園は34分に山縣のスルーパスからMF原星也(3年)がクロスバー直撃の右足シュート。その後もサイドから崩して決定機を作ったが決め切ることができない。一方の昌平も終了間際に勝ち越しのチャンスを作るも静岡学園守備陣がストップ。昌平は連係ミスで攻め切れないシーンもあり、1-1の引き分けに終わった。

 静岡学園は終盤に野田が負傷交代したものの、川口修監督が「ここが変わるだけで全然内容が変わる」と両SBの攻守のパフォーマンスや、ゲーム内容を評価する80分間。また、昌平について指揮官は、「やっぱり一人ひとりが巧い。プレッシャー掛けても取れない。それがチームスタイルだから、昌平もさすが。あれ(同じ系統の攻撃スタイル)で日本一になっているんだから、いい刺激をもらった」と語っていた。

 一方、昌平はやや動きが重かったものの、後半に巻き返してドロー。玉田監督はこの夏の期間の重要性について、「プレミア(リーグ)、選手権が目標ですけど、そのための準備期間。逆にこういうところ(フェスティバル)は結果だけにとらわれずにやれる期間だから、めちゃくちゃ大事だと思うんですよ。だから、今日の前半みたいなもったいないことをしてたら、ほんとに時間の無駄になってしまうから。ほんとに有意義に使うためには、新たなものにチャレンジしたりとか、チームとしてもそうだけど、個々としても自分の課題みたいのもあるだろうし、強みもあるだろうし、強みを伸ばすし、弱みっていうものを少しでも克服する期間でもあると思う」と説明する。

 昌平は今週の奈良、1週間後の名古屋開催の「ECLOGA」に参加し、Jクラブユースや強豪校と対戦予定。坂本が「全然コンパクトさが足りないっていうのはずっと言われて来ている」「ほんとに組織的にもっと強くならないと」と語ったように、インターハイ、この日も課題となった部分の改善や、新しいチャレンジをしながら、8月31日のプレミアリーグ再開初戦(対横浜FCユース)を目指す。

 坂本は「この大会(「ECLOGA」)で弱い相手なんてもちろんいないですし、一日一日しっかり時間を有意義に使っていかないと。やっぱ冬の日本一を目指してますし、そこにたどり着くために、一つ一つ今日の糧とか大事にして、また明後日の試合(対奈良ユース)に向けて準備して、いい試合できたらなと思います。プレミアと選手権。この二つを取れるように、日々成長していければなと思います」と引き締めた。初の全国制覇から10日で「目を覚ます」戦いを経験。夏の王者、昌平がさらに強くなって後期シーズンを迎える。

(取材・文 吉田太郎)
Source: 大学高校サッカー

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